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「コンパクトシティ」と「行財政経営」 [北九州市のこと]

当日記においても、これまで「コンパクトシティ」について何度か取り上げてきました。

◆環境元年? コンパクトシティ元年? (2008年1月3日の日記)
http://blog.so-net.ne.jp/kitakyushu/2008-01-03

◆コンパクトシティの意味 (2007年12月17日の日記)
http://blog.so-net.ne.jp/kitakyushu/2007-12-17

先日紹介した海道先生の本では、コンパクトシティに直接的に期待される効果として下記の5つが挙げられています。

①自動車交通への依存を減らす。
②土地・空間資源を有効に活用できる。
③環境汚染と自然や農地の破壊を減らす。
④活気ある中心市街地を維持、形成できる。
⑤都市インフラとサービスの効率性を高めて、安価で効率的な行財政運営ができる。

こうやって見ると、「コンパクトシティ」と言うのは「一石二鳥」にとどまらず「一石五鳥」くらいに効果がありそうな話なのですが、なぜか日本においては富山市とか青森市等の先進事例を除いてはこれまであまりメジャーな概念ではありませんでした。欧米においては、「コンパクトシティ」とか「ニューアーバニズム」「アーバンビレッジ」とか言葉は様々ですが研究・実践が進んでいます。

なんで日本において普及しないかの原因を考えてみると、逆に効果が広範すぎて「一石五鳥」もあることなのではないかと…。穿った見方ですが、上記の5つの効果にそれぞれを所管する官庁を当てはめてみると、

①自動車交通への依存を減らす。 (国土交通省(旧運輸省))
②土地・空間資源を有効に活用できる。 (国土交通省(旧建設省))
③環境汚染と自然や農地の破壊を減らす。 (環境省、農水省)
④活気ある中心市街地を維持、形成できる。 (経済産業省)
⑤都市インフラとサービスの効率性を高めて、安価で効率的な行財政運営ができる。 (厚生労働省、総務省)

というように見事にバラバラですね。日本の縦割り行政体質だと、いったいどこが主導権を持って進めるのかでまず揉めそうなところです。

これを、北九州市の組織に当てはめてみると

◆北九州市の組織
http://www.city.kitakyushu.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=16362

①自動車交通への依存を減らす。 (交通局、建築都市局都市交通政策課)
②土地・空間資源を有効に活用できる。(建設局、建築都市局
③環境汚染と自然や農地の破壊を減らす。 (環境局)
④活気ある中心市街地を維持、形成できる。 (産業学術振興局、経済文化局)
⑤都市インフラとサービスの効率性を高めて、安価で効率的な行財政運営ができる。 (企画政策室、財政局)

という感じでしょうか。少なくともこれらの部局がお互いに壁を取り払って横断的に取り組まなければ北九州市における「コンパクトシティ」の推進・実現は難しそうですね。

現在、北九州市においても小倉都心と黒崎副都心の2地区について「中心市街地活性化基本計画」策定が進行しているわけですが、主管は建築都市局計画調整課産業学術振興局商業振興課となっています。これだと、どうしても「中心市街地活性化」が、小倉と黒崎だけのために行われるかのような誤解を招きがちです。今回の「改正まちづくり三法」の基本概念が「コンパクトシティ」であることを鑑みると、もう少し環境局財政局が積極的にコミットした方が良いのではないかと感じます。恐らく、それの方が市民全体や議会の理解も得やすいのではないでしょうか。

「環境」については既に何度か書いてきましたが、コンパクトシティの効果の一つである

⑤都市インフラとサービスの効率性を高めて、安価で効率的な行財政運営ができる。

というのも非常に重要ではないでしょうか。

北九州市の財政も他の地方自治体と同様、、三位一体改革等に伴う全国的な地方交付税等の削減と、これまでの積極的な公共投資による公債費(借入金の返済)の増加や少子高齢化に伴う福祉・医療経費の増加等により、市の財政は大幅な歳入不足・歳出超過に陥っており危機的な状況であります。

◆北九州市2010年に財政破綻!?  (司法書士カケハシの業務日誌)
http://blogs.yahoo.co.jp/kakehashi0333/51315768.html

◆平成20年度 北九州市経営方針
http://www.city.kitakyushu.jp/file/14060100/toshikeiei/h20keieihoushin/seian.pdf

どう見ても、普通に公共事業を減らしたり、人件費を削減したりしているだけでは(それはそれできちんと進めた方がよいでしょうが…)、どうにもこの財政事情の根本的な解決は難しそうです。もっと根本的に都市経営構造改革を行わないと財政再建は難しそうですね。

上記の「平成20年度 北九州市経営方針」では、4つの経営戦略の筆頭に「選択と集中」が挙げられています。中味としては(重点戦略分野への集中)とあるように、分野(ジャンル)別の選択となっています。この分野別の絞込みだけではなくて、「地域別」の絞込みも合わせて行う必要があるように思います。すなわち、周辺部から徐々に公共投資を抑えていきつつ、都市機能を中心部に寄せていくという「コンパクトシティ」化ということですね。

市の懐事情が苦しいのは分かりますが、中心市街地というのは一方では「固定資産税」「都市計画税」「事業所税」「法人市民税」「市民税」など市の税収の多くをを生み出している場所でもあります。収入を生み出すためにはそれなりの投資というものが必要です。あまりに中心市街地の公共投資を削減ばかりしていると、確かに支出は減るかもしれませんがそれ以上に税収も減少するというシュリンク、悪循環に陥らないとも限りませんからね。

 


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