記事 での「楽土」の検索結果 106件
石の下の楽土には 22
老人は花束を抱えているのでありました。それを見て彼女は急に、そう云えば自分も墓に花を供えなければと思い至るのでありました。今まで考えすらしなかったのではありましたが、そうすれば、屹度母親も父も兄も喜..
タグ: 老人 墓地 楽土 居酒屋 供養 無愛想
石の下の楽土には 21
悲しくないはずであった兄と父親の死が、悲しみの一部に変容するのでありました。これから孤独にこの世を生きることになった彼女には、最愛の母親は勿論のことながら、たとえ「グレてどう仕様もないワル」の兄でも..
タグ: 居酒屋 楽土 墓地 駅 家 就職 老人
石の下の楽土には 20
娘が中学生の時に、二つ年上のお兄さんが学校の屋上から転落すると云う事故で亡くなったのでありました。墓はその時に今の墓地に建てたのでありました。それから二年後に、彼女が高校生の時、今度は父親が胃癌で他..
タグ: 居酒屋 楽土 高校生 就職 墓地 学校 家
石の下の楽土には 19
「その娘は、何処に住んでいるんですかねえ。親父さんもお袋さんも、それに兄さんも亡くして一人っきりなんでしょう。家族が住んでいた家に、今も一人で住まっているんですかねえ?」
小浜さんが聞くのでありま..
タグ: 居酒屋 楽土 猪口 徳利 墓地 駅 喫茶店 酒
石の下の楽土には 18
小浜さんはこめかみを人差し指で掻くのでありました。
「全く、島原さんはどこまでもお優しくていらっしゃるんだから」
「優しいと云うのではなくて、今じゃあその方がなんか自然な感じがするものだからね」..
タグ: 居酒屋 楽土 墓地 就職 徳利 猪口 駅
石の下の楽土には 17
さてその墓参りでありますが、なるべく雨天の日は避けて、しかし霖雨であったなら傘をさしてでも、島原さんは週に二回必ず奥さんの墓の前に立つのでありました。依って供えられる花の色艶は決して褪せることはない..
タグ: 徳利 猪口 居酒屋 酒 墓地 楽土 日本酒
石の下の楽土には 16
ところで島原さんには奥さんに対して、払底できない悔悟があるようなのでありました。偏屈で人交わりが苦手で、察しが悪くて、てきぱきと状況にあった適切な行動もとれないこんな自分に嫁したばかりに、凡そ幸福と..
タグ: 居酒屋 楽土 家 機微 旅行 墓地 散歩
石の下の楽土には 15
島原さんはあまり人と話す必要のない植字工と云う仕事が、大いに気に入っていたとのことでありました。気がつけば朝と仕事終わりの挨拶以外、誰とも喋らない日もあったそうであります。会社の宴会やらも出ないで済..
タグ: 居酒屋 楽土 旅行 日本酒 酒 猪口 家
石の下の楽土には 14
島原さんはその日以降店がひどく混んでいる時以外は、カウンター席に座って二本以上の徳利を傾けてから、鰤大根を食して帰るようになるのでありました。多少こちらが忙しくしていても、遠慮して店の奥の二人がけの..
タグ: 居酒屋 楽土 徳利 戦後 海軍 終戦 就職
石の下の楽土には 13
「いやあ、済みませんねえ、後半はお相手もろくに出来ずに」
小浜さんが島原さんに頭を下げるのでありました。
「いやいや、本当に楽しかったです。お酒を飲みながら、人とこんなにお喋りをしたのは、何年ぶ..
タグ: 墓地 猪口 楽土 居酒屋 徳利 酒
石の下の楽土には 12
島原さんは猪口の酒を飲みほして、それを下に置くと横の徳利を取り上げて静かに傾けるのでありました。「そうしたら、そんなには要らないと両手をふるんです。白い菊の花を二本で良いんだって。そう云う時の表情は..
タグ: 居酒屋 楽土 酒 墓地 猪口 徳利
石の下の楽土には 11
島原さんの手酌で徳利を傾けるピッチが上がるのを見て、小浜さんは鰤大根の鍋をかけたコンロの火加減をほんの少し強くするのでありました。
「ほう、風変わりな娘さんですか?」
「ええ。歳の頃は、そうねえ..
タグ: 居酒屋 楽土 徳利 酒 散歩 墓地 猪口