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赤い指 加賀恭一郎シリーズ [本]

東野圭吾の加賀恭一郎シリーズの第7作。
赤い指01.JPG
暗いです、重いです、読後もすっきりしません。

「赤い指」は、倒叙式ミステリーです。
倒叙式とは、簡単に言いますと、刑事コロンボや古畑任三郎のような形式です。
初めに犯人側から描写がされ、読者は、犯人がわかった上で物語が進みます。
刑事がどのようにして犯人を追い詰めていくかが、物語の醍醐味です。
倒叙式の魅力は、犯人と刑事の丁々発止の駆け引きであり、犯人が社会的地位の高い人物や刑事より頭脳明晰と思われるほど、物語が盛り上がります。
ドラマなどでは、刑事より犯人の方が大物俳優ということが、よくあります。

以降ネタバレ含みます。



しかしながら、「赤い指」はどうでしょう。
「犯人の父親」目線で、物語が進みます。
「犯人の父親」は、平凡なサラリーマン。
家には、認知症の親と気の強い妻、そして、引きこもりの息子。
その引きこもりの息子が、少女をいたずら目的で家に連れ込み殺害してしまう。
その息子の罪を隠すために、父である主人公が奔走する話です。
主人公は、頭脳明晰ではありません。
人もうらやむ、高い地位で高慢な人でもありません。
綿密な計画もあるわけでもなく、思いつきで、息子の犯罪を隠そうとします。
そんなことでは、あの「加賀恭一郎」と渡り合えるわけがありません。
勝負は初めからわかっているのです。
むしろ、力無いサラリーマンの奔走を読みながら、悲哀を感じてしまいます。

物語は、「犯人の父親」と「刑事」のやりとりよりも、「犯人の父親」の家庭の描写に重きをおいています。
認知症の人の介護問題、息子の引きこもり問題など、現代社会の問題を描き出しています。
でも、ミステリーに、ここまで描写が必要なのかというほど、重い気持ちになります。
主人公である父親が、かわいそうに思えます。
ま、物語が進むにつて、その父親に対しても同情すらできない展開となるのですが、そこまでのネタバレはここでは書かないこととします。

とは言え、この「赤い指」は読まなくてよい作品かと言われると、そうとは言えないもどかしさ。
加賀恭一郎シリーズに興味がある人は、読んでもいいかなと思います。
この作品では、加賀恭一郎と加賀恭一郎の父との関係が描かれています。
そして、ドラマ版「新参者」で、加賀恭一郎(演:阿部寛)とコンビを組んでいた松宮刑事(演:溝端淳平)の関わりも描かれています。
本作品では、ドラマ版「新参者」同様に、このコンビが聞き込みに廻っていますので、ドラマを観ていた人は、「阿部寛&溝端淳平」を想像しながら読めて楽しめます。

今日の結論:「新参者」をドラマで観て、松宮刑事のことが気になった人は、この作品を読んでみましょう。

これまで紹介した加賀恭一郎シリーズ
新参者
卒業
嘘をもうひとつだけ


赤い指 (講談社文庫)

赤い指 (講談社文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/08/12
  • メディア: 文庫





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コメント 2

瀬木あおい

東野さんは重たくなるとトコトン重いですよね~。
コレもスゴそうだ(苦笑)。

by 瀬木あおい (2010-08-07 16:09) 

yan

瀬木あおいさん、ありがとうございます。
重い話は、好きじゃないです。
気分が暗くなりますからね。
by yan (2010-08-07 20:45) 

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