さよならベリーズ第2章 夏祭りの思い出③
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第二章 夏祭りの思い出
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ぜひぜひ感想をお待ちしております!
その子は僕の知らない子だった。
僕は初めて会う女の子になんて返事しようか、一瞬戸惑った。
(僕はどうも人見知りをしてしまう・・・。)
そんな僕の様子を察してか、佐紀ちゃんがこの子を紹介してくれた。
「あ!この子はね!私の近所の友達で1コ下なの・・・。」
「千奈美でっす!よろしくっ!」
明るくて元気な声。この子は人見知りなんてしないような感じだ。
「ちなはねえ!佐紀ちゃんと一緒に遊びに来たんだよっ!」
・・・ちな?・・・ああ、千奈美ちゃんは自分の事を、ちな、って言うのか・・・。
身長は僕と同じ160センチくらいだけど、幼いような感じがする・・・。
千奈美ちゃんは少し高めの声と舌足らずな喋り方で話を続けた。
「ちなと佐紀ちゃんはねえ、この後お祭りにも遊びに行くんだよ!
メガネのお兄ちゃん達も行くの?」
・・・メガネのお兄ちゃん!!たしかに僕は黒ふちのメガネをかけている。
でもメガネの・・・なんて呼ばれたことないぞ。しかもお兄ちゃん!!!
たしか一コ下(中学1年生)だって佐紀ちゃんが言ってたけど、いつから兄になったんだ!?
「・・・でね!りんご飴とか、わた飴もいいけど、やきそばとか・・・」
え!?こっちが返事してないのに喋ってたの?
「焼きそばとか・・・。あ!おーどんあるかな?冷えてるの!冷やしおーどん!」
一瞬僕は固まった・・・。なんだ?おーどんって?
まことも同じように固まったらしい・・・。まことが聞いた。
「お、おーどんって何・・・?」
「え?おーどんはおーどんだよ!」
すかさず佐紀ちゃんが割り込んだ。
「おーどんじゃなくて、おうどんでしょ?うどん!」
どうやら千奈美ちゃんは、うどんの事を「おーどん」と呼ぶらしい・・・。
「えー?おーどんって言うよ?」
・・・しかも、結構頑固だ・・・。思い込み激しい子かも・・・。
「・・・どっちにしてもお祭りの露店でおーどんは無いと思うよ・・・。」
まことが諭すように千奈美ちゃんをなだめる。
・・・なんだか僕はミョーな脱力感を感じて、肩の力が抜けた・・・。
「そっかあー。無いのかー!」
でも千奈美ちゃんは笑っていた。
・・・なんか、この子すごく笑顔のかわいい子だなあ。無邪気というか・・・。
見てるとこっちまで楽しくなってくるというか・・・。
まことが佐紀ちゃんと千奈美ちゃんにあらためて声をかけた。
「ね!一緒に遊ばない?えっと・・・鬼ごっことかしようよ!」
「え!?やだっ!」
佐紀ちゃんはサッと、その小さい体を隠すように手で覆った。
・・・鬼ごっこは失敗だったな。まこと・・・。僕はチラっと横目でまことを見た。
「ちなはいいよー!じゃ、ちなが鬼ね!」
また僕はガクっと肩の力が抜けた。
(・・・千奈美ちゃんが鬼かあ・・・。タッチできないじゃん。)
佐紀ちゃんがすかさず割りこんでくる!
「あ、あの、ちなちゃん!私たちあんまりゆっくりしてられないじゃん!
・・・ちなちゃん、髪切るんでしょ?」
「あ、そっかー!そうだね!ちょっとイメチェンしようと思ってたんだっけ。
セクシー大人じゃん!って感じにするの!
早くしないと髪切る時間無くなっちゃうもんね!」
・・・セクシー大人じゃん・・・(汗)
僕としてはそのままでも十分可愛いとおもうけど。・・・口には出さなかった。
「だからごめんね。まこと君と雅人君・・・。」
佐紀ちゃんは苦笑いして言う。
・・・佐紀ちゃんは背は小さくて小学生にも見えるけど、
とってもしっかりしてる子だなあ。
ごめんね、なんて言われたらこっちが悪い気がしちゃう。
「じゃーね!バイバイっ!」
千奈美ちゃんは笑って手を振る。
「またね!雅人君。まこと君。」
そして佐紀ちゃんと千奈美ちゃんは木々の生い茂る茂みの中に消えて行った・・・。
・・・。
「・・・俺たちも帰るか・・・。」
僕が思ってたことと同じ事をまことが口にした。
僕たちはTシャツとジーンズとタオル、あと、携帯電話なんかが置いてある
岩場の上に登っていった・・・。
・・・つづく