ベートーヴェン交響曲第９番「合唱」（フルトヴェングラー「真正」バイロイト盤）

ベートーヴェン　交響曲第９番「合唱」
　　　エリーザベト・シュヴァルツコップ（S）　エリーザベト・ヘンゲン（A）
　　　ハンス・ホップ（T）　　　　　　　　　　　　オットー・エーデルマン（Bs）
　　　バイロイト祝祭合唱団
　　　ヴィルヘルム・ピッツ（合唱指揮）
　　　バイロイト祝祭管弦楽団
　　　ヴィルヘルム・フルトヴェングラー（指揮）
　　　１９５１年７月２９日ライヴ
　
年末「第九」第７弾、最終回。
ラストを飾るのは今年のクラシック界で最大の話題作ではないかと
思われる「真正」バイロイト盤。
従来のＥＭＩ盤とどちらがゲネプロか本番かで
いまだ論争が続いているようだけれども、
とりあえず今までとは全く別テイクの録音ということだけで
あまり細かいことは気にせずにとりあえず聴いてみる。
そういう細かいことは研究家と「自称」コアなファンに任せておけばいい。

まず１楽章冒頭、すでにＥＭＩ盤とは全く違った雰囲気。
幻想的、神秘的だった従来盤に比べると随分手探りな感じで
居心地があまりよろしくない。
よく言えば一音一音丹念だ、と言うことなんだろうけれども
そのせいで音楽の流れがイマイチしゃきっとしない。
２楽章も従来盤の「自由奔放な強靭さ」に比べると
随分感触が固く真面目一辺倒のような演奏。
ただ、この集中力は４２年のＢＰＯ盤に匹敵する素晴らしさ。
３楽章も最初は随分押さえられていて平凡な感じだけれども
徐々にフルトヴェングラーの魔術にはまっていく感じ。
さすがにこの楽章はどの演奏で聴いても
フルトヴェングラーは素晴らしいと再認識。
４楽章も１楽章からの流れと一緒で随分肩に力が入って
フルトヴェングラーにしては珍しく随分無理して腕ずくで
音楽を作り上げている感じ。
不慣れなバイロイト祝祭Ｏのため、って言うことも
あるのかもしれないけど。
主部～フィナーレにかけては従来盤を凌ぐかもしれない。
独唱、コーラス陣は絶好調だしオケもばっちり決まっていて
終結もしっかりと決まっていて素晴らしいと思う。

全体として従来のバイロイト盤の別テイク、と言うよりは
４２年のＢＰＯ盤の「超真剣勝負」に近い印象。
ただアンサンブルはＢＰＯ盤より当たり前だけれども随分劣り、
このライヴ一発にかける集中力も手探りでアンサンブルを
まとめているためか時に切れてしまうのが惜しい。（特に前半楽章）
ＥＭＩのレッグが
「良い演奏だったが、今まで以上にすばらしい演奏とは言えなかった」
と評したのもなるほど、うなずける。
この演奏ならば従来のＥＭＩ盤の方がずっと感動的だし
４２年ＢＰＯ盤にも遠く及ばないと思う。
ただ決して駄演と言うわけではなく、あくまで比べればという話なので、
新しいフルトヴェングラーの第九が発見された、
ということを素直に感謝するべきだろうと思う。

最後にこの演奏が最初に「フルトヴェングラー・センター」会員のみを
対象に配布された件について。
別にそれはそれでよかったと思う。
会費を払って会員になっているわけだし、その恩恵を受けるのは当然。
しかし、今回オルフェオ盤が発売されたことで

「せっかく会費払ってこの盤を入手するためだけに入会したのにもう市場に出回るとは」
「なんでセンターは一般販売を許したのか」

等々ちらほらとこんな書き込みがあるのはどうかと。
会員は特別な存在とでも思っているのか？
何様のつもりなんでしょうかね。
センター会員でなければ、最近流行の盤起し復刻盤を
片っ端から聴いていなければフルトヴェングラー・ファンとは呼べない、
という風潮、どうにかならんもんですかねぇ。
元々放送局所蔵の音源、一般に出回るのは目に見えていたはずで、
それを待てなくてわざわざ会員になった自己責任でしょう。
しかも音質はどうやらセンター盤の方が優れている模様。
それで満足できないもんですかね。
どうも「自称」コアなフルトヴェングラー・ファンにはこういう人が目に付きますね。
「一般的な」フルトヴェングラー・ファンの私から見るとよくわからんことだらけです。
あっ、ファン、センター会員の方あまり気を悪くせずに。
あくまで一部ファンの話だと思うので。
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最後に来年末のために今回の「第九」特集で取り上げた盤の一覧。

フルトヴェングラー「真正バイロイト盤」（この記事）
マゼール、クリーヴランドＯ
シューリヒト１９５４ライヴ
シェルヘン１９６５ライヴ
フリッチャイ、ベルリンＰＯ
ライナー、シカゴＳＯ
小澤、サイトウ・キネンＯ