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感想@鬼頭莫宏「ぼくらの」第6巻*ネタバレあり [ぼくらの:感想]

小学館から単行本が出ている漫画「ぼくらの」6巻の感想です。
作者は鬼頭莫宏氏、連載雑誌は月刊「IKKI」です。

全体と第1巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-24
第2巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-24-1
第3巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-24-2
第4巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-25
第5巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-25-1

以下、単行本8巻以降を含むネタバレがあります。
(アニメネタも少々含みます)


最初の感想でも書いたように、
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-24
実は1巻とこの巻だけ、単行本をまとめて買う前に
読んでいます。
wikiでネタバレを知っていたので、
特に戸惑うことはありませんでしたが、
単行本を揃えてから改めて読んでみると
キリエ編ではより泣けました……。

キリエと話す畑飼先生の話は、
私が畑飼を嫌っているからか
虫酸が走りました。
単独で聞いたら、頷いてしまう部分もあると思うのですが、
彼がチズにしたことを考えると
まともに聞く(台詞を読む)ことすら嫌で。
「何を言ってるんだ、この人は」とムカムカしてしまいました。
この人の、女に対する考え方は凄いですよね。
たとえば、前はそういう考えでも
チズのお姉さんを好きになったことで
女性全般に対する考え方が変わった……のならまだ良いのですが
この人は、チズのお姉さんだけが例外じゃないですか。
妹であるチズでさえ、
彼が見下しているその辺の女と同じだった。
チズが身ごもった子供に対しても同じ。
自分の子だけ大事にするっていうのも何ですが、彼はその子でさえも
愛の対象にしない。
もしかしたら、チズのお姉さんと間に子供ができたとしても
チズの子と同じだったかもしれない。
または、チズのお姉さんとセックスした途端に幻想が消えて(笑)
「やっぱりこの女も他の女と同じか」と思って、
彼女に酷いことをするのかもしれない。
なんていうか……救いがないです。
だからこそ、私も素直に「嫌い」と言えるんですが。

田中さんは理論でもいけると思うので、
一度、田中さんと畑飼の二人で、女とか恋愛について
話をしてほしかったです。
田中さんなら、穏やかな冷静な口調で、
ばしっと畑飼に言い勝ってくれると思うので。
(畑飼が理論で負けるのを見たいだけです……)

キリエと田中さんの話。
どちらが思うことも、よく分かりました。
でも私は、自分が大好きで自分が一番大事という
非常に利己的で我儘で賤しい人間なので、
だからこそ、自分の周りにいる人も大事だと考えます。
見ず知らずの他人と自分の周りにいる人々
……業とか責任とか、そういうことを考えなくても、
どちらかが死ななければならないのなら
間違いなく他人の死を選ぶと思ってしまいます。
この人を殺してまで生きてもいいのかなんて
考えもしないんじゃないかな……
理想としてはそんな考えを持つかもしれませんけど
現実にそうなったら、自分の欲に忠実になっちゃう気がします。
だから、それを口にできるキリエは凄いです。

そして優しい人は強いなぁと思いました。
戦闘中なのにジアースの外に出るなんて、
パイロットの中でも彼にしかできないと思います。
だって、自分の地球ならともかく相手の地球ですよ。
アウェイ戦ですよ。
敵性地球人に攻撃されて死んでも負けというルールがある以上、
もし相手の軍に撃たれたら、それで終わりじゃないですか。
勿論、相手のロボットに攻撃される可能性だってあったわけですし、
結果的に両方無かったからこそこの後の話が成立しましたが
こうなれた可能性は物凄く低いと思うので。

P78の田中さんの台詞は重いなぁ。
パイロットになった子供たちは、
その気も無いのに勝手に地球の明暗を握らされて、
地球を守るために否応なく戦わされていますけど、
その子供たちの考え方や性格や行動っていうのは
その子がどんな環境(教育や躾という点も含めて)に
身を置いてきたかによって、作られると思うんです。
で、その環境は誰が作るかというと、この地球にいる大人たちで。
だから田中さんが
「その子供の選択や行動も私達がつくって〜」と言っているように、
子供たちや、彼らが育った後の未来の大人たちが取る行動は、
今の大人たちが作ったものの結果というか、
影響を深く受けているので、
キリエが取った行動っていうのは、大儀的に見れば、
田中さんたち大人とは決して無関係ではないんですよね。
キリエがそう考えてしまうような世界を自分達が作ってしまった、みたいな。
関さんの、
達観したような「私はかまわないですよ」の台詞も好きです。
この人は、田中さんもそうですが、
まず子供ありきで考えてくれるから、好きです。

相手パイロット(敵の世界のカズちゃん?)が、
自傷した手首を見せる見開きのシーンは迫力がありました。
ぶわっと、風の音みたいなのが聞こえたような気もしました。

そしてP95のモノローグで語られる、キリエなりの答え。
「ぼくが勝っても負けても、カズちゃんは死ねない。カズちゃんは死なない」
「だったらぼくの知っているカズちゃんに、業と責任を背負ってほしい」
「だからぼくは戦う」
涙、涙です。

ルールや、戦闘の謎みたいのが明らかになるにつれて、
テーマとなること(焦点が当たる部分)が
徐々に変わってきているのが興味深かったです。

最初は、わけが分からないまま、敵が襲ってきたから抗戦した。
買ったら、操縦した仲間が死んだ。
自分たちパイロットは絶対に死ぬんだと分かった。
↑ここまではチズ編。
そしてモジ編からは、その敵の正体に問題が移っていきます。
自分たちが乗っているコックピットは、敵の急所と同じだと分かった。
敵の急所の外装を剥がすと、中には人間が乗っていた。
でも、自分の好きな人を守るために戦う。
↑ここまでがマキ編。
で、おそらく相手も自分の好きな人を守って戦っている以上、
どちらに正義があるのか、両方とも正義じゃないのか……という問いに
キリエが答えを出したことで
(自分も敵も同じなら、自分が知っている方に生き残ってもらおう)
作品全体がまた一歩前に進んだんだと思えました。

キリエ編ラストの、
カズちゃんの部屋の窓から見た外の風景と、
キリエの「それくらい期待してもいいよね」が巧く合わさって
このラストシーンは非常に印象深かったです。
きっとキリエは、納得して心穏やかに死ねたと思います。



次はコモ(小茂田孝美)編です。
美人でおとなしくてお金持ちで清楚な感じ……という
典型的なお嬢様キャラですが、
ピアノがあまり巧くない(テクニックはあるのに、感情が伴わない)のは
意外でした。
そして、迫りくる死を前にして、
急に情感たっぷりに弾けるようになったというのも分かります。

コモの電話で、マキのお父さんが仕事を休んでまでして
マキを探しているのだと判明します。
実は、P171でコモがジアースのパイロットだと公表されたのを
マキのお父さんがテレビで見るシーンも含めて、
最初に読んだ時(レンタルで借りてきた時)は
「ふーん」と軽く読み流していたんですけど、
5巻でマキと義父の家族愛をちゃんと読んだ後では
非常に複雑な気持ちになりました。
マキのお父さんに、マキはもういないんだって言えないコモの気持ちも
分かります。
そっか……5巻の感想を書いた時にはすっかり忘れてましたが、
マキは多分、ジアースの隙間に収められたんですね。
そして、マキの友達として、加えて彼女の死を見届けた人間として、
マキのお父さんに発表会に来てもらいたかったのかな。

P121〜122。
ここでは、次のパイロットがコモであることが彼女の母親に知らされます。
特に描かれることなく省かれてますが、
この前に、
次のパイロットが自分であるとコモが父親に告げるシーンがあるはずです。
もしくは、コモがあの場(キリエの戦闘直後)にいた田中さんや関さんに明かして、
それを報告として誰かから聞く父親のシーンが。
それを想像すると、とてもせつないです。
コモもお父さんも、内心はともかく、表面上は淡々としていたんでしょうか。

P146〜149は、もうびっくりしました。
「うわぁぁぁぁ!」って思いました。
そしてwikiにあった“実質上は負けてた”みたいな記述はこれかと
納得しました。
完璧に負けてましたよね。

そして黒コエムシがかわいい。
耳の形も違うんですね。
P157で、コエムシがマチに
「くやしそうな顔してる」と言われてるのには笑っちゃいました。

ジアースについて、嘘交じりの詳細が発表されたことで
いよいよ、パイロットたちと地球の人々の考え方に
焦点が当たりました。
これはアンコ編ラスト(8巻)まで続くテーマで、
P189で佐々見さんが言っている
「君達は地球の英雄だが、被災者の敵だ」が
何よりも的確に問題を表わしていると思います。
敵性地球人のパイロットの娘が、
向こうの地球の被災者に襲われて死んだという点も似通っていて、
重いです。
敵のパイロットは、
“生かしたいと思っていた肉親を殺されてしまった以上、
この地球を生かしていてもどうしようもない、
でもただ負けるのは癪だから敵の地球も道連れにしよう”
……という考えになったんでしょうか。


────

第6巻の感想は以上です。
ここまで読んで下さってありがとうございます。
7巻以降の記事に続きます。
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-25-3


2008-02-25 12:15  nice!(0)  コメント(0) 
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