舞妓Haaaan!!! [2007年 レビュー]
「舞妓Haaaan!!!」(2007年・日本) 監督:水田伸生 脚本:宮藤官九郎
クドカンの(テレビドラマの映画化を除く)オリジナル映画脚本は、「GO」(2001)、「ピンポン」(2002)、「ドラッグストア・ガール」「ゼブラーマン」「アイデン&ティティ」(2003)、「69 Sixty nine」(2004)、「真夜中の弥次さん喜多さん」(2005)以来8本目。
今回は「舞妓さんと野球拳をすること」を夢見る若いサラリーマンが目的達成のために猪突猛進する物語で、これを「クドカンらしい脚本」と言う人がいるが、僕はテレビドラマをまったく観ない人間なので、それが正しいのかどうかは分からない。ただこの映画を観て僕は「この人は足し算の巧い人だなあ」と思った。
京都の花街を舞台に映画を作る、というのは宮藤官九郎のアイディアではなく、日テレのサラリーマン監督水田伸生だと言う。
僕はそう聞いてますます合点がいった。
宮藤官九郎はこの映画のストーリーを作る過程で、「舞妓に入れ込む男の情熱だけでは2時間もたないな」と早々に気がついたのだろう。さらに「主人公の男と舞妓の2人がストーリーの軸になったのではスピード感が出せない」ことも見切ったのだと思う。そこで編み出したのが「一人の舞妓を軸にして2人の男が戦う」という図式だ。
舞妓を中心に据えてしまえばそれはコマの心棒と一緒で、周りだけが激しく回転しているように見える。回転のバランスを取るために舞妓の周りを駈けずり回る男をもう一人「足す」ことでバランスも取れる。スピード感も存分に出せると言うわけだ。
「舞妓Haaaan!!!」は内藤貴一郎という型破りなキャラクターをクドカンがひねり出し、水田監督がそれを堤真一にやらせた段階で体裁は整ったと言っていい。堤真一は素晴らしい喜劇役者だと思う。
もうひとつの足し算は、言うまでも無く柴咲コウ演じる富士子というキャラクターである。
物語の中盤、ストーリーの行く先が一旦見えた辺りで富士子のエピソードが始まり、観客はここからお茶屋の舞台裏を観ることになるのだが、このタイミングはクドカンの計算によるものだろう。絶対に中だるみはさせないという売れっ子作家のプライドを垣間見た気がする。
足し算はこれで終わりじゃない。
主人公鬼塚の目的を、途中「打倒!内藤貴一郎」にすり替えたのも、「目的をひとつ増やす」という足し算である。ここがもっともスピード感に溢れいて、かつ馬鹿馬鹿しく笑えるところだが、実は本来のテーマからは大きく逸脱している。これは「目的をひとつ増やしてしまった」のだから当然なのだが、この足し算も無いとドラマはもたなかっただろう。
大したネタじゃなくても、何とか形にする技を持った脚本家。
宮藤官九郎とはそういう人なのだ。
阿部サダヲ、堤真一、柴咲コウ、そしてドラマの鍵となる舞妓、駒子を演じた小出早織の4人が4人ともいい。
これは監督の腕だろう。
植木等さんにとってはこれが遺作になってしまったが、そのワンシーンも抜群にいい。
その佇まいがなんとも「粋」で、同じ男として感動をしてしまった。
デート映画には申し分のない1本。何も考えずに、ぜひ(笑)。
クドカンの(テレビドラマの映画化を除く)オリジナル映画脚本は、「GO」(2001)、「ピンポン」(2002)、「ドラッグストア・ガール」「ゼブラーマン」「アイデン&ティティ」(2003)、「69 Sixty nine」(2004)、「真夜中の弥次さん喜多さん」(2005)以来8本目。
今回は「舞妓さんと野球拳をすること」を夢見る若いサラリーマンが目的達成のために猪突猛進する物語で、これを「クドカンらしい脚本」と言う人がいるが、僕はテレビドラマをまったく観ない人間なので、それが正しいのかどうかは分からない。ただこの映画を観て僕は「この人は足し算の巧い人だなあ」と思った。
京都の花街を舞台に映画を作る、というのは宮藤官九郎のアイディアではなく、日テレのサラリーマン監督水田伸生だと言う。
僕はそう聞いてますます合点がいった。
宮藤官九郎はこの映画のストーリーを作る過程で、「舞妓に入れ込む男の情熱だけでは2時間もたないな」と早々に気がついたのだろう。さらに「主人公の男と舞妓の2人がストーリーの軸になったのではスピード感が出せない」ことも見切ったのだと思う。そこで編み出したのが「一人の舞妓を軸にして2人の男が戦う」という図式だ。
舞妓を中心に据えてしまえばそれはコマの心棒と一緒で、周りだけが激しく回転しているように見える。回転のバランスを取るために舞妓の周りを駈けずり回る男をもう一人「足す」ことでバランスも取れる。スピード感も存分に出せると言うわけだ。
「舞妓Haaaan!!!」は内藤貴一郎という型破りなキャラクターをクドカンがひねり出し、水田監督がそれを堤真一にやらせた段階で体裁は整ったと言っていい。堤真一は素晴らしい喜劇役者だと思う。
もうひとつの足し算は、言うまでも無く柴咲コウ演じる富士子というキャラクターである。
物語の中盤、ストーリーの行く先が一旦見えた辺りで富士子のエピソードが始まり、観客はここからお茶屋の舞台裏を観ることになるのだが、このタイミングはクドカンの計算によるものだろう。絶対に中だるみはさせないという売れっ子作家のプライドを垣間見た気がする。
足し算はこれで終わりじゃない。
主人公鬼塚の目的を、途中「打倒!内藤貴一郎」にすり替えたのも、「目的をひとつ増やす」という足し算である。ここがもっともスピード感に溢れいて、かつ馬鹿馬鹿しく笑えるところだが、実は本来のテーマからは大きく逸脱している。これは「目的をひとつ増やしてしまった」のだから当然なのだが、この足し算も無いとドラマはもたなかっただろう。
大したネタじゃなくても、何とか形にする技を持った脚本家。
宮藤官九郎とはそういう人なのだ。
阿部サダヲ、堤真一、柴咲コウ、そしてドラマの鍵となる舞妓、駒子を演じた小出早織の4人が4人ともいい。
これは監督の腕だろう。
植木等さんにとってはこれが遺作になってしまったが、そのワンシーンも抜群にいい。
その佇まいがなんとも「粋」で、同じ男として感動をしてしまった。
デート映画には申し分のない1本。何も考えずに、ぜひ(笑)。
こんにちは。この作品、本当に爆笑でした!
> 大したネタじゃなくても、何とか形にする技を持った脚本家。
聞いたところによると、監督さんは脚本の初稿を読んだ時に
あまりにも面白すぎて映像が負けてしまうのでもっと普通にしてと
書き直させたそうです。でも、やっぱり初稿の面白さに負けて初めに戻したとか。
きっと脚本に合わせて役者さんや美術さんも頑張ったから
こんなに面白い作品になったのかも知れませんね(^^)
by non_0101 (2007-06-10 16:45)
脚本は映画の設計図ですからね。
設計図の出来が良ければほとんどの場合は失敗しない、というのも頷けます。
阿部サダヲがぶっ飛んでて面白かったですね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-06-10 17:28)
kenさんのブログに出会えてよかったなあ、と思うのは、以前だったら絶対に!!観ようと思わなかった映画をたくさん「観たい!」と思えるようになったことです。この映画も、予告を観ても前は絶対観なかったと思うのですが、kenさんのレヴューを読んでいると「なんだか面白そう」と思います。
紹介される映画はホントに色とりどりで「玉石混交」なんでしょうが、映画に対して、ニュートラルで居られるようになった気がします。感謝です。
by Sho (2007-06-10 21:49)
これは見たいなあ。。。
by **feeling** (2007-06-10 22:12)
>Shoさん
ありがたいお言葉ですが、僕自身は映画に対してニュートラルじゃないです。
かなり偏った目線で映画を観ていると思いますねえ。
何より随分歳をとってしまったし(笑)。
でも、記事を読んで「面白そう」と思って頂けるのは嬉しい限りです。
nice!ありがとうございます。
>keiko_keikoさん
Gyaoばっかりじゃなく、たまには劇場で観ましょうね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-06-10 23:31)
予告見たら、すっごく面白そうだなと思いました。
爆笑したい気分なので、早速、見に行こうかなと思います。
キャストもいいし、「舞妓Haaaan!!!」というタイトルがいいですね。
by kotori (2007-06-17 21:48)
爆笑したい気分のときってありますね(笑)。
それにはもってこいじゃないでしょうか!
楽しんで来て下さい!
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-06-17 22:39)
今晩は。観てきましたよ~いやーおもしかったです。みんなの笑いのつぼが同じなので、劇場の中で久々に、声に出して笑っちゃいました。今でもあの阿部サダヲの白ブリーフが目に浮かびます。あはは・・・おやすみなさい
私も、違う観点からの映画批評はすごく参考になりました。
by eklady (2007-06-18 01:22)
満員の劇場で観ると楽しいでしょうねえ。
僕も早いうちに一度行こうかな?
by ken (2007-06-18 01:51)
こんばんわ。
私ももう1回と言わず、2回3回と行きたい。
そんな映画です。
本当に何も考えずに、おもいっきり笑えるので
なんとも言えん気分にさせてくれますね。
by (2007-06-21 21:51)
今夜久々に「舞妓Haaaan!!!」してくるわ…てな感じでしょうか?
そんな映画ってなかなか無いかも知れませんね。
そんな映画と出会えるってのは幸せだと思います。
by ken (2007-06-22 02:52)
kenさんの分析いちいち納得です。
最初のnet上のやりとりで(笑)とか(爆)とかの阿倍サダヲと堤真一の読み上げ方が最高でした。コメディの堤さんほんとに好きです。
by satoco (2008-12-16 02:14)
SABU監督の作品に出演している堤さんもかなりイケてます。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-12-16 12:05)