記事 での「楽土」の検索結果 106件
石の下の楽土には 58
娘が島原さんから花を二輪受け取る手を止めて、島原さんを上目に見るのでありました、
「あたし、お花屋さん、辞めたの」
「え、辞めたの?」
「そう。なんか奥さんとか一緒のアルバイトの子とか、あたし..
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石の下の楽土には 57
小浜さんは憮然として拙生にそう返すのでありました。
しかし拙生にはどう見ても小浜さんが、云う程家庭生活に倦んでいる風には見えないし、寧ろ奥さんと二人の娘さんに囲まれて、休日には好きな魚釣りを楽し..
タグ: 無神経 無粋 墓地 酒 楽土 居酒屋 鞘当て
石の下の楽土には 56
「部屋替えの相談なら、当事者の女の子がすればいいのに」
小浜さんがそう云うのでありました。薬屋の主人がカウンターの椅子に尻半分だけ乗せて浅くしか座らないのは、燗が出来上がったらすぐに立って、それを..
タグ: 日本酒 楽土 居酒屋 愛妻家 無愛想 徳利 酒
石の下の楽土には 55
「放ったらかしにして、申しわけありませんね」
小浜さんが島原さんの前に移動してそう云うのでありました。
「いやいや、常連さんでしょうから、こちらにお構いなく」
島原さんは笑いながらそう返して..
タグ: 居酒屋 楽土 酒 日本酒 徳利 老人
石の下の楽土には 54
「ま、いいや。そんならオヤジ、今度誘うよ」
薬屋の主人は小浜さんを見上げながらそう云って、徳利を持つ小浜さんからまた酒を注いで貰うのでありました。
食事を終えた島原さんがその遣り取りを黙って見..
タグ: 居酒屋 楽土 徳利 酒 老人 猪口 無愛想
石の下の楽土には 53
「いやいや、俺はそんなに行ってないってば。肉屋の大将に誘われて、つきあいで、そりゃ何回かは行ったけどさ」
薬屋の主人がニヤけながらそんな云いわけをするのでありました。その脂下がった顔からすると、要..
タグ: 居酒屋 楽土 猪口 喫茶店 寄席 酒 無愛想
石の下の楽土には 52
島原さんが箸を動かし始めると、なんとなく会話が途切れるのでありました。小浜さんも拙生もその間、敢えて島原さんに話しかけることはせずに、夫々の目の前の仕事に手を動かしているのでありました。
三人の..
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石の下の楽土には 51
「あたしに任せてもダメだって思われているから、そんな風になったらちゃんとその娘とか奥さんが横から出てきて、お客さんの相手をするの。決まりきったお供え用の花束を幾つも作るくらいは、あたしにも出来るけど」..
タグ: 居酒屋 楽土 墓地 老人 徳利 猪口 酒
石の下の楽土には 50
しかし、信じると決めたら、それだけで本当に信じられるものかなと島原さんは思うのでありました。そんなに簡単に自分の心を制御出来たら、こんな楽な話はないでありましょう。決意と云うのは、単なる一時的な気分..
タグ: 老人 楽土 居酒屋 墓地 就職 クール
石の下の楽土には 49
その間、拙生はすぐ目の前の事柄以外には目を移さずに、そのことだけに専念しようとするのでありました。そうやって時間の小さな積み木を一つ々々重ねて行くことに現を抜かしている方が、結局楽でもあり、大きな破..
タグ: 居酒屋 楽土 墓地 老人 亀 たじろぐ 機微
石の下の楽土には 48
さようなら、と拙生は納骨壇に飾られた彼女の小さな写真に無言で云うのでありました。
写真の彼女は変わらぬ微笑を浮べているだけでありました。拙生は彼女との<縁>が如何にも遠く隔たったのだと云うことを実..
タグ: 居酒屋 楽土 墓地 酒 供養 無精
石の下の楽土には 47
拙生が結局大学も辞めず故郷にも戻らず、実際には何の転機の衝動にも手を出さないで、揺らぎながらも、云ってみれば穏当なその後の軌跡をこれまで歩いたのは、亡くなった彼女が、自分のせいで拙生があたふたしたり..
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