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悲しき軽運送屋の顛末記-15 [顛末記]

顛末記-13で空港内は男の世界と書いたが一年くらい経ったある日、初の女性が入ってきた。この頃から他社の軽運送でも「目立って増えてきたなぁ」と思っていたが、とうとうD社の空港専門にも第一号というわけだ。

なんて書くと、おっ、これから私と彼女の恋愛物語が始まってやっと面白くなる。と思ったら残念でした。あくまでも顛末記である。
年のころなら20代、正直言って私の好みではないがそこは若さの力! 良い歳をした周りの男共がソワソワ。とはいえ、男の中にも結構若い奴もいる。独身が三分の一くらいか、そいつらには頑張れといいたいが、妻帯者には関係のない話だ。ま、一輪の花なのだからムサイ男ばかりよりは明るい雰囲気になるので悪いことは無い。ちなみに地元関係では(空港以外)何人かの「おばさん」が活躍していた。最初は皆、和気藹々で彼女も愛想良く仕事も過不足無くこなしていたので、安心? して見ていた。そう、初めのうちは…
しかし、この女性に一番目を光らせていたのは手配係のベテラン社員であった。勿論、奥さんはいる。息子も結構大きいのだ。どこの世界もそうなのかもしれないが、権力を握っているものに言い寄られると女性がどうなるのかはテレビのドラマと同じ。権力といってもたいしたことは無いが実際仕事を回すのはその社員が権限を握っているのだから、誰も恨まれたりしたくないのだ。余計な口は開かない。


★Photoはイメージです

と思ったら、一ヶ月くらい経った時期からその女性、空港内から姿が消えた。いえ、辞めたわけではないらしい。男達の接触を避けるように…そのうち、噂が立ち始める。「ベテラン社員とできてる」と。それからの彼女は風のように我々の待機している貨物地域に来ては順番を待たずに彼から仕事を与えられ、風のように去ってゆく。その様子を見ていると辞めたのではなく、噂が本当だと言う確信に近づかない訳にはいかない。逆に言えばベテラン社員が彼女を独占したいがために空港の外で待機をさせたというのが正しい。彼は嫉妬深いようだ、不倫の相手にも。
空港ばかりではない。彼女が暇になると彼も姿を消す。自分のコネを駆使して地元の仕事もとってきて与えてやるらしい。ま、そればかりで姿を消す訳ではない時もある、二人が同時に暇になる時もあるのだから、何をしているのやら?? 仕事さえキチンと貰えれば良い、私的には。

[こんなことがあった、その8]
深夜、突然の電話があった。空港からだった。予定が無い午後6時の解散後の私にはめったに連絡は来ないはずだった。何しろ片道一時間半もかかるのだから。とりあえず向かうことにする。
空港の周りには殆どの大手運輸会社の営業所とか倉庫等が乱立している。到着すると、空港内に彼女と「彼」が待ていた。仕事は運輸会社の倉庫から出るという。それも2台分。その場所を私は知っていたがワザワザ彼女のために「彼」が案内と称して合計3台の車で向かうことになった。
深夜のためその場所は薄暗く倉庫の中の明かりだけがこぼれていた。私は2台とは少し離れて車を停めた。税関を通った荷物を点検するため、1時間くらい待つということだったので私達は世間話などの当たり障りの無いお喋りをしていたのだが、15分くらい経つと社員に次の仕事の携帯電話が入ってきた。
しぶしぶ手配に行く「彼」。私と彼女が取り残された。都合、2時間待たされたのだが、その間なるべく距離を置いて待機していた私に彼女から話しかけてきた。内容はくだらないことだ。いちいち書くことも無い軽いものだったが、一時間半くらい経った時にその社員が帰ってきたのだ。遠くからえらいスピードのエンジンの音が聞こえたので振り向いたら「彼」だった。そこまでは平和なひと時だったのだがその人の形相を見た途端思わず引いてしまった。ぎらぎらした目、恐いほどの迫力で息せき切って車から降りてきた。「何を楽しそうに話していたの?」って変な勘ぐりをしてきた。暗い場所で一時間ほど二人っきりになったからって、私には彼女に対して何の好奇心も無い。しかし、彼は完全に疑っている、自分が置き去りにしたクセに。
ワザワザ連絡して来させたのは私が安全だからだと思ったんでしょ、と言いたい。しかし、その本心は地元の男性会員を呼んだのでは、余計に疑われると思ったことと、万が一遠方の私と仲良くなっても「夜のデート」など出来ない、と踏んだらしい。愛に狂った男は恐い!!
何の根拠も無いことを妄想して計算するのだ。一時間の間に親交を深めたかと疑う根性が情けないと言うか、私としては「馬鹿みたい」の一言である。

その恐さは次の日から始まった。前回、書いた派閥や村八分の始まる前の話である。ベテラン社員は無視に近い態度で私に接した。それでも私の口から昨夜の変な態度を振れ回られるのを考えてか仕事は順番どおり出すのだが。
余りにも無視した結果、数週間後彼にとってアクシデントが起きてしまった。彼女のために取って置いた「美味しい仕事」を間違えて若い手配係が私に出してしまったのだ。東京までは普通良くても一万五千円くらいの料金なのだか、それは2万ほど貰えた。
これを知ったベテラン社員は激怒した。私にではなく、若い社員にだ。「勝手なことをした」「何で私に相談しない」…後は罵詈雑言。こちらで見ていても可愛そうなほど。
普段「早く一人前になれ!」「一人で手配してみろ」なんて言っている人とは思えない態度、周りの会員だけでなく他の業者も不審な顔をしてみている。どう見ても異常としか思えない。
そうして、その日のうちに怒られた若い手配係はやめて行った。私は引き止めて「仕事は返す」と言ったのだが、考えてみればこの日の事件だけではない理不尽な扱いが原因と告げた若い彼は空港から居なくなった。それは彼にとって良かったのかもしれない。
ベテラン社員はこの事件で心のモヤモヤを解消したのか、私に対しての無視はなくなった。しかし、心の根底にはあの夜のこと+今回の事件の二重の恨みを私に持つことになる。


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