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悲しき軽運送屋の顛末記-14 [顛末記]

話は少し戻るが、この仕事を始めて8ヶ月くらい経った時、私は成田の新東京国際空港で何とかそれまでの苦境から抜け出せるかと頑張っていた。勿論、例の広告の70万なんて収入は間違えてもは入ってはこない、生活するにも経費を引けばギリギリではあるが安定して収入を獲られることに派閥も生まれる前の事なので意欲に燃えた日々を送っていたのである。
顛末記の最初に書いたが私には本業というものがあった。しかし、この時点ではすっかりそのことは記憶の中から薄れ、「軽運送を本業にしてもよいかなぁ」と思い始めていたのだ。元来、バイクや車が好きでその当時、1Boxの軽運送用の自動車を含め3台の車とオートバイも3台を所有していた。また、スポットと言う職種にも性格上合っているのではないかと現在も思うのだ(まったく懲りない)。地図を見て行ったことの無い未知の土地のその場所を探し当てる行為は、まるで広大なパズルをしているような、道路上での移動はまるで交通戦争の中でカーレースのゲームをしているような楽しみを感じる。宅配は毎日が循環している作業のような気がするが、スポットは伝票に印鑑を貰って帰路につくとき任務完了のゲームオバーと言う達成感を得られるのだ。そしてそのゲームを楽しむために「お邪魔虫」といわれながらも多分D社では一番長い5年間という歳月、居座ったのだ。


★Photoはイメージです

[こんなことがあった、その7]
ここで「人生の転機」だと思う出来事があった。本筋とはチョット外れてしまうのだが…
殆ど休みの無い空港の仕事だが、と言うより毎日仕事が無くても待機していなければならない状況の日々だったが、久しぶりに休みを取った。何ヶ月ぶりだろう。と言っても寝ているわけではない。男がいないと出来ない家庭の力仕事とか、庭の掃除をしていた時だった。私が本業としている事務所の電話が鳴った。以前にも書いたがその商売は先細りで諦めにも近い気持ちだった。バブルも崩壊して何もかもが無くなっていく、特に零細企業には苦しい時代(今でもその傾向は続いているが)、周囲には副業だとしていた軽運送。とりあえず本業も平行してやっていることになっていた。ただ同時進行できるほど私は器用な人間ではない。兎に角、電話を取ってみた。

受話器の先の声は暫く仕事を貰っていなかった本業の得意先の社長だった。殆ど取引は切れていると思っていた。最初は挨拶と世間話だったが、急にまじめな雰囲気に変わって「もう一度わが社のために仕事を請けてくれないか」「バックアップはする、君のセンスが欲しい」などの誘いの内容だ。正直、迷った。頭の中は「どうしたらいいんだ」「僕の技術を認めてくれている」と心は揺れた。

バブル時代ではあったが今で言うSOHOを営んでいた。月の純利益は40~50万、仕事量が多い時は100万を超えた職種である。体力的にも軽運送よりは余程楽な仕事なのだ。まして、ここまで言うのだからある程度収入も安定するくらいは出してくれるのだろう。
しかし、ここでネックがあった。世の中の現状を見ればわかるように仕事のやり方がバブルがはじけ始めてから変わってきたのだ。アナログからデジタルへとだ。その業界も御多分に漏れずその方向に転換していっている。「はい戻ります」と簡単にいえないのだ、本格的に稼動するには設備投資が必要になる。その金額おおよそ300万! そんな金がどこにある? と、とっさにその電話口で考えた。
とりあえず返事は後日ということにしたが、やっと何とかなり始めた軽運送、ましてや350万も使って買ったばかりの軽自動車とロイヤリティを払い込んでしまっている。それを棒に振ってまで、さらに本業のための設備に必要な借金をしてまで戻る仕事だろうか。

今思えばその時点でD社の魂胆が判っていれば絶対に戻るべきであった。が、そこには先見の明が無い自分がそこにいた。人間は何度か岐路に立つ、大事な判断が必要なのだ。誰かが救い上げてくれる時期があるという。諸兄がこの状況に立ったらどちらに答えを出しただろう。細かい本業の事情を話して是非聞いてみたい、がここでは明かせない。

結局、その社長には「断り」の返事をしてしまった。これが数年後、その時よりもっと苦労する状況になろうとは夢にも思わなかった。そうして私は軽運送一筋にやっていこうと決めたのだ。

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