SSブログ

感想@鬼頭莫宏「ぼくらの」第4巻*ネタバレあり [ぼくらの:感想]

小学館から単行本が出ている漫画「ぼくらの」4巻の感想です。
作者は鬼頭莫宏氏、連載雑誌は月刊「IKKI」です。

全体と第1巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-24
第2巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-24-1
第3巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-24-2

以下、単行本8巻以降を含むネタバレがあります。
(アニメネタも少々含みます)
未読の方はご注意を。
今回は特に、物語後半の大事なネタバレを含んでます。

アニメのOPを見た時から、モジ君(の外見)が一番好きでした。
正統派美少年が好みなので(笑)。
しかも、その外見を裏切らず冷静沈着で頭良さそうだな……と。

なので、この4巻も2巻のダイチ編と同様に
特別に楽しみにしていました。

その前に、チズ編の最後です。
チズ……お姉ちゃんが本当に大好きだったんだなぁと思いました。
アニメで、進路先で揉めた時に「お姉ちゃんと一緒じゃ嫌!」と言いつつも
最期は、昔「お姉ちゃんと一緒がいい」って言っていたことを
思い出したじゃないですか。
アニメのこの部分は好きなんですが
チズ編最後の「幸せになって」の一言が重いです。
これ、最後の一回はチズの回想なんですよね。
もしかしたら蛇足なのかもしれない……
でもでも、最後の最後、この「幸せになって」の一言だけは
過去じゃなく、死んだ現在のチズの思いなんですよね。
だから、ジアースの隙間に入れられたチズが
最後の瞬間に見た(思い出した)ことなんだろうなと思いました。
最後の1つ前のコマ、過去回想(服が過去のもの)のチズなのに
涙ぐんでますよね。
その前のやり取りや、表情からしても
お姉ちゃんから「もう、変なチズちゃん」って言われたぐらいでは
泣かないと思うんです。
だから、私たちがよく夢で見る時にそうなるように、
過去を思い出しつつ、
その当時の自分が夢の登場人物としてもいる感じなんじゃないかと
思ってます。
巧く言えなくてすみませんが、
夢の中の自分(過去チズ)と、それを外から見ている自分(夢を見ていると知っているチズ)と、
二つの意識が同化したのが、このラストなんじゃないかと。

その前、チズとお姉ちゃんが対峙する場面で、
お姉ちゃんが、“畑飼先生の恋人”じゃなく
“チズの姉”っていう立場でチズと話しているのがいいです。
姉妹で同じ男を好きになってたという事情を考えれば、
血を分けた姉妹ではなく、恋人をめぐるライバルとも位置付けられるはずなんですが
お姉ちゃんもやっぱりチズが好きなんだなぁと。
最後、P31からが凄いですね。
台詞(発言)とモノローグ(考えていること)が全然違う。
でもどちらも彼女の魂の叫びで。
敵の形状もイチジク=子宮の暗喩でせつないです。
そして、チズはどんな気持ちでキリエにカッター
(カコの喉を切ったやつ)を渡したのか。
キリエは、どんな気持ちでそれを受け取ったのか。
結果的に、キリエは
チズが果たせなかった復讐とは別の理由で
畑飼を殺そうとするわけですが……。


さて、モジ君(門司邦彦)編。
彼の件は、wikiのネタバレを読んでいたので
死後に彼が親友への心臓移植を望んでいることは知ってました。

幼馴染み三人で楽しくやってきた。
でも、その内の一人が実は女の子だと二人は気付いてしまった
──これ、なんて“タッチ”?というわけで
幼馴染みものの定番とも言える設定が、彼の根底にあります。
親友である彼を殺そうとする……のも、
結局、殺せなくて自滅するのも
決して珍しくはないですが、
こういう理由(心臓移植)で二人と共に生きるというのは
さすがに初めてです。

モジ君の場合、自分は絶対に生きられない、死ぬと決まっている諦めから
心臓が悪い親友のナギに自分の心臓をあげようと思うわけですが、
もしジアースのルールが違っていたら
(乗ってもパイロットが死ななかったら)
どうしてたんだろうと思わずにはいられません。
でも……結局、ナギを殺してもツバサが悲しむだけだと思って
殺さないような気がします。

モジはナギを、ナギはモジをそれぞれ羨ましく思っていて
お互いに、相手に絶対に勝てないと思っているのがもう……。
ツバサが一番きつい立場ですが、二人も辛いと思います。

P113の台詞「ぼくがジアースを使って、殺そうと思っていた友達」
P126のモノローグ「そしてぼくは、罰を受けた」
P131の台詞「もうすぐナギに、ドナーがあらわれるよ」
P136のナギの台詞「あの黒い怪獣がやってきて……オレを、殺してくれれば」

こうやって挙げていくだけで泣いてしまいます……。
P178からの、ナギとツバサの会話については長いので、下で改めて書きます。

モジがナギの、拒絶反応ゼロ・フルマッチのドナーだった事から
生き残るのはモジかナギのどちらか一人だったわけですけど、
ツバサを好きで、親友としての相手を好きで羨んだ点も含めると
やはり彼らは、“自分と、もう一人の自分”という関係性なんでしょうか。

そしてP136〜137で書かれているように、
ナギは、自分が死んだ方が良いと思えた点と
ツバサをモジに任せたいと思えるようになった点まで自力で達せられた一方で、
モジはジアースの死のルールが判明した件を経てようやく同じ気持ちになれたので、
土壇場で、二人の心の間に差が出たと思います。
だから、自力でそこまで考えられることができたナギにツバサを任せたいと、
モジも納得したんじゃないかと思います。
モジはナギを殺そうと思ったとはいえ
それが間違ってる方法だとは分かってたでしょうし。

長いので、上では挙げませんでしたが、
P178からのナギとツバサの会話。
もっと言えば、P177で、
「ナギとツバサのために勝たなくちゃ。そしてナギに──」とある
モジのモノローグから。

ヘリコプターの中での二人の会話は、
P116の「これは、罰だ」から始まるモジのモノローグと対になっています。
モジもナギも絶対に死にたくないんだろうな、
ツバサを好きだったんだろうな、
相手に渡したくなかったんだろうな、
でも現実を受け入れたらツバサを相手に渡さざるを得ないと分かって、
そうしたらその二人を素直に祝福できるようになった
……ところまで、二人は一緒です。
この二人の会話は本当に号泣しました。
「たぶんこれは、親友の幸せをねたんだオレへの、罰なんだなぁって」って……。

丁度この時に、モジ(ジアース)が窮地に陥ってるのもあるからなんですが
この会話をモジに聞かせてあげたかったです。
モジはその前に聞いたP136〜137のナギの言葉によって
その気持ちを知ってるわけですが、
でも、ナギがツバサに向かって同じ事を言ってるのを
モジに聞かせてあげたかったなぁっていう。
逆に、モジの「罰」云々のモノローグも、ナギに聞かせたかった。

敵は……ゴンタでしたっけ。
これもドラムと一緒でちょっと嫌だなぁと思います。
急所をさらけ出していることで、
根本的に防御力に欠けていると思いますし。
こう考えると、
主人公たちが乗るのがジアース(カッコイイし!)で良かったなと。

モジ君編については、最後が5巻に掲載されているので
残りはそちらで書きます。

書き飛ばした幾つかの点の感想です。
チズのお腹の子供も契約者に含まれていた点と、
未契約者がカナ以外にいるという点は
ネタバレで見ていたので
(実はカナも契約していたという点も含めて)
事実確認といった感じで読みました。
でも、ネタバレを知らずにリアルタイムで読みたかったです。

関さんと田中さんの契約についても
ネタバレやアニメで知ってましたけど
やっぱりきつかったなー。
だって、契約したら必ず死ぬんですよ。
勝って地球を救って死ぬか、地球と共に死ぬか……なんで。
いくら軍人とはいえ、凄いです。
やはり子供たちの頑張りを見ていたからという理由もあったと思います。
関さん(結果的に乗らずに終わってしまいましたが)と田中さんの椅子は
どんなのだろうとも思います。

でもこの時点では
田中さんはまだウシロが未契約者だとは知らないんですよね。
だからこそ、P88の最後のコマで
「子供に対して誇れる母親ではないから」と言ってるんだと思うんですが
彼女の性格を考えたら、たとえ知ってたとしても
同様に契約したと思います。

あと、これは次巻のモジ編ラストにも関わってくることですが
P174で話しているパイロットたちの会話が……。
「だってねぇ、アレに乗ってるの、子供たちだって聞いてますよ」
「それなのに俺たちがおめおめ逃げ帰れませんよ」
本当にそうだ、まったくそうだと思いました。
私は臆病者ですが、大人なので、
やはり大人のキャラの台詞には
子供たちの台詞以上に感情移入してしまいます。


────

第4巻の感想は以上です。
ここまで読んで下さってありがとうございます。
5巻以降の記事に続きます。
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-25-1


2008-02-25 00:23  nice!(0)  コメント(2) 
共通テーマ:コミック

nice! 0

コメント 2

えまのん

>結局、ナギを殺してもツバサが悲しむだけだと思って殺さないような気がします。

そんな貴方に小説版。

by えまのん (2008-02-27 15:40) 

さくら

■えまのん様

コメントのお返事が抜けてしまいまして
大変失礼致しました。
お勧めありがとうございました。
by さくら (2010-03-01 18:32) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証: 下の画像に表示されている文字を入力してください。

 


この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。