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電磁気で地震予知 ~地震予知のやり方(2) [ 知識ゼロから学ぶ地底のふしぎ]

連載「電磁気で地震予知」の第2回目です。

現在は不可能といわれている「地震予知」ですが、成功させるにはどうすれば
よいのでしょうか?今回は「地震予知を成功に導く方法」を考えましょう。

地震予知といっても、全くできていないわけではありません。これまでの研究によって、
ある地域で将来発生する地震の震源の場所や規模は概ね分かってきてはいます(注)。
ただ、全くダメなのがいつ起きるかという「時期」です。「毎年夏、1つか2つは日本に
来るよ」っていう台風予報だと全く役にたたないのと同様、場所や規模が分かっていても
いつ来るかが肝心なわけであって、この1点で「地震予知は困難」とされているわけです。
例:地震予知は「時期」課題=火山監視、弱体化に懸念−現行計画の中間評価・文科省審
時事通信 :1/15)  ※元ネタはこちらこちら

そうなると「地震発生のちょっと前におきる変わった現象」に注目が集まります。例えば、
先日の記事(その1その2)にあるように、「ラドン濃度が地震の前に通常よりも高い値を
示す」といった異常な変化は典型例といえます。

このような地震前の特異な現象は魅力的です。科学的立場からは、地震の前にそのような
現象がどうやってでてくるかが大変興味深いのですが、先日のラドンによる地震予知の記事
に頂いたコメントのように
「実利的な側面からだと、必ずしもメカニズムが解明される必要はないのではないか?」
「メカニズムが不明だけど、その因果関係を利用している技術は沢山あるのでは?」
という意見もあります(ちゃめさん、サンキューです)。私個人も、家族を知人を、人類を
災害から救えるかもしれない方法探求には正直魅力を感じます。

しかし、地震の前の特異な現象を追うだけでは、地震の予知をすることは難しいのです。



地震前の特異な現象だけをあてにしてみます。うまくいけばよいですが、うまくいかなけ
れば悩みます。観測主体ですから、「もっと多くの場所で測ろう」「長い時間測ろう」
「もっと高感度に測ろう」となるでしょう(上の図)。

しかし残念ながら、巨大地震は10年に1度程度しか起きません。
悩み多き研究者は仕方なく、中規模な地震をターゲットにしていきますが、それでは観測
結果がはっきりとしない例も増えるので悩みも増える一方です。研究者はさらにあの手この手
を尽くし、お金と時間と労力を使い続けます。これを私は勝手に「観測スパイラル」と呼んでます。
1度でも地震予知っぽいデータ取得に成功して、その後うまくいかくなると陥りがちです。
「観測スパイラル」には「なぜうまく行かなかったのか」「どうすればうまく捕まえられるか」
といった戦略が見えません。多地点で測れば場所毎の個性がでるかもしれません。
長い時間測るといっても、何十年かけるのでしょうか?高感度にすれば、信号だけじゃなく
ノイズも増幅されます。観測をがんばれば現象に迫れる、というのはよほど運がよい場合
なのです。これまで野外観測を散々やってきた私はそう思います。

運に頼らず、より確実に地震前の特異な現象に迫るにはどうすればよいのか?そのために
は観測に入る前の「戦略」が重要です。地震前の現象の場合、ただ異常現象を追うのでは
なく、そのメカニズムを考えるのがよいのだと私は思います。

この図のように、まず、どのようなメカニズムでその現象はでるのかという「仮説」を立て
ます。こうすればどんな観測を組み合わせれば効果的かも分かります。観測がうまくいけば
それでよし、うまくいかない場合は最初に立てた仮説やメカニズムのどこが悪かったかを
検証します。こうすることで「地震の前に地下水が△△になるわけではない!」という
「発見」に繋がり、地震科学は進歩します。観測がうまくいってもいかなくても、どちらに
転んでも得するわけです。

地球は複雑です。だから実験や理論よりも観測に頼りたくなる気持ちはわかります。しか
し、地球は複雑で広大で、一人の研究者の手には余るものだからこそ、闇雲に観測をして
はならないのです。

つづく

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注:「地震の起きる場所や規模はだいたい分かっている」といいましたが、福岡県西方沖
の地震(M7.0:2005年3月20日)については、場所も規模も予測されてませんでした。陸
地や海底の下に埋もれている活断層で起こる地震については、まだ場所や規模が不明の
ものもあります。


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ジニヘン

はじめまして。地震前兆現象について勉強してます。
現在会社にて、電磁波による静電場を受信して高確率で地震予知を行う装置を開発中です。
仕組み的には大阪大学の池谷教授が作った(手がけた?)EQSIGNと似ていますが、+αでシステムをもう一つ組み込み、地震以外のもを極力フィルタリング出来るようにする予定です。
これからHPを立ち上げる予定なので、HP公開しましたらご意見等頂ければ幸いです。
自分は全く科学の知識はないので、こちらでちょくちょく勉強させていただいてます。
"電磁気で地震予知"の連載楽しみにしています。
by ジニヘン (2007-05-29 15:18) 

MANTA

- コメントありがとうございます。> ジニヘンさん
「高確率」というところが若干気にはなりますが、開発や検証実験は
大変かと思います。がんばってください!
ちょうど続きをUpするところです。またご覧いただき、ご意見いただけると
幸いです。
by MANTA (2007-05-31 03:33) 

eqsign事業部

EQSIGNは、静電場計測の、いわゆるアナログ版です。
静電場のデジタル計測版も大阪大学と共同開発 特許申請しました。
by eqsign事業部 (2007-06-26 17:59) 

MANTA

- EQSIGNのご本家さま?よりコメント、ありがとうございます。
どんな装置なのか、内部の仕組みが気になります!
by MANTA (2007-06-27 08:29) 

MANTA

- 追記です。EQsignの仕組みは分かりませんが、商品説明では、
「半径50kmのエリア内で起こる大地震の前兆をキャッチします」「震度6
以上の地震の前兆を地震の数時間以上前にキャッチします」と明記されて
います。しかし、上記条件内で必ず捕らえられる地震前兆信号自体が
現時点では見つかっていないこと、従っていかなる装置でも条件内の地震
を必ず予知できるわけではないことをここに明示しておきます。
また、本ブログはEQsignの購入を推奨するものではありません。
by MANTA (2008-02-10 13:12) 

NO NAME

大阪大学 故・池谷名誉教授が考案した「静電場センサ組立キット」。安価で多点観測が可能な、計測方法です。

by NO NAME (2009-06-01 11:01) 

MANTA

NO NAMEさん、ご紹介ありがとうございます。おもしろそうな装置ですね。
こういった簡易装置に関するお話を近々書くつもりです。
お楽しみに。
by MANTA (2009-06-02 08:25) 

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