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「和傘を作る(2)前編」 [作品制作のはなし]

さて、地元の広報で募集していた
「和傘を作る」講座に応募したところ、当選したので
先週から4回に分けて、1本の和傘を作ることになりました。
http://blog.so-net.ne.jp/yukiwochannel/2008-01-15-1

今日は2回目。

前回、つなぎをした傘の骨達ですが…
和傘振興会の方々の手により、傘骨が温められ、骨のまがりなどを整えられて
(この工程は「ためかけ」というそうです)
私達の手元に戻ってきました。今日はここに紙を貼ります。

さて、今日は作業台に棒が2本差し込んであり、
傘の柄の部分が作業がしやすい角度におさまるようになっておりました。

こんな具合に使います。

まず最初に、竹でできた「くさび」を手元ロクロのところに差し込み、
骨と柄が垂直になるように固定します。
そして作業台に置いて、作業がしやすい角度にし、
前回4本ずつにまとめた骨の間隔を均等になるように整えます。

親指で親骨のところをちょっと開いて、
あとは、骨を折らないように小骨と親骨の接する、中節部分を持って
慎重に動かします。

「間を配る」ことから、言葉がなまり、この工程を「まくわり」というそう。

これがきちんと等間隔になっていないと、後の作業工程に支障が出るので
しっかりやらなくては…(--;)

続いては、あの時代劇の浪人さんがよく貼っている
傘骨を大きく覆っている紙(平紙)を貼るための支えとなる、
「軒紙」と「中置紙」を貼っていきます。

和傘振興会の会長さんいわく
『見映えはしない地味な工程ですが、ここも重要な作業ですよ』とのこと。

ふむふむ…なるほど。となると、「軒紙」と「中置紙」は
歌舞伎で言うところの「後見」や「黒子」といったところでしょうか。

さて、最初にガラス板に糊を一直線に置いて、その上に「軒紙」を置いて
糊をつけます。
前回通した、1本どりの軒糸の中心になるように
「軒紙」の切り込みを手前にして、そっと置きます。
「軒紙」には親骨の間隔に合わせて切り込みが入っているので
それを確認しながら、糸をはさみ込むように、順番に張り合わせてきます。

それから、親骨と小骨をつなく中節のあたりは「中置紙」を貼ります。
これは、傘を開閉する際に、摩擦によって傘紙が弱くなるのを防ぐため。
これは骨に糊をつけて、適度に余裕を持たせながら貼っていきます。

この作業を通して本当、「手も大事な道具だなあ」というのを痛感しましたね。

1本の指で糊のついた骨に紙を貼り、紙に余裕をもたせるため
もう1本の指の腹で骨と骨との間をちょっと押さえながら…という具合。
左手も糊の付いた骨にうっかり貼ってしまわないよう
親指で紙の端を誘導しながら、慎重に作業をすすめます。

そして手元ロクロと小骨をつないでいる部分に「手元紙」を貼ります。
ここで登場するのが「金ヘラ」

お箸を持つような具合で紙を乗せた骨を両脇からしっかり押さえて
グイグイと「手元紙」を押したたんできます。

ふぅっ。ここで午前の作業は終了。お昼ごはんをいただくことに。
で、お昼を食べたユキヲですが…

「あら、すっかり時間が余ってしまった」

すると目の前で今日の指導担当の先生が
大きなすり鉢とすりこぎ棒を持って糊を混ぜ始めました。

すりこぎ棒が、まるで「桃太郎」に出てくる鬼が持っている金棒みたい(^^;)

今回使用している「糊」は、なんと「タピオカ」
昔はワラビ粉などを使っていたんだそうですが
ご存知の通り、貴重なものでなかなか手に入らないので
「タピオカ」を使うのだそう。
東南アジア生まれのタピオカが、まさか和傘を陰で支えているとは…
驚きですね。

この日は乾燥していたことと、できたての「糊」ということもあり
先生は後々の作業がしやすいように、なめらかな状態にしていたんですね。
とはいえ、ぱっと見ると、くず餅の固まる前みたいですね(^^)

さて、先生がひとりひとりの受講者に
「糊」を配り終えたところで午後からの作業開始です。

はい。とうとうやってきましたよ。「平紙」
時代劇の浪人さんがよく傘を作る作業で貼っているあれですね。

糊はボタボタと落ちないように、刷毛の先端を親骨に平行になるように
動かして使うというポイントも教えてもらいながら
紙の表裏に注意をして(ツルツルした方を表にします)慎重に作業を進めます。

まずは、中置紙から下の親骨に糊を塗り、
続いて、先に貼った「軒紙」にしっかりと糊を塗り、
(骨の付近が凹凸になって意外に塗り残しがちなので刷毛の先を使って丁寧に塗る)
最後に中置紙から上の親骨に糊を塗り、その糊を平らにするようなイメージで
刷毛でそっと、中置紙に糊を塗ります。

骨と骨の間の中置紙に糊が付いてしまうと傘が開かなくなので要注意です(-公-;)

さて、始点となる親骨に、右手で軽く2つ折りした状態で持った
「平紙」の片端をそっと置いて、指の腹でそっと上からなぞり、貼っていきます。
そして終点となる紙の右端下と軒紙の端をそろえたら
それぞれの骨に「平紙」が貼り付くように指の腹でそっと押さえながら、
骨に沿って、上下に動かします。
そして、「平紙」の下端と先に貼った「軒紙」の下端をそろえていきます。
「平紙」の色が骨に沿って濃くなったら、糊がきちんと紙に浸透している証拠。
それを確認して「ほっ」としながら、骨から飛び出している余分な「平紙」を
カミソリを使って切り取ります。

カミソリ…よく切れるので怖い×10
普段、使い慣れていない上に、傘も回転しやすく不安定なので怖さ倍増(苦笑)
だけど、この時、ちゃんとスタッフの方が手を添えて助けてくださるので
この絶妙なタイミングのフォローには頭が下がります。m(_ _)m

先生より「1回切ったら、ちゃんと、カミソリについた糊は拭き取ってね」と教えられる。
確かに…糊が付くと切れ味が途端に悪くなります。
午後からの「糊」は午前の「糊」より強力になっていますからね(^^;)
例えるなら…手に付くと、まるでパックのように、
しばらくすると手がカピカピになってくるんですよ(笑)
ですので、水を入れた洗面器に手を浸して、タオルで拭き取りながら
1枚、また1枚と作業を進めていきました。

さてこの「平紙」
骨の間隔5つ分(5間分)と骨の間隔6つ分(6間分)に
切った2種類の紙がありました。
和傘振興会の会長さんいわく、
『5間分全部貼ってから6間分貼ってもいいですし…
 交互に貼ってもいいですし…お好きなように…』とのこと。
とはいえ…まあ、交互に貼っていくのがよいかなと思い
最初は慣れるために5間分から貼り、その後、6間分という具合に
親骨の本数を数えながら、慎重に糊刷毛で糊を塗り、紙を貼っていきました。

作業の雰囲気はこんな具合です。

あぐらをかいてお行儀が悪いですが(-"-;)
デニムパンツで正座をすると足がしびれてしまうので
ここのところはご勘弁を…

最後の1枚を貼ったら、先生にお願いして余分な紙を切り取ってもらい
平紙貼りは完成です。

しかし、ユキヲ、どうも中心に近い親骨の方に平紙をやや埋め込みがちに
貼り付けてしまったがために、本来、普通に貼りあがると
中心はきれいな円ができるのですが…
ユキヲの円はまるで風車のようにガタガタ(滝汗)
おまけに、先週親骨に糸を通して固定した、頭ロクロの歯の部分が1カ所
欠けてしまい、親骨が2本、落ちかけている(爆)

あわわ…私の和傘、大丈夫なんでしょうか?

すると、先生がガタガタだった部分をきれいな円に切り抜いてくださり
さらにたこ糸を使って、落ちかけた親骨を引き上げ、
頭ロクロに固定してくださいました(T-T)ありがとうございます。

で、ほっとしたのもつかの間。
今日の一番、大切なところ「頭ロクロに巻紙を貼る」工程がやってきました。
先生いわく『みんな「イ〜ッ!!!」ってキレそうになるから』とのこと。

その理由がよく分かりました。

平紙と同じ色の「天井紙」を貼って、
穴の空いている頭ロクロの周囲をふさぐ訳ですが…
頭ロクロのつなぎ目から親骨のところにかけて、
先に出た金ヘラを使って、骨と骨の間に埋め込むというか
たたみ込むというか…つまりこういうこと。

天井紙…最初は長方形の紙ですからね。
それを、こうしてたたみ込んで円形にする訳ですから…
もう糊でベトベトして滑るし、頭ロクロの付近が
もたついて、なかなかきれいにまとまらない。

「こりゃ『イ〜ッ!!!』ってなりますわなぁ」

で、私はと言えば…「イ〜ッ!!!」にはなりませんでしたけど…

「・・・・・・。」

初めてなもんですから…円周に沿って、皺が寄ってしまいました(爆)
おかげで私の眉間にも皺寄ってしまいましたよ(苦笑)

そしたら先生、『まあ、初めてやからねぇ。ここまでできたら上等、上等』
と話ながら金ヘラに糊をすくってペタペタと軌道修正。

本当、今日の複雑な工程を乗り越えられたのも先生やスタッフさんのおかげ。
うむ。15年も続いている人気講座の理由が身にしみて分かりましたね。
今日もいろいろとありがとうございました。

はい。今日の作業、無事に終了でございます。

もうほぼ、和傘の形になってますね。

ほっとひと安心でございます。

明日は午後からのみで、「紙折り」という作業をする予定。
折り目をつけながら傘をたたんでいくんですね。
はい。がんばりましょう。

ちなみに…今日の写真を見て気がついた方いらっしゃいますか?
はい。なぜか作業しているユキヲが写っている。

実は…

作業をしている最中に、1人のスタッフの方から
『あの…これはルール違反なのかもしれませんけど…
 ひょっとしてユキヲさんですか?』
と、ピタリと私、当てられてしまったのです(爆)

よーく考えてみよう。

今日のクラスにいる10人近くの中で…
和傘の紙で、新橋の色を選んで…
さらに、パソコン使ってインターネットしそうな人って言ったら…

私しかいないですよねぇ…(苦笑)

「はい、私です」あっさり白状(笑)

という訳で、そのスタッフさんがブログのために
他の受講者さんをフォローしてくださりながら
私が作業している姿を数枚、撮影してくださいました。
本当にありがとうございます。
おかげで、良いレポートができました m(_ _)m
あと、そのスタッフさんに教えてもらったのが和傘作家さんのHPとブログ。

和傘作家の間島円さんのブログ
http://amakasa.exblog.jp/

間島円さんのHP
http://www.geocities.jp/karakasamm/

良いページを教えていただくことができました(^^)


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tanuki

すごい!!和傘の工程のガイドブックのような記事になりましたね♪
本当に繊細な作業が続きますね。
「まくわり」を一瞬「まくわうり」と読んでしまった私をお許しください(笑)
あと、タピオカのノリが美味しそう・・・(笑)←ゴメンナサイ(^^;
紙貼りの作業中のユキヲさん、職人さんみたいでカッコイイです!
新橋の色、本当にキレイですね。
ご自身の業の写真を撮ってもらってよかったですね。(^^)v
ブログがご縁で、作家さんのサイトも紹介してもらえて嬉しいですね。
やはり、ネットは便利なものですね。
by tanuki (2008-01-20 15:22) 

whitered

和傘作り、むずかしそうだけど、楽しそうですね。値打ちのあることは、そう簡単にはいきませんよね。写真がたくさん入って、よく分かるレポートでしたよ。ずいぶん前に、馬籠で唐傘買ったのだけど、年が経て、破れてしまったのだけど、油紙をタピオカのりで貼ったらいいのかなあなんて思ってしまいました。
 話は変わりますが、今日は名古屋へ行きました。三越の7階で、友だちの絵の先生が日本画の個展をやっておられるのを、観に行きました。ついでにノリタケの森へ行って、おいしいランチを食べて、徳川庭園で散歩してきました。名古屋の地上にはあまり、人影が見えず、どうしているのかなと思って、地下に入ると、いました、いました。地下の方が賑やかでした。
by whitered (2008-01-20 22:22) 

ユキヲ

>tanukiさんへ
nice&コメントありがとうございます。
作業の途中で意識してデジカメで撮影した甲斐がありました(^^)
この日は1日がかりだったこともありますが
やはり、和紙を貼る作業は神経を使いましたね。
タピオカの糊…
確かにこのとろみ具合が美味しそうには見えますね(^^;)
でもこの中には防腐剤の作用をする柿渋が入っています。
柿渋ももともと食べられる柿から抽出したものなので、
食べても毒ではないそうで…
実際、糊を混ぜていた先生のお話でも
『昔はもっと柿渋が入って茶色い糊だったけど…
 それをうちのおじいさん(だったと記憶)は
 柿渋の濃度を確かめるためかよく作業中になめていたけどねぇ…
 得意げに「食べられるで〜」と言ってたけど…
 あんまり食べようとは思わなかったなぁ』
と、楽しい話を交えながら説明してくださいました。
はっ。私も「まくわり」が何かの音の響きに似ているなとは
思っていたのですが…そうそう!「マクワウリ」です!(笑)
新橋の色。今はとても明るめなのですが、
これから、撥水作用のある油を塗るため、
もっと色に深みが出るそうです。
にしても…
まさか、いち個人のブログで書いていることが
スタッフさんの目にとまっていたとは(滝汗)
いやいや、作業もそうですが…
この日は、いっそう身がひきしまりました(^^;)
by ユキヲ (2008-01-21 11:58) 

ユキヲ

>whiteredさんへ
nice&コメントありがとうございます。
全てが自然の素材というところもあって
和傘はとても繊細ですし、作業工程が複雑ということが
作業を通してよく分かりました。
そして、それだけ手間をかけるだけあって、
それ相当の価値が出るのだとということも分かりましたね。
タピオカの糊…先のコメントにも書かせていただいたのですが
この糊。タピオカを水で溶いて、その中に防腐剤の作用がある
柿渋を加えて煮た後、すり鉢ですって作るのだそうです。
やはり、生もののせいもあって、先生いわく
『だいたい1週間ぐらいで使い切るようにしているかなぁ…
 とはいえ、糊もできたてはこういう具合に固いからねぇ』
だそうです。
あ、名古屋にいらっしゃってたんですね。
三越ですか…そしてノリタケの森や徳川庭園も。
いかがでしたか?寒い時期ですけど…
庭園の方はなかなか良い雰囲気だったのでは?
名古屋は地下が栄えていますからね。
特に今の時期は寒いので…地下街を歩かれる方が多いかも(^^;)
栄の方は特に…地下鉄1区間分、ずらりとお店が地下に並んでいます。
以前に栄でよくお買物していた頃は栄から地下街を歩いて
久屋大通のテレビ塔の方へ抜けて、
最後に東急ハンズを見て帰るという感じでした(^^)
by ユキヲ (2008-01-21 11:59) 

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