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『退職カウントダウン日記 3』 [私の話]

 香川で見つけたデカい張子のトラです。

5月3日(水)退職まであと73日

晴れ。気温27 度!暑い!でも気持ちいい!

(5月1日の夜の出来事は・・・・)

 本当はすぐに昨日(5月2日)の話から始めたいのですが、その前に少し時間をさかのぼり、1日深夜の出来事から、お話したいと思います。私はその出来事を通じて、初めて、「自分」というものについて考えはじめたもので。

 映画「RENT」を観終わった後の1日深夜、私とmama-witchさん(以後Mさんと書きます)と、その娘さん(以後Sさんと書きます)は、興奮を少し鎮めるため、原宿の小さな喫茶店に入りました。

 そのとき、会話はこんな感じで始まりました。

「会社から突然、明日の出張に新人の子を連れて行くようにと連絡が入ったから、ちょっと電車の時間を調べます」
 そうです。1日の平日代休が終わった翌日、私は千葉県に出張する予定だったのです。ひとりで。
 それが突然、休暇中の午後、新人を連れて行くようにと会社から連絡が入り、急遽、待ち合わせの準備をしなければならなくなったのです。

 忙しく携帯を操る私に、Mさんは言いました。
「何故いま、電車の時刻を調べなくちゃいけないの」
「えっ!だって調べなきゃ、明日の、新人の子との待ち合わせ時間が‥‥」
「そんなのはね、あなたが明日こう動くと決めていた時間の中に、ただ新人を組み入れればいいだけの話。あなたの行動予定時間の途中で、その子と待ち合わせばいいのよ」
「いやでも、だからそのために時間を調べて‥‥」
「初めて行くところなの?」
「途中の駅までは行ったことがあるけど、今度の場所はその先で、初めていく場所なんです」
「だったらおおよその時間は分るんでしょ」
「それは、まあ‥」
「じゃあ、そんなに血相変えて時刻を調べなくても、遅刻しない動きをすればいいじゃない」
「いや、だから時刻を調べて‥‥(なんで調べちゃいけないのよ)」
 この時点で私はまだ、Mさんの言わんとしていることに気づいていませんでした。
 彼女は私が、翌日の行動を大雑把にしか決めていないことを見抜いて、指摘していたのです。
それでいいじゃないの、と。
 確かに私は、自分ひとりだから、おおよそのことしか決めていなかった。それでもどうにかなるし、4年間の経験で、それがいちばん疲れないやり方だったから。

「新人連れて行けって会社に言われたぐらいで、あわてていつものやり方を変えなくていいのよ。大雑把でうまくいくなら、それが多分一番いい方法よ。あなた会社辞めるんでしょ?だったら営業の先輩としてその子に、こういうときのあなたのやり方を教えてあげたら?突然何かアクシデントがおきても、いつも時間を少し多く用意しときゃ、普段のやり方で大丈夫なのよ、ってね」
「‥・・・・・・・・?!」
「先輩ってさ、マニュアルには書いてない、生身の経験ってやつを教えてあげた方がいいと思うよ。どんなときでも、”こうしておけば だいたいうまくいく” って方法をね」

 Mさんの言ってる意味が、まだよくわからなかった私は、自分のやり方を否定されているように感じて、なんとなくムカつきました。でも逆らえないから納得したフリをしたのです。ここで逆らうより、家に帰って調べればいいやと。

 それは、会社で4年間、私が身につけてきた、「その場を丸く収めて切り抜ける」やり方でした。
 ある意味相手を無視し、結局は自分のやりやすいやり方でやる。それがいちばんラクだから。それ以上のことはやりたくないし、自分のやり方を変えたくもない。
 それはそれ以外の方法は知らない、ということで、自分にしか通用しないやり方です。
 誰にでも通じるやり方とは思えません。それを後輩に教えていいのかなぁ?

「仕事を辞めるとなって、あなたは突然使命感に燃えて、後輩に何か教えようとしているみたいだけど、マニュアルに書いてあるようなこと教えてどうするの。仕事がマニュアル通りにいかない事は経験済みでしょ。仕事で困ったとき、自分で工夫した自分のやり方が一番役に立ったんじゃないの? 突然何かあってもあわてずに、いつもの自分のやり方でやればいい。あなたもなるたけ早く、自分のやり方を見つけなさいねって、教えてあげたらどう?会社が教える会社のやり方じゃなく、自分の経験と知恵を使った自分のやり方を身につけていけって。私はそれが、先輩が後輩に教える一番いい仕事の引き継ぎ方だと思うけど?」

 私は新人時代、会社が教えることがその通りに出来なくて悩んだ自分を忘れていました。
 経験を積むにつれて、自分に出来る自分のやり方を持つことが、結局は一番いい方法なんだ、と気づいたことも。
 誰がやっても大体うまくいく方法、というMさんの言葉の意味は、そういうことだったのです。

 後輩への仕事の引継ぎに悩んでいた私は、「何も教えなくていいのよ、仕事は結局本人が、自分で学んで覚えていくしかないんだから」というMさんの言葉に、どこか少しほっとしたのです。

 そして‥その夜、事件はもうひとつ、起きました。

 私には、昨日書いたように、Mさんから紹介を受けたC君という友人が居て、彼は一年前から、某出版社の自転車専門誌の編集部に勤めています。その彼から、読者投稿という形の原稿を書いてほしいと頼まれていたのです。これが実は大変なプレッシャーになりはじめていて。

 雑誌に自分の文章が載る、ということで最初はワクワクし、やってみたい、と引き受けたんですが。
 文章が苦手な私には、精神的にだんだんしんどくなってきていました。
 それをこのとき、Mさんに指摘されたのです。
「あなたにとっていま一番大事なことは何?会社を辞めるって、実は結構大変なのよ。最後ぐらいちゃんとしたほうがいい。自分への後始末は、とても勉強になるから。彼の仕事、やってみたいのはわかるけど、いまそんな余裕があるの?やりたいことと、出来ることは違うのよ。友だちのため、なんて自分に嘘をつくのはやめて、友だちだからこそ正直に、いまの自分の気持ちを打ち明けて、分ってもらうべきなんじゃないの? 今ならまだ、〆切までに5日間ある。もしも断るなら、ギリギリでパンクして、彼にほんとの迷惑をかけるより、彼の仕事に余裕があるうち、ちゃんと謝って、分ってもらったほうがお互いにとっていいと思うけど?」
 確かにその通りです。真夜中12時、私は彼に連絡を入れ、事情を説明し、断りました。

 私の欠点は、自覚しているだけでもかなりあります。
 大雑把、せっかち、おっちょこちょい、思い込みの激しいところ、気が弱いくせに負けず嫌い、開き直り、人の話を聞かない、都合が悪いと相手を無視して逃げる・・・・・・いいとこないじゃん(泣)
 でもMさんは言います。
「この全部の無い人間なんて、居るわけないじゃない。こういうの全部持ってるのが人間なのよ。だからあんたはとっても人間らしい」
 こうもいいます。
「これだけ自分の欠点を自覚してるってすごいよ。これだけわかってるんだから、気をつければ、しなくなるよ。欠点直そうなんて思わないで、分ってるマイナス行動をやらなきゃいいのよ」
 そしてまた、こんなこともいいます。
「欠点なんていくら努力したって直らないものよ。直すことも減らすことも出来ない。だから直すんじゃなくて、気をつけて、やらないの。そしたらそのうち、だいたいやらなくなるから。あとは、持っている長所を伸ばして、最後にはそのでっかくした長所で、欠点を全部隠しちまえばいいのよ」
 だけど私の長所って・・・?
「人間の長所なんてひとつで十分。あの人は正直だ、これだけでほぼいいんじゃない?正直な人は嫌われないし。人間って、だいたいよければいいんだから。あの人は欠点があるけど、正直だって言ってもらえばそれでいいのよ。今日だってC君に正直に言ったでしょ。正直に生きるって、勇気いるよ。あと、人にはね、迷惑かけてもいいけど、困らせちゃダメ。そこだけ気をつけてればいいの」
 この夜の出来事とMさんとの会話の理解率、30㌫ぐらい‥‥かなぁ。

   [退社までの4年間をふり返る]-3
 
 ☆ここから、昨日の続きの「これまでのこと」についてです。

(新しい友人たちとの出会い-2)

 私は、けっこう友だちは多いほうです。
 熊本には中学・高校時代からの友だちがたくさんいるし、東京に出てきている友だちもいる。
 大学時代の友人も東京に結構いて、時折会ったり、飲みに行くことが多い。
お酒は大好きだから。でも‥‥。
 
 友だちとよく会っていたのは、東京に出てきてから最初の1~2年くらい。
 後で考えれば、慣れない環境で、お互いに心細かったんじゃないのかなぁ。
 そして仕事にもそこそこ慣れたころ、友だちも私も忙しくなり、会う機会が少しづつ減ってきて、私の精神状態は少しばかりおかしくなってきました。
 
 仕事が終わって家に帰ると誰もいない。
 一人暮らしだから当たり前ですけど、朝放りだしたセーターがそのままになってる。もちろん誰かが片付けてくれるわけじゃない。
 会社の人や仕事にはいくらか慣れたけど、まだまだで。
 何でちゃんとできないんだろうと惨めな思いをしても、すぐに解決できることではなくて。
 いままで経験したことの無い劣等感と、誰にもわかってもらえない寂しさに打ちのめされて‥。

 ガマンしてるという自覚はなく、逆に私は大丈夫、と思い込もうとしていた。
 でも、どんどんどこかがカラッポになっていく・・・・。
 その感覚に耐えられなくて、ふと気がつくと、大好きなお菓子に手を出して。
 いわゆる、過食嘔吐が始まりました。
 胸に空いた穴を埋めるように食べまくり、異常な満腹感に恐怖を覚えてトイレに駆け込み、吐く。
 そういう私を、知っているのは、私だけです‥‥。

 止まらなくなりました。帰宅した後、食べては吐き、食べては吐く。
 それが、自覚症状の無いストレスだとは、最初、気づきませんでした。
 そして、気づいた後も、止められませんでした。

 そうしないと気持ちが安心できない。
 精神状態を安定させるための過食嘔吐はいつか習慣化し、誰にも気づいてもらえないまま、私は毎日、笑顔で仕事をしていました。
 どんなに嫌なことがあっても、食べて吐けば、忘れられるから。

 そんな私の状態を、ひと目で見破ったのが、Mさんでした。
 原宿で会った直後、電話がかかってきたのです。
 「ウチにおいで」

 私とは初対面なのに、そんなこと、まるで気にしない人でした。
 「寂しくなったら、遊びに来りゃいいのよ。何にもしてあげないけどね。遅くなったら泊まればいいじゃん。ザコ寝だけどね。会社もウチから行けばいい」
 ヘンに安心感のある人でした。それは多分、ウソを感じなかったからだと思います。

 一週間に2日のお泊りが3日になり、4日になり、気がつくとほとんど毎日Mさんの家にいる。
 ほんとにヘンな家でした。Aさんをはじめ、B君、C君‥‥。Mさんに絵を見てもらっているB君なんか完全に居候。そこに私が加わって、なんだかワイワイ、ガヤガヤ。まるで合宿所です。

 少しづつストレスから開放されていった私は、熊本時代の友だちに会ったとき、何気なくMさんの話をしました。すると‥‥「あんたそれ、騙されてるんじゃないの?新興宗教かなんかよ、きっと」
 えーっ!世間知らずの私は、びっくり仰天。でも、違うような気がするけどなぁ。
「いまどきそんなボランティアみたいな人が居るわけないじゃん。絶対騙されてるに決まってる!」
 
 心配した友だちが熊本の両親に連絡して。
 即刻、父親が飛んでくることになってしまったのです。

                   (今日はここまでです。また明日。)

 

◎日記にリンクを張りました。よかったら読んでください。

4/26  『初めまして、退職カウントダウン日記の予告編です。』

5/1   今日から『退職カウントダウン日記 1』を始めます!

5/2    『退職カウントダウン日記 2』

5/3     『退職カウントダウン日記 3』

5/4  『退職カウントダウン日記 4』怒った日

5/8    『退職カウントダウン日記 5』休日あれこれ

5/9  『退職カウントダウン日記 6』叱られて・・。

5/11 『退職カウントダウン日記 7』友だちづくり

 5/13 『退職カウントダウン日記 8』机と私と大事件!

5/14  『退職カウントダウン日記 9』お得意さまとの別れ。

5/19  『退職カウントダウン日記 10』”夢”と出会った話

5/20 『退職カウントダウン日記 11 』初めて会社をサボった!

5/22 『退職カウントダウン日記 12 』あなたは甘い!と言われて。

5/23 『退職カウントダウン日記 13』寄席、初体験!

5/24  『退職カウントダウン日記14』日曜日の想い・・・ 。 

5/31   『退職カウントダウン日記』はワープします!


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コメント 7

Silvermac

読んでいますよ。
by Silvermac (2006-05-04 17:25) 

あら?ふぉー

こんにちは。
う~ん。どうかなぁ。
まぁ確かにMさんの言うことは解るけどね。
経験って奴かなぁ。
逆にそんな簡単じゃないとも思うけど。
最終的に決めるのは自分なわけだし、
全てがそんな言葉では片付かない気がする。
欠点?かなぁ?
隠すことも無い気もするけど。
原稿にしても、ホントに書くことが出来ないと言うのなら
仕方ないけど、
やったらやったで、
もしかしたらそれが転機になるかもしれないし
どう転ぶかはやはり、やってみないと解らない。

Mさんは長い付き合いの中での見解をしめしたわけ
だろうから、ただのオイラなんかの意見よりかは
こまじょさんについて的確なのかもしれない。
だとしても、
やはり疑問符はぬぐえない。
上手くいえなくてごめんね。
by あら?ふぉー (2006-05-04 17:33) 

yukki-

私も後輩に教えたことはないな~(笑)
例えば「○○○はどのようにしたらいいですか?」
って聞かれたら「好きなようにしていいよ」(^^)ヘヘッ
きっと、言われたほうは「なんて先輩だ!」と思ったと思います
多分、聞いた人数分だけ答えが返ってくると思うので
いろいろ試して自分に合う方法を選んだらいいよ、という
意味で言ってきました
…どれくらい伝わったかな…

新興宗教ですか?
次回の記事が楽しみです(^^)
by yukki- (2006-05-04 21:45) 

ビンゴ

長編だぁ。結構親切なんだね。私は面倒くさくなって現地集合ね!って言っちゃうからな。
by ビンゴ (2006-05-04 23:53) 

私の経験で仕事ってあまり上の人や先輩は教えてくれない。
基本は教えてくれますよ、でもあとは見て覚えろっていうことがほとんど。
それが仕事を通した勉強かな?って思っています。
分からなければ聞けばいいし…だから私も後輩ができたときは基本だけ…あとは見て覚えろって(^^)v
最初は冷たいかな?って思ったけど、教えるより動いたほうが覚えるから(^.^) なので自分のやり方を通すかな(^_^;)
あと頼まれたことは、無理ならやらない、余裕があるなら試してみるが私のやり方かな…全然参考にならないけど(ーー;)
by (2006-05-05 23:27) 

基本は押さえたうえで、自分流にアレンジする。自分流の手法を考える。自分流のネットワークを作り上げる。それが醍醐味。アレンジ部分は聞かれなければ教えない。自分の付加価値、自分の武器だから。
by (2006-05-06 18:00) 

mama-witch

 なーんでも書いていいよー。思った通り、感じた通りにね。こまじょのお父さん、娘思いのいい人だったし。何よりあなたが、自分の意思で私といまも付き合ってくれてることが嬉しいよ、ありがとー。
by mama-witch (2006-05-07 17:42) 

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