『退職カウントダウン日記 12』あなたは甘い!と言われて。 [私の話]
自分はちゃんとやって いる、と思っていても、それは単なる思い込みで、見る人から見れば、どうしようもなく甘い生き方をしている、と指摘されてしまうことがあります。考えてみれば、4年前は娘として親に、社会に出てからは一社員として会社に、どちらにも寄りかかって生きていたのだな、と、つくづく感じさせられた今日の一日でした。
5月12日(金)退職まであと64日
☆ここは、私の『今・レポート』コーナーです。カウントダウンに向かう日々の中で起きるあれこれについて、書いていきます。
(プロになりたい、と思ってます・・・けど・・・)
毎週木曜日は三味線DAYです。
10日の夜、それほど三味線が好きなら、有給休暇を消化する一ヶ月を、内弟子のように先生にぴったり付きそって、集中して勉強してみてはどうか、という話をMさんに聞いたときは、思いもよらない考え方に、びっくりするだけでしたが。
11日の昼、スイス人の方が演奏する琵琶と、日本の青年が演奏するイランの楽器サントゥールを聞いて、ひとつの方向を見つけたような気持ちになりました。
私も、あの人たちのように真剣に三味線に取り組みたい。本気で一ヵ月間がんばってみよう!と。
で、昨日、三味線の先生に自分の事を全部話してみたのです。
島根の国立大学に入った理由から卒業と同時に上京して今の会社を選んだ理由、そして辞める理由、これからについて考えていること、会社を辞めた後の一ヵ月間の過ごし方などを。
先生は私の話に黙って耳を傾けたあと、話しはじめました。
『まずあなたが三味線を本気でやるということに驚いたわ。本気の人と、趣味で習いごとをする人は全く違うから。
あなたは趣味で三味線を習いに来てる人、だと思ってた。
こまじょさんはテンポや正しい音がきちっと出ていないし、毎回同じ曲を弾いているでしょう?読譜もまだまだ甘い。
本気の人は、言われたことを、次の練習までにきちっと完璧に仕上げてくるのよ。三味線で食べていくこと、つまりプロとしてやっていくことは、とても厳しい。どの世界でも同じだと思うけど、まずは、自分との戦いだから。
今のままのあなたじゃとても無理ね。
でも一ヵ月まるまる三味線の練習をしたいというなら、朝から晩まで練習すると、周りに騒音の問題も出てくるだろうから、教室が開いている時、好きなように使えるよう、協力しましょう。
教室の鍵を渡すから、一ヵ月の間、今練習している曲の暗譜と読譜をがんばりなさい。結果を見るから。
三味線で食べていくという前提は、とりあえず考えないで。
先のことは、一ヶ月たった後ね。』
私は、私が今まで見ないようにし、自分で自分を誤魔化していた内面をズバリと指摘されて、慌てました。
三味線が好きだと言っても、口ばっかりで。結局は、練習も、まともにやっていなかった。その指摘に対し、とっさにあれこれ言い訳しようとした自分にも気づいて、ものすごく恥ずかしかった。
先生はお目が不自由ですが、これまでの私の甘い考えと姿勢を、音と言動できちんと見抜かれていたのだと思います。
「それほど好きなら、本気で一ヶ月、三味線に取り組みたいと、正面切って先生に話してごらん」
Mさんがあの時、なぜそんなことを言ったのか、その意味が少しわかりました。Mさんはきっと、三味線のプロである先生が、私にどう答えるか、知っていたのだと思います。そして、その話を、私がどう聞くか、と云うことも・・・。
(「本気」と「やる気」は違う)
「人は馴れ合うものよ」
Mさんは良く言います。
「知り合った当初は新鮮でもの珍しいから、話も良く聞くし、言われたことを真剣に考えたりもする。でも、付き合いが2年、3年となると、相手の話し方に慣れ、考え方も察しがつき、好き嫌いもわかってきて、その人の事がすっかりわかったようなつもりになって、いつの間にか、どんな話も、軽い聞き方をするようになる。
まーた部長がいつもの話してるよ、とか、親に、わかったわかった、もう、うるさい、と言うのも、あれほど可愛いと思っていた恋人の話にうんざりしてくるのも、みんな慣れからくる馴れ合いのせい。
私とあなたも同じこと。
会い慣れた私から聞く話と、知り合ってまだ間がなく、どんな考え方をしているのか良く知らない先生から聞くのと、内容は同じ話でも、あなたの聞き方、聞く姿勢が違う」
だから私に、「私に話したのと同じ内容を、先生に相談してごらん」と言ったのだと思います。
その結果、三味線の先生が私に指摘したことと、Mさんが私に、普段から繰り返し言っていることが、不思議なくらい一致していることに、気づかされたのです。
「深い付き合いで、その分馴れ合っている私から聞くのと、まだ緊張感が取れない関係の先生から聞くのと、あなたの聞き方が違っただけのこと。どっちから聞こうと、あなたが、あなたの問題点に気づくなら、それでいいのよ」
Mさんもまた、文章を習い始めた後の、私の考え方と言動の甘さを、しっかり見抜いていたのだと思います。
Mさんも私に、いつも言っていましたから。
「本気の人は、教えられたことを、次回までに、きっちりクリアしてくるものよ・・・」
Mさんはこうも言いました。
「あなたを見てるとね、いつも自分に言い訳ばかりしているように思える。あなた、こう思ってない?私は、本気になったら人には負けない、って。
でもそれはね、本気になったことの無い人が言う言葉なのよ。
本気の人は、自分が本気か本気じゃないかなんて、考えない。だっていつも本気だし、本気じゃないことなんて、ないから。
聞くけど、あなたが考えている本気ってなに?どういうことを本気だと思ってるの?
『本気』って、「やる気」とは違うのよ。
「やる気」には、頑張る対象があればいい。
頑張る対象はなんでもいい。受験勉強でも、ダンスでも、三味線でも。とりあえずその気になって、やる気が切れるまで頑張って、うまくいかなかったら、仕方がないとあきらめられる程度のもの。
でも『本気』には、『目標』がある。『目標』とはゴールよ、その人にとって不可欠な。
そのゴールを手に入れるためには、どんなことでもする。まっすぐわき目もふらず、懸命に走る。たとえやる気がなくなりかけても、挫けそうになっても、絶対にあきらめない。あきらめられない。
自分の全てを投げ打っても悔いない生き方、それを『本気』と、私は考えてるけど、あなたが考えてる本気って、どういうものなの?」
Mさんと付き合ってきて2年あまり。沢山の話を交わしてきましたが、最近になって気づいたことがあります。私はMさんの言葉が、ときどきわからなくなる、ということです。
Mさんとの会話で、一番頻繁に出てくる言葉、それは『あなたはどう思うの?』
Mさんの問いかけには、簡単に答えられないものが、沢山あります。原宿の仲間たちも、いつも四苦八苦しています。
『友だちってなんなの?あなたはどう思うの』
『友情って何? あなたはどう考えているの?』
『夢って何? あなたにとっての夢って、どういうもの?』
『思いやりって何? 優しいってどういうこと?信じるって?』
どの質問も、簡単に答えられそうでいて、答えられないものばかり。辞書を引いても、本を読んでも、誰かに聞いても、答えはどこにもありません・・・。
「だから自分で考えて、私の答えはこれ、と決めるしかないのよ。そして、その答えにもとらわれず、いつもより良い方向に、どんどん改善していけばいい。いつも、どんなことにも、答えは1つじゃないから。
あなたと云う存在はほかの誰とも違う。だからあなたは、あなただけの答えを探って、あなたが納得できる結論を出して、それを自分の答えにすればいいのよ」
私だけの答え・・・それはいったいどういうものなんだろう。
「こまじょが出した結論が、こまじょ個人だけじゃなく、たくさんの人間が納得する答えだったら良いね」
つまりこういうときなんです、Mさんの言葉がわからなくなるのは。みなさん、わかります? わかる方、教えてください。
「本気」と云うことについても、良く考えると、私は、本気って知らないんじゃないかと、思うんです。
今まで心のそこから欲しいと思っても、親に言われるとあきらめたし、やると決めたことでも、思い通りの結果がすぐ手に入らなかったら、簡単に投げ出し、続けることをしてこなかった。受験勉強もだらだらとして、良く大学に受かったものです。
あきらめたくないもの、ってなんだろう。
「小さな石でも、きちんと積み重ねていけば石垣になる。お城の石垣、簡単には動かせないでしょ。
小さなことでも、動かせないぐらいの大きさ、重さになるまで、コツコツ積んでいくのよ。そうすれば簡単には動かせない、あきらめられなくなる。努力の小石を積んでいけばいいのよ」
だから今回の三味線一ヵ月。
これを始まりとして、まずは自分ががどのくらいできるのかを知りたい。本気でやってみようと思っています。
☆ここから、前回からのつづき。プライベート・トークです。
[退社までの4年間をふり返る]-9
(C君の誕生日事件、その後・・・⑤)
これまで→原宿仲間のC君の2年前の誕生日。私にとっては生まれて初めて目撃した、友だち同士の本気の喧嘩や、善意の気持ちのすれ違い、といった、いろんなことがありました(C君の誕生日事件①~④参照)。
あの時、余命半年という末期癌の宣告を受けたC君のお父さまは、それから一年後、彼の誕生日の前日、亡くなりました。でもC君は、初恋大失恋、失職、再就職といった、その後のいろんな試練を乗り越え、今も原宿の仲間です。相変わらずの自己中ではありますが。
(これからのプライベートレポート)
今回は、私の「今・レポート」が長くなりましたので、[退社までの4年間をふり返る]は、「C君の誕生日事件、その後・・・⑤」という短い形のお話だけにさせていただきます。次回からは、私にとっては、この人たち抜きには、ふり返れない「原宿仲間」と、仲間におきた変化について、書こうと思っています。
どんなに仲がいいと思っていても、人と人とは、出会いと別れを繰り返すものなんですね。私が出会った原宿の仲間達のうち、AさんとB君は、一昨年、原宿仲間から外れていきました。でも、そのAさんと私はいま、なんとルームメイトしてるんです。
ほんと、人生はいろいろあって不思議です。
◎日記にリンクを張りました。よかったら読んでください。
4/26 『初めまして、退職カウントダウン日記の予告編です。』
5/2 『退職カウントダウン日記 2』
5/3 『退職カウントダウン日記 3』
5/4 『退職カウントダウン日記 4』怒った日
5/8 『退職カウントダウン日記 5』休日あれこれ
5/14 『退職カウントダウン日記 9』お得意さまとの別れ。
5/19 『退職カウントダウン日記 10』”夢”と出会った話
5/20 『退職カウントダウン日記 11 』初めて会社をサボった!
5/22 『退職カウントダウン日記 12 』あなたは甘い!と言われて。
5/24 『退職カウントダウン日記14』日曜日の想い・・・ 。
少しずつ、生きる難しさを学んでいますね。
by Silvermac (2006-05-23 15:34)
★SilverMacさんへ
はい。本当に生きる難しさを学んでいます。今まで考えて来なかったから、怠けた分とても厳しいです。
by こまじょ (2006-05-28 13:47)
何でもそうですが趣味のうちは楽しいのです。
じゃあなぜプロになるのか?
やりがいを感じるためです。やりがいを感じられるのは壁を乗り越えることができる人だけです。壁は次々現れます。その繰返しがプロの仕事です。
楽しいこととやりがいを感じることとでは、同じようで実は違うのだと思います。
by (2006-06-01 17:56)
★ ドン亀 へ
コメントありがとうございます。「次々と現れる壁を、乗り越えていける人がプロになれる」というのは、まさにそのとおりです。私のまわりにいるMさんや先生がよくご自分の話をしてくれるのですが、ちょっと聞いただけで太く厚く長い壁を必死で乗り越えてきたんだなとわかります。しかも現在進行形でがんばっている。
2人は自分との戦いには尽きることが無くて厳しいけれど、努力すれば必ずできるというお手本をみせてくれるので、私も真剣に打ち込まなきゃと考えさせられて背筋が伸びます。
by こまじょ (2006-06-02 01:58)