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感想@鬼頭莫宏「ぼくらの」第5巻*ネタバレあり [ぼくらの:感想]

小学館から単行本が出ている漫画「ぼくらの」5巻の感想です。
作者は鬼頭莫宏氏、連載雑誌は月刊「IKKI」です。

全体と第1巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-24
第2巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-24-1
第3巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-24-2
第4巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-25

以下、単行本8巻以降を含むネタバレがあります。
(アニメネタも少々含みます)



モジ君編の最後です。
ここの扉絵(三人が一緒にいる絵)を見て「あれ?」と思ったのですが、
ダイチ編以降、メインキャラクターの最後の扉絵は全て
とても幸せな構図なんですよね。
それまでの扉絵が一人ぼっちなので
余計に際立っている感じです。
また、他の人たちは現実にあったかもしれませんが
ナギが小学六年生で発症して学校に来られなくなったのを前提にすると
この「門司邦彦」4の扉絵は
“三人の夢”だったのかもしれないと思えてなりません。
(小学生の時の彼らはランドセルを背負ってる一方で、
この扉絵では普通の学生鞄を持ってるので)
もしくは、本当に数少ない、ナギの体調が良かった日なのかなと。
ナギとツバサが並んでて、数歩後ろからモジがついていく構図も、
いかにも彼らの日常を表わしているような気がしますし、
モジが消えた後の二人の暗喩のようでもあると思います。

冒頭、ナギのことを思ったから考え付くことができたと思うモジ。
もう最後なので、一つ一つの台詞が重いです。
また、特攻した攻撃隊の人の必死さも……!
ヘルメットに描かれた絵が可愛いのは
いざとなったら死も厭わない覚悟を持った人特有の
洒落なんだと思いました。

そして、ジアースのコックピットの一部が割れたことでようやく、
急所=コックピットだと判明。
そして、敵の急所にも自分たちと同じ人間が乗っているのではないかという
恐ろしい疑問も判明。
この辺も、私はwikiのネタバレで見てたので、
できればリアルタイムで読みたかったです。
相当びっくりしたと思います。
(でもこの辺の謎て、wikiで読むだけでも面白かったです)

モジは学校の構内で呼び出されてしまったから
靴がずっと上履きのままなんですよね。
そして、ナカマの衣裳を脱いだ後も
(この時、アンコが目を逸らしてるのがリアルだなと思いました。
確かに、最後の別れなんて、辛くて相手を見られないですよ……)
この上履きのまま病院に行ってて。
結局、ナギは勿論ですが、ツバサにも
ドナーがモジだったとははっきりと分からなかったわけですが、
勘の鋭いモジが「冗談じゃないんだ」(4巻P132)と言い切った件と、
今回、ちらっとモジを見ているところから
いつか彼女はその真相に辿り着くんじゃないかと思います。
誰も本当のことを教えてくれないけど
きっとそうだって思うに違いないだろうなって。
で、それはナギには絶対に言わないとも思います。

P30の「摘出の準備を早く」ってモジに言われた医者達の顔が
辛いです。
ドナーが無事に到着してホッとしてるでしょうが、
これから死ぬ当人を前にしては絶対に喜べない。
反応を見る限りでは、モジがすぐに死ぬという点は疑ってないみたいなので
それは(悲しいけれど)救いかなぁと。

これは私の好みですが、
最後、手術室に向かうモジの顔(P34〜35見開き)が
とても良かったので、
これがラストページの方がいいんじゃ……とも思いました。
でも、雑誌だと向かって右の偶数ページで終わるのが基本なので
絶対に無理なんですが。

皆、最期は印象に残りますが、彼も本当にいい顔をしていると思います。


さて、次はマキ(阿野万記)編です。
実は、ナカマ並みに興味を持ってない子でした。
でも原作を読み終えて……というより、マキのエピソードを読みながら
どんどん彼女を好きになっていきました。
なんてイイ子なんだ、マキは。
そして、義理とはいえ両親も素敵ですよね。
たくさん泣かされました。
五巻は、好きな門司くんのラストが入ってることもそうですが、
このマキの話が大好きなので、
「ぼくらの」の単行本の中でも一番好きな巻です。
この「ぼくらの」は、死と直面した子供というテーマの他、
個々の家族の在り方も繊細に描いていると思っていて、
その点でも、このマキ親子の話は大好きです。
(門司編は家族との関わりが希薄ですが、
家族よりも大事な友達・好きな人という点で、
逆に家族を描いているとも受け取れると、勝手に解釈してます)

お父さんもお母さんもマキが無理をしてるって思ってるみたいですが
小さな頃はともかく現状の彼女の言動を見る限り
あれは性格なんじゃないかと思います。
もしこんなことがなくて
弟が無事に生まれた後にマキが生きられたとしても
生まれる前とあまり変わらない気がします。
多分、率先して弟の世話をして、お母さんの手伝いをして、
お父さんの趣味を冷やかしつつ一緒に楽しんで……って感じ。
そう、お父さんのマニア振りは
しっかりとマキに引き継がれてますもんね。
軍の船とか見た時の嬉しそうな顔は、
無理してる状態じゃ絶対に出てこないでしょうし。

だから、お父さんがマキを叩くのにどれだけ勇気が〜云々のくだりも
大好きです。
夜、こっそりと出かけたマキを叱るのに
お父さんがあっさりとマキのお尻を叩くのも。
いいホームドラマだと思います。

ぐっときたのは
P65冒頭「あたしがいなくなって、
本当の子供がお父さんとお母さんのところへやってくる」と、
P89とP163の、弟に呼び掛けるモノローグ。
P95の「初めての子供は、おまえだよ」のお父さんの台詞。

特に最後のお父さんのは、もうボロボロ泣きました。
ポンポンとテンポ良く話していった際に出た言葉じゃなくて、
P94の最後のコマで一拍置いているのから察するに、
お父さんはちょっと溜めてから言ったんじゃないかと思いました。
そして、あの言葉は
ずっと前からマキに言いたかった言葉じゃないかと思います。
でも普段で言うには大袈裟過ぎるし、気恥ずかし過ぎるしで、
なかなか言える機会がなかったんじゃないかなぁ。
黙って同意してるらしいお母さんの横顔が入るのも、
その後マキが平然と(でも誤魔化しのはず)別のことを言ったのも
好きです。

P99〜100の、敵&ジアースが出たと感覚で気付く時の顔も
いいです。
パチッと目を覚ます音が聞こえてきそうだと思いました。

勿論、P103の「お父さんお母さん、ありがとう」でも泣きました。
きょとんとしている二人の顔も含めてせつないです。
二人は、唐突に変な事を言ったマキのこの瞬間を
一生覚えてるんじゃないかと思います。
マキの死体はどうなったんだろう……。
弟が生まれたのは嬉しいでしょうが、
マキがいなくなったんじゃ
二人はもう目がとけるぐらい泣いたと思います。
そしてお父さんとお母さんは、弟に、
マキがどれだけ素敵な子だったかと、
弟の誕生を楽しみにしていたかを語ると思います。

話で凄いなと思ったのは、最後の最後で、
あんなに嫌っていた実の母のことを挙げた点です(P155)。
「あたしにはあのひどい親の血が流れているんだ。このくらいできる」
という台詞。
マキは、実のお母さんを本当に嫌ってたと思います。
おそらく、今のお母さんのことを大好きな分、
比較して更にキライになってた部分もあると思います。
最後に思い出したとはいえ、
やっぱりその点は変わらなかったんですね……。
そして、(悪い意味で)自分は、
大好きなお母さんの実の子じゃないと言い聞かせてしまう。
自分が大好きなお母さんの子供だと思ったら、
酷いこと
(敵のパイロットを殺し、彼らの世界の100億の人間を消滅させること)をした時、
その大好きなお母さんまで汚してしまうからですよね。
マキにとっては、嫌な事と好きな事それぞれの象徴が、
二人のお母さんだったんだなぁと思うと
これまたせつないです。
ここもいっぱい泣きました。

これは個人的な考えなんですが、
親と子はそれぞれ相手を選べないけれど、
来るべき所に来ているものなんじゃないかと思ってます。
だから、マキは少し遠回りしてしまったけれど、
養子として今のご両親のところに来て、家族として幸せに暮らせたのは
当然のことだと思います。

アニメみたいに、実際は違うのでも
弟をマキに抱かせてあげたかったです。
あと、コモに撮られたスタジオでの写真は、
この後、お父さんとお母さんの手元に届いていてほしいなと思います。
最後に女の子らしい格好をした(変な服だけど/笑)マキの写真を見て、
二人はどう思ったのかなとか、想像は尽きないです。

お母さんもいい感じですが、
マキにカレシができたかもしれないと動揺してるお父さんが
とても可愛いですよね。
いいご両親だ。マキも、いい子供だったと思います。
そうそう、ジアースの命名や漫画の件がお父さんの口から出た時は
胸が痛くなりました。
マキはどんな気持ちでそれを聞いたのかな。

マキの、最後の回の扉絵が
(幼い頃のマキが、ご両親二人に左右の手を持たれて、身体を持ち上げられている)
大好きです。


さて、次はキリエ(切江洋介)編。
アニメでもそうでしたが、カコ、チズ、キリエの話は関連しているので
他の二人の話を念頭に置いて読みました。

カズちゃんが……。
すぐ傍まで怪物(ジアースか敵)が来て、建物を破壊していったのに
自宅は無事で、自分も生きてることが
本当に嫌なんでしょうね。
その後のキリエのモノローグも含めて、痛かったです。
キリエ編は、最初の一回のみがこの巻に収録されていて
メインは次の6巻なので、
彼については次で語ります。

話が前後しますが、この巻のマキの戦闘で
遂に、敵にも自分たちと同じ人間(パラレル世界の別の地球)だと判明しました。
ここら辺(戦闘を重ねる度に、仕組みが徐々に分かってくる)のは
リアルタイムで読みたかったです(笑)。
やっぱりネタバレを知るのはほどほどにしなきゃなーと思いました。
今回(マキ編)はアウェイ戦だったということで
まだ敵はこの戦闘に馴れてないかもしれなくて、
それこそジアースに人間が乗ってるとは知らないかもしれません……。

それと、
以前は子供たちに無情なことを言っていた佐々見さんも
辛い運命に置かれた子供たちの気持ちが分かったようで、
嬉しかったです。
その街の人々には申し訳ないし、
今でも被害をできれば出したくない
最小限に留めたい気持ちに変わりはないでしょうが、
やはり最後の瞬間をこれまでの日常で迎えたいパイロットの気持ちを
汲んでくれるようになったんだなぁって。
パイロットがこれから死ぬのに隔離されるんだとしたら、
あまりにも辛過ぎます。

────

第5巻の感想は以上です。
ここまで読んで下さってありがとうございます。
6巻以降の記事に続きます。
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-25-2


2008-02-25 09:35  nice!(0)  コメント(0) 
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