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さよならベリーズ第3章① さよなら・・・。

    
「私・・・。海の向こうの国に行くことになったの・・・。」

                    「え!?」
     

        通学途中の道の脇では朝の光に照らされたススキが、
          秋の柔らかな風に吹かれて揺れていた・・・。 

  青空の下で朝日に照らされ眩しいくらいに輝いて見えていたモモコは
            寂しそうに僕に言った・・・。
     
           晴れた秋空ときらめく太陽の光が
           モモコの寂しげな表情と対比して
       かえってもの悲しさを引き立たせているように見えた・・・。

        「引越しするの・・・。お父さんの仕事の都合で・・・。」

                  「ええ!?」

        「もう来週にはここには居ないかもしれない・・・。」

                  「えええ!?」

       「いままで楽しかった・・・。雅人くん。いろいろありがとう・・・。」

                 「うそだ!!!」

       「・・・本当なの・・・。だから・・・。さようなら・・・。雅人くん・・・。」

              「うそだー!!!!!!!!!」 

            そう叫びながら僕は走りだしていた!!!

               「あ!待って!雅人くん!!」

               僕はモモコに振り返らず走った・・・。

              これが夢であることを願いたかった・・・。

                      ・・・・・。

                       ・・・。

 

僕の前方に同じ中学校の女の子が歩いているのが見えた・・・。
あれは・・・。
モモコだ!

いつもは友達と一緒に通学することが多いモモコだったけど
今日は一人だった・・・。
たまに通学途中こんなふうに見かけたりするんだけど
挨拶してちょっと2,3事、話をするだけでいままでなんとなく過ぎてきた・・・。

 

モモコは枯れたひまわり畑の前を歩いていた・・・。

もう10月にも入り夏の日太陽に向って咲き誇っていたひまわりも
今は枯れている・・・。

そしてひまわり畑の横にはいつからその種があったのか、コスモスが密集しながら咲き乱れ一面のコスモス畑が広がっていた・・・。



モモコともっと仲良くなりたいな・・・。
今日は一言、二言じゃなくて楽しく話しがしたい・・・。
声をかけて、なんの話をしようか?

今日は僕の通う中学校の文化祭の日だっけ。

その話で切りだしてみようかな・・・。

僕は走って行って、モモコに声をかけた。

すがすがしいほどの青空の中、秋の柔らかい太陽が
振り返ったモモコの顔をまぶしく照らしていた・・・。

でも振り返ったモモコの顔は
何か心配ごとでもあるのか、どこか浮かない顔をしているように見えた・・・。



「あ、雅人くん・・。おはよう・・・。
 ・・・今ね私このひまわり畑見てたんだ。」

ちょっと予想外の展開に内心戸惑う僕・・・。

「初めて私がこの町に引っ越してきた日
 雅人くんに帽子を取ってきてもらったことがあったよね・・・。」

「え?うん・・・。」
文化祭の話しなくちゃ・・・。と思いつつ何気に返事をする僕・・・。

「今、そのときの事思い出していたの・・・。」
モモコは枯れて朽ち果てていくひまわり達を寂しそうな表情で見つめた・・・。

この話の流れだと文化祭の話は後でもいいや。僕は何気に聞いてみた。

「・・・あの帽子ってまだあるの?」
聞いてみて思った。あるわけないじゃん!小学校の時の帽子だぞ!

「持ってるよ!今は被ったりしないけどね!
  雅人くんが取りに行って来てくれたものだし・・・。」

予想外のモモコの返事。
自分がモモコにとってちょっと特別な存在になれたような・・・。
そんな気がした。
そして、被ったりしないけどとっておいてくれている。
そんな気持ちが嬉しかった・・・。

「それにこの町に来たときに被ってた思い出のある帽子だし・・・。」

モモコはそう言って
枯れて消えていくひまわり畑の横で咲き乱れる、コスモス畑を見つめた・・・。

まるで古い世界から新しい世界に目をむけるように・・・。
・・・そんな気がした・・・。

モモコがつぶやくように僕に言う・・・。

「コスモス畑・・・。きれいだね・・・。」

「うん・・・。」

でもいつも見慣れてる風景だし、コスモスなんてそんなに珍しくもないどこにでもある地味な花だから特に思い入れもなく、なんとなく返事をした・・・。 

「この町に来てから3年経つんだね・・・。早いような短いような気がする・・・。」

モモコは少し昔を懐かしんでいる・・・。まるでここから遠くへ行ってしまうかのように・・・。

僕は思ったことを率直にモモコに聞いてみた・・・。

「・・・ここに引っ越してきたのに・・・
 なんかまた引越してしまうような言い方するね・・・。」

「え!?そう!?」

モモコは以外に思ったのか驚いてみせる。

「さっきの私・・・。そんな風に見えた?」

「・・・うん。」

        「あ!」

モモコは何かを思いだしたのか小さくつぶやいた。

そして僕の顔を見つめた・・・。

秋の青く澄んだ空、朝のやさしい太陽の光を浴びたモモコの顔は微笑んでいた・・・。

「どうしたの?」

僕はモモコに聞いてみた・・・。
片思いのモモコと、めずらしく学校に行く道を一緒に歩いていた僕の心の中は
嬉しくて楽しくて自然と口元がゆるんでいるのがわかる・・・。

「あのね・・・。雅人くんに聞いてもらいたいことがあるの・・・。」

そう言って僕を見つめるモモコの瞳は、初めて出会った3年前の小学5年生の頃の面影をのこしたまま、
でも、子供とは言えない女性を感じさせた・・・。 

    「私・・・。海の向こうの国に行くことになったの・・・。」

                    「え!?」



       「引越しするの・・・。お父さんの仕事の都合で・・・。」

                  「ええ!?」

        「もう来週にはここには居ないかもしれない・・・。」

                  「えええ!?」

       「いままで楽しかった・・・。雅人くん。いろいろありがとう・・・。」

                 「うそだ!!!」

       「・・・本当なの・・・。だから・・・。さようなら・・・。雅人くん・・・。」

              「うそだー!!!!!!!!!」 

            そう叫びながら僕は走りだしていた!!!

               「あ!待って!雅人くん!!」

               僕はモモコに振り返らず走った・・・。

              これが夢であることを願いたかった・・・。

                      ・・・・・。

                       ・・・。

                                  ・・・つづく


登場人物の紹介

雅人:この物語の主人公。性格は内気で、妄想癖がある。
    中学に入ってマンガばかり描いていたので近眼になりメガネをかけている。
    学校が終わるとすぐ帰ってしまう、いわゆる帰宅部。
    特にこれといった特徴もない普通?の男子中学生。
    小学校から同じクラスだったモモコに片想いをしている・・・。

  モモコ:http://blog.so-net.ne.jp/masato-k/archive/20060502-0-1
                雅人のクラスメート。13歳。負けず嫌いで頑張り屋。
                明るくて無邪気な振る舞いが、時として主人公の雅人を翻弄する。
 佐紀:
http://blog.so-net.ne.jp/masato-k/archive/20060730-1-1
              雅人とモモコのクラスメート。背は小さいがしっかり者。
              ベリーズのリーダー的存在。
 千奈美:
http://blog.so-net.ne.jp/masato-k/archive/20060801-0-1
              中学1年生。自分の事を「ちな」と言う。
              素朴な容姿、天然ボケと舌足らずな喋り方で実年齢より
              幼く見られがち・・・。
              本人は子供っぽく見られることを気にしているのだが・・・。
              同じ学年でも、大人っぽく見られる「雅」に憧れている。
  舞波:
http://blog.so-net.ne.jp/masato-k/archive/20060813-0--1
              千奈美と同じクラスの中学1年生。
              少し恥ずかしがりやでおとなしい性格。
              好きな男子がいるようだが・・・。
              図書委員。
 友理奈:
http://blog.so-net.ne.jp/masato-k/2006-08-13-1
                                              明るくて爽やかな女の子。
               ベリーズの中で一番背が高いが(170センチ)
               小学6年生。
 梨沙子:
http://blog.so-net.ne.jp/masato-k/2006-08-24
                                             誰もが振り返るほどの美少女。
               おっとりしていてマイペース。
               主人公をからかって遊ぶ。
 雅:
http://blog.so-net.ne.jp/masato-k/2006-08-27-2
                                          中学1年生。その風貌から、大人っぽく見られやすい。
 茉麻(まあさ):
http://blog.so-net.ne.jp/masato-k/2006-09-09-2
                                                            困っている人を見ると、放っておけない。
                         男子よりも力が強い!?

 まこと:小学生の頃からの雅人の親友。お調子もので雅人とは正反対の性格。
     小学生の頃から始めたドラムの才能がある。


このブログは私が書いたイラストと写真入り小説(想像物です)をメインにしてます。
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リンク集 http://blog.so-net.ne.jp/masato-k/2006-07-23

マンガ「ももちとさきっち」
http://blog.so-net.ne.jp/masato-k/archive/20060625-0--1

  イラスト入り小説「さよならベリーズ~うつろいゆく季節の中で~」
                              第一章 モモコとの出会い
                       
http://blog.so-net.ne.jp/masato-k/archive/20060427-0--1
   イラスト入り小説「さよならベリーズ~うつろいゆく季節の中で~」
                              第二章 夏祭りの思い出
                       
http://blog.so-net.ne.jp/masato-k/archive/20060723-1-1                       イラスト入り小説「さよならベリーズ~うつろいゆく季節の中で~」
                                 
第三章 さよならモモコ・・・

ぜひぜひ感想をお待ちしております!



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Baldhead1010

こんな女の子と別れるのは、辛いだろうなぁ・・・。
by Baldhead1010 (2006-10-15 15:04) 

masato

わざわざ見にきていただいてありがとうございます!
この先の展開はどうなるのでしょうか?
お楽しみに!また見にきてくださいね!
by masato (2006-10-17 01:25) 

シャケオ

うぉ!この制服桃子、可愛い!
by シャケオ (2006-10-17 08:44) 

masato

シャケオさん。
このモモコは1年前、初めてパソコンを買ったとき、一緒にパソコンの中に入ってた、フォトショップエレメント2.0というソフトで着色したものです。(今回、全国の人に公開するにあたって3時間くらいかけて、手直しはしてあります。)
タイトルも含めて、第3章は、ほとんどのイラストを、フォトショップエレメントで着彩してあります。
by masato (2006-10-19 07:21) 

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