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『退職カウントダウン日記 9』お得意さまとの別れ。  [私の話]

 会社を辞めるって簡単じゃないのね。仕事を辞めるというのは、これまでの仕事仲間や、仲良くなったお得意さまとの別れでもあるということを、いま実感中です。だから、会社を辞めても一緒に歩いていける、プライベートな友だちの大切さが、しみじみわかります。

 5月9日(火)退職まであと67日

曇り、そして5月だというのに今日も寒い。今年は季節がなんかヘンですよね。

ここは私の『今・レポート』のコーナーです。今日は仕事のあれこれについてお話します。

(お得意先とのお別れ-モブログ)

 今日は茨城に来ています。

 空は曇り、風は冷たく、肌寒いですが、可愛い後輩を連れて引継ぎとあいさつまわりの途中です。

 今日の仕事先は、つ○ば大学病院内にある患者会『く○みの会』です。

 ここは、これまで仕事をしてきた中で、いちばん勉強させていただき、可愛がってもいただいたところなので、最後のごあいさつはとても切ないものがありました。 

 『く○みの会』は、奇数月に一回開かれる乳癌患者さん主催の患者会です。元患者さんたちが集まって、退院したばかりの方の相談を受けたり、ご自分の体験を話してくれたりする、いわば患者さん同志の交流会なのです。

 ここでは乳腺の先生からの専門的な情報や、乳房の再建(乳房を整形手術すること)の具体的な内容、それにかかる費用の問題、今後使用するさまざまな薬の話、罹病当時の自分の症状の様子、そのとき抱えた不安や恐怖、それを乗り越え、乳がんに対し前向きに考える方法など、なった本人にしかわからないことを詳しく教えてくれ、励ましてくれます。

 『く○みの会』で交わされる話は、同じ女性として、とても他人事とは思えませんでした。

 自分も乳癌にならないとは限らない・・・。

 当時も今も、切実な実感まではありませんが、こうした方々に実際に触れる前と後では、ものの見方や考え方に大きな違いが出てきたように思います。

 自分を大切にすること、保険制度の許せない部分、同じ状況にある人に、胸の底を話す勇気と、辛い現実を受けとめる心のもち方。ただ聞いているだけで、それは、健康な人の生き方にも通じる強さや優しさの基本だと、感じるものがありました。

 知らないことに対する無関心、というものの怖さも、この場所に出入りさせていただいたおかげで、学べたような気がします。

 私は営業ですので、他の病院を訪院します。そこで見聞きし、聞かせていただく情報もあります。患者さん同志、お互いに助け合い、自分が得た情報や経験を、惜しみなく伝え合っている『く○みの会』の方々の姿に何度も触れさせていただいているうち、まだ新人だった私も、ここにいる方々と同じ立場のお客さんに、何か役立つことをしたい、と考えたことを思い出します。

 ここでの経験は、会社に言われた仕事を、言われた通りにするだけでなく、患者さんの役に立てる情報を積極的に得たり、接するお客さま(=患者さん)との会話を大切にしたりと、仕事に前向きに取り組む姿勢に繋がりました。

 でもそれは、できるだけ少ない時間で、出来るだけ多くのお客さん を周れ、という会社の方針とは相容れないもので、私の中に少しづつ、ストレスが貯まっていく原因になったようです(笑)

 今思えば、社会の事など何も知らなかった私が、仕事や人生に対して、曲りなりに自分の考えを持てるようになったのも、未体験の営業をそれなりに頑張ってこられたのも、この患者会の皆さんに出会えたおかげだったと思っています。

 短い間でしたが、ここでいただいた経験を、次の仕事に活かし、新しい人生を歩いていこうと思っています。 

 『く○みの会』のみなさん、本当にありがとうございました。

 

☆ここから、前回からのつづき。プライベート・トークです。 

    [退社までの4年間をふり返る]-6

(C君の誕生日事件・・・②)

 出会ってまだ2ヵ月弱のC君は、私の中ではまだ、友だちと呼べるような存在ではありませんでした。

 その意味では、Mさんやその娘のSさんを初めとした原宿の仲間たちにも、まだ仲間と呼べるほどの気持ちを、私は持っていなかったと思います。 知り合って間がなかったし、まだ良くお互いの事を知らなかったし。

 でもお父さんにも会ってもらい、好意を持ちはじめていた人たちでしたから、この後、突然起きたとんでもないハプニングには、びっくり仰天。当時の私には全く理解不能な出来事でした。

 あのときよく、そのまま逃げ出さなかったものだと、いまさらながら思います。

 だって、目の前で始まったのは、私の人生では一度も見たことの無い、凄まじい怒鳴りあい!(殴り合いはありませんでした・笑)

 知り合ったばかりの人達の間にある細かい事情など全く知らない私は、ひたすら驚き、すくみ、かと言って逃げ出すこともできず・・・本当にショックでした。

(C君の不思議な反応)

 私たちが計画し、実行したのは、C君の25歳の誕生祝いです。

 一ヶ月以上かけて準備し、みんなでどうすれば彼が喜び、楽しんでくれるかと話し合いを重ね、時間を作り、工夫に工夫を重ねて。

 だからきっと喜んでくれると、信じていました。

 C君と10年付き合ってきたB君を初め、出会って3年目のAさん、Mさん、彼とは知り合ってまだ半年というSさん、そして新参者の私でさえも・・・でも、C君の反応は、とても不思議なものでした。

 プレゼントの時計を渡したとき、C君はちょっと微妙な顔をしました。そりゃそうです。その時計は、つい先日、彼自身が選んだものでしたから。

 「ごめんね、お兄ちゃんのプレゼントを選んで、なんてウソついちゃって。でもそうしないと、C君がどんな時計をほしがっているか分らなかったし、後でわかっても、許してくれると思ったから」

 私の説明に、C君はもちろん納得してくれました。みんなで考えた、という前後の事情もわかってくれて、嬉しそうに、すぐ腕につけてくれました。少なくともそう見えたのです、私には・・・。

 時計には、全員からの手紙をつけました。カードではなく。

 余命半年、という末期癌の宣告を受けたC君のお父さんのこと、それをこれから受け止めていかなくてはならないC君のことを考えたみんなが、それぞれひとりひとりの気持ちを書いた手紙でした。でも、ひとつひとつの手紙を読み終えた後のC君の様子は、やっぱりヘンです。あまり嬉しそうじゃないし・・・。

 テープについても、みんなで説明しました。

「お父さんの事を含めて、これからいろんなことがあるだろうけど、落ち込んだり、苦しくなったりしたら、これを聞いて、元気を出してね。私達の事を忘れないで、いつもそばにいるから」

 というMさんの言葉にも、どこか上の空。そんなC君の様子に、みんな、なんとなく気づいていたと思います。でも、誰も何も言わなかった・・・。

 それから用意した小さなケーキにローソクを立て、一本だけだったけど、上等の薔薇の花を贈り、お約束通り部屋の電気を消して、ハッピーバースデイの大合唱・・・。

 立派なご馳走はなかったけれど、でもみんなのそれぞれの気持ちを寄せ合った、暖かい誕生祝いだと、私は思っていました。C君の、なんとなく微妙な空気を除いては・・・。

(Mさんの怒り)

 少しづつ時間がたち、でもC君の雰囲気は相変わらずです。ほとんど笑わないし、なんだか迷惑そうにさえ感じられる。

 その空気に、とうとうMさんが口火を切りました。

「C君、何かあったの? あまり嬉しそうじゃないけど・・・」

 それはみんなの気持ちでした。誰も言えなかった言葉。

「無理して喜べなんていうつもりはないし、こんなこと、誕生日の席で言うことでもないんだけど。あなたを見てて、このまま何も言わなかったら、みんなの努力が空回りしたままになる。それではあんまりだと思ってね。もし何かあったのなら、みんなで聞くよ、友だちだもの、遠慮することなんかない」

 C君は何も言いません。

 これは、この後ずっと付き合ってきて分ったことですけど、彼はこういうとき、黙り込んでしまうタイプの人なんです。

 人のことは割り合いあれこれ言うけれど、自分の事となると、とたんに黙り込む。自分に関しては何も言わない。

 そのことでMさんに叱られるという場面を、これから何度も目撃することになるのですけれど。

 このときの私には、そういう彼の日常も、なぜそんなふうになってしまったのかという彼の事情も、まったく知らなかったので、ことの成り行きにひたすらビビり、ある意味シラけ、少し迷惑に思い、できるだけ早く、この状況が収まってくれることを、願っていたのです。

 でもMさんには、わかっていたんだと思います。こういうとき、みんなと長い付き合いのMさんが、何をしなければいけないのかということが。

 私と会ってまもなく、Mさんはこんなことを言ってました。

「世間はよく、人の気持ちを考えろって言うけど、神様じゃあるまいし、人の気持ちなんて、どうやってわかるの?

 それは逆に、この人はこう思っているに違いないって言う、一種の押し付け、これが思いやりだと本人が思い込んでる、お節介の押し売りなんじゃない?

 本当にその人の事を思うなら、その人が言えない本当の気持ちを、ちゃんと言えるようにしてあげて、最後には、その人が望んでいるようになることを、手伝ってあげるべきだと私は思う。

 外からは、誰にもかまわれたくないように見えて、実はわかって欲しいと、胸の奥で思っていることがある。助けて欲しい、でもそれをどう伝えていいかわからない人だって居る。

 いつだって人の、本当の気持ちなんてわからないし、本当のことが言えなくて、どうにもならない状況にいる人は多いと思う。

 だから私はいつもまっすぐ聞くの。聞かないと、こっちの勝手な思い込みを押し付けてしまうことになるから。

 よく誤解を受けるけどね。Mさんは人の気持ちも考えず、心の中にずかずか土足で踏み込む、って。

 でも、本人にも開けられない本音の扉を、誰が開けてやれるっていうのよ。私だって、誰に対してもやるわけじゃない。本当に心配している、放ってはおけないと思う、大切な相手に対してだけよ。

 それにそうする前にはいつも、ちゃんと断る。こういうことを聞きたいんだけど、聞いてもいいかってね。

 人の心に土足で踏み込んだりはしない。ちゃんとノックはする。どうしてノックするのかの理由も、ちゃんと言う。

 それは、人に聞かれたくない、知られたくないと思っている、人の心の内側を聞くときの礼儀だから。

 誰にも言えなかった本音を話してくれた相手に、無責任なことはできないでしょ。聞く以上は責任を取る覚悟が要る。だから真面目にきちんと聞くの。相手を分ったつもりにならないためにね」

 MさんはC君にはっきりと聞きました。

「初めに断っておくけど、私がいまこんなことを聞くのは、私たちがやったことに対する、思ってもいなかったあなたの、その態度の原因を、私自身が知りたいからなの。

 みんなも聞きたがっているんじゃないかと思うけど、それは、そうじゃないか、という私の推理。私がみんなの気持ちを代弁してるなんて思わないでよ。」

 C君は、いつものようにだんまりです。こうなると、こちらが根負けするまで、何時間でも黙り込むのがC君の、無意識の戦法・・・。

 彼がどうしてそんなクセを持つようになったかの理由は、このときからずっとずっと後になって分るのですが、その時の私には、まだわかりませんでした。

 だからMさんの声の大きさ(これにも理由があったのですが)や、強い口調や、譲らない態度に、ひたすらハラハラして・・・。

 でもこのときのMさんに、C君の戦法は通用しませんでした。

 「今日は確かに、あなたに頼まれてした誕生祝いじゃない。でも、少なくともみんながあなたを喜ばせたいと努力したことを、私は知ってる。お祝いを押し付ける気は無いけど、せめて説明して欲しい。みんなの気持ちを、そうやって無視する理由を。何が気に食わないの?」

 なんと言われても、C君は黙っています。誰の目にも、彼の全身から、『反撥』というオーラが出はじめていることが分ります。

「今日もみんな、この雨の中、時間をつくり、集まって、あなたのためにここに居るのよ。自分を思ってくれている人たちの事を、どう思っているの!」

 彼は突然、手首の時計をはずしました。それを私たちにつき返し、立ち上がって言ったのです。

「帰る!」

 とたん、Mさんの顔色が変わりました。

「わかった。でも帰るなら、全員の手紙を、今ここで、みんなの前で破きなさい!それから、その時計、みんながあなたのために用意したものだから、いらないのなら、それもみんなの前でたたき壊してから行きなさい!」

 それは多分、私が初めて見た、人が本気で怒った顔と声です。

「あなたがいま、どれほどの事情を抱えていたとしても、人の心を踏みにじってもいいというほどの事情など、私は認めない!

 私たちがあなたにそういう仕打ちをされる、どんな無礼をしたというのか、ちゃんと説明して!小学生じゃあるまいし、自分の気分が悪ければ、周りにどんなことをしてもいいと思っているの!」

「なんで手紙を破かなきゃいけないの?」 

 えっ 私は耳を疑いました。C君の言葉にも、そのものの言い方にも。

「ぼくはただ、そういう気になれないだけなのに。何でそんな大声で怒鳴られなきゃいけないの」

 私の頭は混乱しました。C君の言葉は、Mさんの質問の答えになってない。それに、どこか投げやりなその態度はなぜ・・・。

 このあと、状況はもっと最悪になり、思いもよらない、人の気持ちの裏側を見ることになったのです・・・。

 

(ごめんなさい、今日はここまでです。このC君事件は、私がこの後みんなと付き合っていく大きなきっかけになり、またそれぞれの上に次々に起きるいろんなアクシデントの始まりにもなっているので、きちんと書きたいと思っています。おやすみなさい。)

◎日記にリンクを張りました。よかったら読んでください。

4/26  『初めまして、退職カウントダウン日記の予告編です。』

5/1   今日から『退職カウントダウン日記 1』を始めます!

5/2    『退職カウントダウン日記 2』

5/3     『退職カウントダウン日記 3』

5/4  『退職カウントダウン日記 4』怒った日

5/8    『退職カウントダウン日記 5』休日あれこれ

5/9  『退職カウントダウン日記 6』叱られて・・。

5/11 『退職カウントダウン日記 7』友だちづくり

5/14  『退職カウントダウン日記 9』お得意さまとの別れ。 

5/19  『退職カウントダウン日記 10』”夢”と出会った話

5/20 『退職カウントダウン日記 11 』初めて会社をサボった!

5/22 『退職カウントダウン日記 12 』あなたは甘い!と言われて。

5/23 『退職カウントダウン日記 13』寄席、初体験!

5/24  『退職カウントダウン日記14』日曜日の想い・・・ 。 

5/31   『退職カウントダウン日記』はワープします!


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Silvermac

私にも同じ経験があります。沈黙というのは一番卑怯な反応と、私は思います。
by Silvermac (2006-05-16 18:04) 

ぐっちょん

こんにちは。いつも読ませてもらっています。
私も分が悪くなると黙っちゃう癖があったのです。
自分の思ったことがなかなか言葉になってくれないというか・・・。
だからついつい黙ってしまうのです・・・。
でもそれじゃ誰にも理解してもらえないと思ったので、今はそういうことがないように気を付けていますよ(^^;
それにしてもMさんの言葉には重みがありますね。
私も勉強になります。
by ぐっちょん (2006-05-16 22:32) 

こまじょ

☆SilverMacさん こんばんは!
 いつも、くっきりとテンポがよくてniceなコメントに、すごく納得させられます。とてもうれしいです!ありがとうござます。

☆ぐっちょんさんいらっしゃいませ
 Mさん含めて、友達にいつも助けられてます。会ってる時は常に勉強です(^-^;)また来てくださいね。
by こまじょ (2006-05-16 22:51) 

yukki-

続きが気になります^_^
by yukki- (2006-05-19 11:46) 

こまじょ

☆yukki-さん
niceありがとうございます。文章書くのが遅くてごめんなさい。なるべく時間差をなくすようにします(*_*;)
カウントダウンはまだまだ続きま~す(^▽^)
by こまじょ (2006-05-20 10:39) 

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