大きな栗の木の下で 100
　御船さんは横に取りつけられた金色の短い鎖を持って、豚カツのキーホルダーを目の前に翳すのでありました。 「こんなんじゃあ御船君のお腹の方は、全然一杯にはならないけどさ」 「いやいや、嬉しいよ。有難..
タグ： 栗の木 木蔭 高校生 学校 サイン クール 勇気 鈍感 立つ瀬 街

大きな栗の木の下で 99
　そんな状況が暫く続いて行く内に、御船さんの中に沙代子さんの像が色濃い影をはっきり刻みこむのでありました。その像は時に眩しく輝き、時に可憐に佇み、時に冷たくそっぽを向き、時に妙に色っぽく横目で御船さん..
タグ： 栗の木 木蔭 高校生 学校 ネコ 心根 可憐 体裁 正月 街

大きな栗の木の下で 98
　ネコが一声鳴くのでありました。まるでそれが切っかけだったように道の向こうにバスが現れるのでありました。先に立ち上がったのは御船さんの方でありました。沙代子さんは一度バスの方を見てそれからネコに視線を..
タグ： 栗の木 木蔭 高校生 学校 ネコ 苛々 了見 解放感 鈍感 戯れ言

大きな栗の木の下で 97
「バス、なかなか来ないわね」 　沙代子さんがそう云いながら唐突に下を見てしゃがみこんだのは、沙代子さんの足下に何処から現れたのか白いネコが近寄って来たからでありました。 「あ、可愛い！」 　沙代..
タグ： 栗の木 木蔭 高校生 学校 ネコ 家 クリスマス クール 心根 無愛想

大きな栗の木の下で 96
　沙代子さんがニコニコした儘、自分の見解に自分で頷いて見せるのでありました。 「そりゃ、出てくれば俺だってケーキも食うさ」 「ケーキに限らなくても、御船君は出てきたものは何でも、ガツガツ食べちゃう..
タグ： 栗の木 木蔭 高校生 学校 腕時計 勇気 家 たじろぐ クリスマス 戯れ言

大きな栗の木の下で 95
「俺は一月二十日。一年で一番寒い日だよ」 「ふうん。するとあたしの方が半歳くらいお姉さんになるのね」 　沙代子さんが指を折りながら云うのでありました。「あたしは七月二十日。暑い時に生まれたの。それ..
タグ： 自慢話 家 冗談 儀式 正月 クリスマス 学校 高校生 木蔭 栗の木

大きな栗の木の下で 94
　御船さんはそう云いながら笑って見せるのでありました。「俺の手は時々、俺の思っていることと全く違う動作を不意にやらかすことがあるんだ。実に困った手なんだ」 　御船さんは膝を打った左の掌を目の前に差し..
タグ： 愛想 学校 栗の木 木蔭 高校生 可憐 たじろぐ 理想 物腰 無表情

大きな栗の木の下で 93
「そう云われればそうだけどさ、なんとなくね。･･･」 「まあ、バスの乗り降りの点では、直通の方が労力の節約にはなるか。教室で無為に時間を潰す精神的疲労と、バスの乗り降りの身体的労力との兼ねあいをどう..
タグ： 栗の木 木蔭 高校生 学校 手持無沙汰 無神経 無意味 無意識 サイン 可憐

大きな栗の木の下で 92
　そういって取り出した緑色の布に包まれた弁当箱は、確かにかなりのビッグサイズであると、今更ながら、御船さんはそれを見て呆れるのでありました。大食漢と云うのか、体格から鑑みれば徒食漢と云う方が的を射てい..
タグ： 栗の木 木蔭 高校生 学校 公園 徒食 手持無沙汰 無意味 腕時計 街

大きな栗の木の下で 91
「そうね、そんなんじゃないんだけど、なんとなくそういったものには縁遠い生活を送っているわ。未だ我が家の腕白少年君にも手がかかるし、仕事の方も結構忙しいし」 「それは勿体ない。未だ々々、沙代子はイケる..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 少年 大袈裟 冗談 高校生 学校 たじろぐ 愛想

大きな栗の木の下で 90
「ま、いずれにしろ、色々あったけど今は、沙代子は矢岳と云う男に対する気持ちも整理出来て、すっかり元気に立ち直っているって理解でいいのかな、さっきの言葉は？」 「そうね、ま、そう云うこと。それだけ云え..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 海 街 冗談 家 大袈裟 音楽 消息

大きな栗の木の下で 89
　沙代子さんが海から視線を自分の足元に戻すのでありました。 「まあ、矢岳君はあの時期、何につけてもツイていなかったのよね」 　ここでまた沙代子さんの話しは矢岳と云う男のことに戻るのかと考えながら、..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 海 街 まわりくどい 観念論 たじろぐ 冗談 呑気