エピソード1-4(フィクションなので登場人物は架空です) [創作]
ハツの顔は恐怖にゆがんでいた。
老婆は言う。
「血を絶やすな。子を産み、この国、この世界に我が血筋を広めるのじゃ。あの男をそなたの意のままにし、利用せよ」
「おまえなどの指図は受けぬ」
思い直したハツは刀を取り、老婆を切りつけようとした。しかし一足早く老婆の姿は見えなくなっていた。
ハツはがっくりと膝をついた。自分の運命から逃れる道はないのか。生まれてから今まで、けして心安らぐことはなかった。今、あの男と暮らすことで、はじめて普通の女としての幸せをかみしめている。それも束の間のことなのか。
悲嘆に暮れてはいたが、涙は流さない。涙などとうに忘れてしまったのか、実際に血も涙もないのか。
「人の声が聞こえたようだが、誰か来ておるのか?」
ハツは迂闊にも男が入ってきたのに気がつかなかった。よほど取り乱していたのだろうか。
男は庭に打ち捨てられた刀に気づいた。
「刀か?ワシを切りつけようとでも思うたか?物騒なものは片付けよ」
老婆は誰にも気づかれずに屋敷に入り、誰にも気づかれず音もたてずに出て行ったのか?
男も、男の家来も、誰も気づいてはいない。
「殿の命、いかにして頂戴しようかと考えておりましたが、長らくこのようなおなごらしい暮らしぶりをしてまいりましたなら、刀も使えぬようになっておりました。情けのうて、泣いておったところでございます」
「それでよいわ」男は笑いながら満足そうに答えた。
ハツの不安は男の笑顔で紛らわされ、そして幸せだった。
祈り
あの日以来、ハツは伴天連を招いて話を聞くようになった。男と共にいる時は異国の見聞の話が中心だが、ハツだけの時には、神のことばかりを問うた。
救われるならば何でもしよう。死ねば天国か地獄かだと言うが、今まで生きてきて、見てきたことこそ地獄ではないか。信じることで天国に行けるのならば、天国こそが心休まる場所ならば、何としてでもそこへ行かねばならない。
ハツは一心不乱に祈った。
そんなハツを男は気に入らなかった。
そんな時、ハツは身体の異常に気づいた。
うーん…いよいよご懐妊、と言うところでしょうか。彼女の気持ちはますます自分でも分からないところへと行ってしまいそうです。ぜひぜひ続きを!(^^)
by kyao (2006-09-14 07:53)
kyaoさんへ
いつもありがとうございます。キャストは伊東美咲と佐藤浩市、夏木マリというイメージでよろしくお願いしますw
by りんたろ (2006-09-25 19:33)