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感想@鬼頭莫宏「ぼくらの」第2巻*ネタバレあり [ぼくらの:感想]

小学館から単行本が出ている漫画「ぼくらの」2巻の感想です。
作者は鬼頭莫宏氏、連載雑誌は月刊「IKKI」です。

全体と第1巻の感想はこちら。
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-24

以下、単行本8巻以降を含むネタバレがあります。
(アニメネタも少々含みます)
未読の方はご注意を。




wikiのネタバレを見ながらDVDでアニメを見ていた時に
(まだ原作を読む前)
一番、見るのを楽しみにしていたのがダイチのエピソードでした。
この2巻に収録されていると知っていたので
読む前は本当に本当に楽しみでした。

まず最初に、第一巻と大きな変化が。
そう、冒頭の登場人物紹介の欄で、
既に死亡してるワクの部分が
スクリーントーンが貼られて暗くなってます。
まだこの段階では生きてる人が多いですが
巻が進むにつれて違ってきて、
今や生きてる人間の方が少ないというのは……
何とも言えません。

さて。第1巻からの続きとなるコダマ(小高勝)編。
コダマの死については1巻の感想で述べましたので
ここでは略します。
彼は、見せ場である
P17の最後のコマ「パイル打ちなら〜」の部分がカッコ良かったです。
父親が死んでから涙目になってますが
それでも必死に叫んでるのがいいです。
(凄いところを敵に見せつけて、自分も父も凄いのだと表現する)
そして、最後P28のモノローグ
「じゃあ、俺は?」の問いがせつないです。
読者が、彼に良い答えを返してあげられないのもまた……。

コダマが死んだと分かった時の
P33の4コマ目のナカマの顔が凄いと思いました。
正直に言うと、鬼頭先生の絵は、好きと絶賛するほどではなく、
また苦手でもないのですが
こういう人間くさい表情がお上手でいらっしゃるんだなぁと
シロウトながらに思いました。
リアルに感じられました。
P37で、チズの顔がポッと入ってくるのもいいですよね。
1巻の、コスプレ云々の時にナカマの顔が入った時みたいで。
この時、チズは何を考えていたのかと想像すると悲しくなります。
自分が死を迎えなければならない事に対する無念さもあるでしょうが、
彼女の場合、お腹の中に子供もいますしね。
畑飼先生への復讐心をより募らせていったのかと思うと
やるせなくなります。
また、顔は出てませんが、
この時はモジも
親友のナギを殺しても意味はないのだと絶望していたはずです。


次のダイチ(矢村大一)編には、上記のように思い入れがあります。
レンタルのDVDでは第5巻にダイチの話が収録されているらしいのですが、
アニメより原作の方が良いという意見がネット上で多かったので、
どうしてもこの話は原作を先に読みたいと思い、
続きが気になるくせに敢えてDVDを借りなかった一件もあります。
(そして未だに借りてない……借りなきゃ!)

ダイチは、ナカマと違って「良い子なのが鼻につかない」感じがします。
二人とも苦労してそうな具合は同じっぽいんですが、なんでだろう……。
幼い弟妹たちの兄であり、父親も兼ねる保護者的存在だからでしょうか。
(ナカマと美子さんは、親子であり姉妹でもある感じなので)

コモみたいに倒れたり、カコみたいに騒いだりしないけど
夜眠れなくて一人で吐く姿はリアルだなぁと思いました。
そしてP74の「どうして、どうして今日なんだ?」には重みがありました。

これは、他のパイロットのエピソードも読んで思ったことですが、
敵やジアースが姿を現すのって、
パイロットが「どうしても明日までは生きたい」っていうように
生に対して強い渇望を抱いた瞬間なんじゃないでしょうか。
でも、こっちの地球だけの話じゃ辻褄が合わなくておかしくなるので
たとえば、地球それぞれの時間の流れ方は少し違っていて
双方のパイロットがそう思った瞬間に
二つの世界が戦闘でもって繋がるんじゃないかと。
ジアースの稼動力がパイロットの命という点を考えても、
策とか機体差の優劣はあるとしても
最終的には、どれだけ地球を守りたいか、他の皆を生かしたいかを
戦闘によって測られている気がします。

戦闘は……ダイチがどうと言うよりも
もし、自分たちの地球の代表がアレ(ドラム)だったら嫌だな−と思いました。
ダイチがホーム戦だったってことは
あのドラムも何勝かはしてるんですよね。
ダイチがぐいっとドラムを持ち上げる姿が、
叔父さんの造園業の手伝いが生かされていて、うわーと思いました。
それと、海に持っていくP96の時に思いましたが、
ジアースでの移動ってかなり難しいですね。
最初は、建物を避けて歩いて……と思ったんですけど、
経済的によくよく考えたら、
街としては、建物よりも道路を壊される方が
被害が大きいですよね。特に高速とか主要道路。
といっても空き地がそうあるわけではなく、
なるべく壊さないようにと思いながらも現実はそうもいかないんだなと
変なところで考えさせられました。

妹に優しかったダイチにしてみれば、
妹を殴るウシロが信じられなかったと思います。
でも、弟がやっとできたことでより感情的になってるマキとは違い、
いきり立つことなく、逆に呆れて諌める部分は
ダイチの性格なんだなぁと思いました。

そして最後。
一番下の妹・四詩ちゃんに、
父親失踪時と同じ台詞を想像として言わせることで、
勝手に失踪していなくなった父親にも、
ダイチのように、どうしようもない事情があったのではないかと
暗に言っているように思えて
悲しくなりました。
できれば父親には帰ってきてほしいんですけど
おそらく一番それを望んでいたであろうダイチがいないのは
あまりにも辛いです。
(弟妹たちは、ダイチや叔父夫婦のお陰で
父親の不在をそんなに気にせずに済んだのではないかと思います)

そうそう、ナカマ→ダイチの電話ですが、
もし用件が「衣裳間に合いそうになくてごめんね」なら、
ナカマが謝るだけ無駄というか
ダイチは全然気にしてないんだろうなと思いました。
死を目前に控えて、衣裳なんてどうでもいいでしょうし。
(もし間に合ってたら着てただろうとは思います)

P104〜105の、
静かな決意をしたようなダイチの顔がとても好きです。
ここは電車の中で読んだのですが、もう泣きまくりでした。

最後の双葉ちゃんの問いに、
読者が直接答えてあげられないのも悲しい。


さて、ナカマ(半井摩子)編。
実は、彼女についてはあまり印象がなく
「真面目そうに『奉仕者』云々……言う子だよなぁ」と
思う程度でした。
なので、彼女のエピソードで泣いたのはなんか意外でした。
(というか、読んで泣かなかったのは、
ワクとコダマだけなんですが)

自分で労働したお金を使いたいって理由で
「仕事」しようと思うのは
ちょっと突拍子ないんじゃ……と思ったんですが
美子さんや周辺の人々の台詞を読む限り、
売春は割とメジャーというか、必要悪みたいな感じで、
こっちの(読者側の)日本よりは大っぴらになされてるようで。
美子さんがとても素敵です。ナカマもイイ子だ……。
町内会の用水路掃除での一件は、
P140冒頭の美子さんの「町内会の義務も〜」の部分で
スカッとしました。

子供って、親の影響を強く受けるじゃないですか。
だから親の考えは子供に移りやすい。
それが、ナカマ親子に対する小田さんの見方に
よく現れていると思います。
(親が「あそこの家の親は〜」と悪口を言っていると、
それを耳にした子がそれを真似て言いふらすとか。
まさに、小学生の時のナカマのエピソードにもありますね)

多分……いえ、間違いなく、
ジアース出現後の一件で、
小田さん親子はナカマ親子に対する見方が変わったと思います。
特に子供。
ナカマも、言いたいことはいっぱいあったはずなんですが
もう達観してますよね。小田さんを殴った時は。
それで、掃除の件を注意するなんて凄い。
2巻最後の描写で、
ナカマの気持ちが小田さんにちゃんと通じてたのも凄い。

人ができる事って、あんなジアースみたいなロボットに乗れても
ごくごく小さな事でしかないのかもしれないですけど
一人の考え方を正したのは凄いなぁと思います。
……なんか「凄い」ばっかりで、語彙がなくて恥ずかしいですが
でも本当に、凄いって思いました。

それと、やはりナカマはP198〜199の
「わたし、だって!! 死にたく、ない!!」が凄いです。
もうボロボロ泣きました。
彼女のエピソードはまだアニメで見てないのに
叫んでる声が脳内で響きました。
回想で、実は美子さんから自然学校を進められたんだって判明した点も
涙、涙でした。
こんなことになっちゃって本当に大変だけど、
ナカマの優しい性格を考えたら
結果的にきっかけを作ってしまったお母さんを責めたことは
一度もなかったと思います。
それに、他のパイロットたちや、小田さん(最後の最後で)とは
“友達”になれたと思いますし。
これに行ったお陰で、友達がちゃんと作れたので。

衣裳は、正直、ダサ(笑)と思いましたが
大袈裟な(非日常的な)感じでいいのかもしれません。
そして、私は元コスプレイヤーなので
短時間で衣裳を作るのはどれだけ大変かをよく知ってるので
(指先を使う細かい作業ばかりなので、集中してやってると物凄く疲れます)
その頑張り具合には脱帽します。
既にいない三人分の衣裳を作ろうとしたのもいいなぁ。
そして、後の巻で分かりますが、
ナカマほど上手じゃないけれど、
他の子たちが彼らの分の衣裳をちゃんと作って、
ナカマの遺志を継いだのも良いです。

ちょっと気になったのは、
小田さんが裸でジアースのコックピットに現れた時に
ウシロだけ動じてないんですよね。
と……年頃なんだから、顔を背けるなり赤らめるなりギョッとするなり
何か反応するべきだと思うんですが(笑)。

あと、髪を下ろしたナカマがかわいかったです。
もし大人になれたら、美子さんとは違う路線の美人さんになったと思います。
田々良さんの「幼児プレイ専門で、ジェンダー逆のM系」は、
不覚にも笑ってしまいました。

途中で入ったモジの解説(スリットと、光点の数の変動)は、
ネタバレを知ってたので別段驚きませんでしたが
もし月刊誌でリアルに追いかけていたらびっくりしたと思います。


────

第2巻の感想は以上です。
ここまで読んで下さってありがとうございます。
3巻以降の記事に続きます。
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-24-2


2008-02-24 20:03  nice!(0)  コメント(0) 
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