お前の番だ！ 146
「後悔している、と云うわけではないのですね？」 「誰憚る事なく好きな稽古が出来るんだから、勿論後悔なんかしてないけど。でもまあ、あたしは跡取りにはならないわよ」 　あゆみはそう云った後きっぱりした..
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お前の番だ！ 145
「建前上は、ですか？」 「古武道の世界はえらく保守的で、驚く程古臭い慣習があって、女が流派のトップになるにはあれこれと難しい問題があると思うのよ」 「いくら古武道とは云っても民主主義の男女同権の世..
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お前の番だ！ 144
　この良平の言葉に対しては、是路総士は無表情の儘聞き流して一寸尺も頷かないのでありました。と云う事はつまり一般門下生をお客さん扱いにして、只管ご機嫌を損じないように気をつけなければならないと云う考えに..
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お前の番だ！ 143
　是路総士は机上の自分の杯に手を遣りながら、余裕の笑いとも苦笑ともつかない笑みを頬に浮かべるのでありました。 「ま、確かに新木奈さんは稽古中に組んだ相手とよくお喋りをしたり、こちらの気合が抜けるよう..
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お前の番だ！ 142
　相手の特定の部位に痛みを与えて体勢を崩したり、痛みから逃れようとする動きに乗じて相手を投げたりするのは体術の常套的な技術であります。こちらの優位を確保したり、相手を決定的に制圧したりするために痛みを..
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お前の番だ！ 141
　尤もそれは鳥枝範士の稽古と、あゆみが参加している一般門下生稽古の時には控えているようでありました。新木奈は自分の稽古態度が些か不謹慎であるとはちゃんと自覚しているようで、その不真面目さをあゆみには見..
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お前の番だ！ 140
「そう云えば今日の宴会で三方さんと新木奈さんの間で、どんな遣り取りがあったの？」 　あゆみが万太郎と良平の顔を交互に見ながら訊くのでありました。 「いやまあ、直接道場の稽古に関係のあるような事では..
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お前の番だ！ 139
「押忍。有難うございます」 　万太郎と良平は改まってお辞儀してから杯を干すのでありました。 「これから稽古の時には初心者の指導をしてもらわんといかんな」 　是路総士が杯を揺らして酒の量を検分しな..
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お前の番だ！ 138
　あゆみが是路総士を窘めるのでありました。 「ああ、これは済まん」 「掃除する者の身にもなってよ」 　是路総士は決まり悪そうな顔であゆみを上目に見つつ一つ頷いてから、頭拭きを止めてタオルを首にか..
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お前の番だ！ 137
「他の方達はもう一軒行くかとおっしゃって、別の居酒屋に向われました」 　万太郎が後を続けるのでありました。 「良君と万ちゃんは一緒に行かなかったの？」 「ええ。明日の朝の道場仕事もあるからと帰っ..
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お前の番だ！ 136
　熱燗の番をする良平の横で万太郎が自分達の使った皿を洗っていると、廊下をこちらに向かって来る気配が伝わってくるのでありました。それは威治教士のものでありました。 　万太郎は急ぎ手を拭き、引き戸の脇に..
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お前の番だ！ 135
「早かったところを見ると、雲仙に回る必要はなかったか？」 　是路総士が万太郎に訊くのでありました。 「押忍。鳥枝先生の名前を出したら仕出し屋ですぐに引き受けてくれました」 「ははあ、成程ね」 ..
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