大きな栗の木の下で 88
　海から街を経由してこの公園まで上がって来た風が、木蔭の中に沈澱していた静寂を吹き払うのでありました。風が去った後、御船さんは急に口の辺りの空気が軽くなったような気がするのでありました。ここは何か言葉..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 海 街 無責任 心根 可憐 苛々 実家

大きな栗の木の下で 87
　御船さんは頭の上に降り積もった葉擦れの音を払うように軽く頭を掻くのでありました。 「で、結局、その事後処理の話は上手く纏まったのかい？」 「そうね、向こうのご両親に云い分があるとしても、本筋では..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 無責任 呑気 機微 団地 按配 手際 赤ちゃん

大きな栗の木の下で 86
　云いそびれたで済ませる話でもなかろうにと、御船さんは沙代子さんの笑い顔を見ながら思うのでありました。しかしひょっとしたら沙代子さんにはなにか、その辺の詳しい事情をどうしても語りたくない理由があるもの..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 街 海 陰鬱 実家 有耶無耶 無粋 勇気

大きな栗の木の下で 85
　御船さんは弁護士を立てた、沙代子さんのお父さんの考えを支持するように何度かゆっくり頷いて見せるのでありました。 「その矢岳と云う男と向こうの家の方は、どんな風な出方だったんだい？」 「矢岳君のお..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 街 海 家 赤ちゃん 勇気 たじろぐ

大きな栗の木の下で 84
　あたしさ、今更だけどさ、矢岳君の心情とかを察して、もっと優しくしてあげれば良かったかな、なんて思うこともあるの。そうすればそのあたしの優しさが、少しは矢岳君の心の中に沁みて、矢岳君の方もそんなに追い..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 機微 観念論 海 まわりくどい 苛々 心根

大きな栗の木の下で 83
　御船さんは少し白けたような云い方をするのでありました。 「観念論？」 　沙代子さんが御船さんの顔を見るのでありました。「それってつまり、どう云うこと？」 「人知の及ばない超存在みたいなものが世..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 海 機微 音楽 赤ちゃん 実家 観念論 見取り図

大きな栗の木の下で 82
　御船さんが空に目を移して云うのでありました。 「なにはともあれ、なんとなくそれで一件落着ってところかな」 「ううん、とても一件落着なんて云うんじゃないわ。単にあたしと矢岳君の決別が決定的な局面を..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 街 音楽 観念論 按配 機微 海

大きな栗の木の下で 81
　そんなことがあったって云うのに、あたしがずっとなにもしようとしないで、馬鹿で間抜けで鈍感でいたことにさ、父も母も、あたしがどうかしちゃったんだって思ったみたい。実際あたし、どうかしていたのかも知れな..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 病院 赤ちゃん クール 実家 海 街 鈍感

大きな栗の木の下で 80
　要するにあたし、矢岳君との仲を修復しようとなにもしなかったことになるのよね。あたし、もうすっかり諦めていたのかしら。そうでもなかったと思うんだけどね。でも、なにもあたしから積極的に動かなかったのは事..
タグ： 音楽 実家 家 鈍感 クール 赤ちゃん 木蔭 就職 栗の木

大きな栗の木の下で 79
　沙代子さんがそんなことを云うのは、矢張り額が汗ばむからでありましょうか。 「そうだよな。今年の暑さはいつもとは違って、やけに強情だな」 　御船さんが額に手を遣りながら頷くのでありました。 「強..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 了見 冗談 まわりくどい 海 街 無意味

大きな栗の木の下で 78
　毎日の電話で誤魔化そうって云う見え透いた了見は、それはそれとして、この先のことを考えれば、あたしは矢張り矢岳君とずっと一緒に暮らしていく方が良いって、そう思っていたのよ。ま、矢岳君の方も毎日電話をく..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 了見 赤ちゃん 海 機微 無責任 街

大きな栗の木の下で 77
「ああ、そうか、無理矢理繋げるとね」 　沙代子さんがそう云って御船さんから少し顔を遠ざけて口の端を上げて笑うのでありました。その仕草は御船さんの戯れ言がまたもや、まわりくどくてややこしくなることを嫌..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 まわりくどい 赤ちゃん 家 たじろぐ 音楽 戯れ言