いまさらラドンで地震予知?~1 [ 知識ゼロから学ぶ地底のふしぎ]
※連載【電磁気で地震予知】のプロローグ
当方の調査乗船中にはコメントでの励ましのメッセージやご質問、
あるいはトラックバックをいただきまして、ありがとうございます > 皆様
おいおいとお返事させていただきます。
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さて今日は、ちょっと気にかかるニュースがありましたので紹介させていただきます。
阪神大震災から12年たった、2007年1月17日にこんなニュースがありました。
●ラドン濃度で阪神大震災予知できた?放医研など研究
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/science/earthquake_prediction/
放射線医学総合研究所(以下、放医研)さんのプレス発表内容も公開されてますね。
●兵庫県南部地震前に大気中ラドンの濃度変動を観測
臨界現象数理モデルへ適用し地震予知に活用も
http://www.nirs.go.jp/news/press/2006/01_16.shtml
1995年の阪神大震災の際に、大気中のラドン濃度変動が明瞭に変化しています。すばらし
い観測結果だと思います。この変化は確かにこの地震によるものでしょう。また地震の10
年以上前から測定された努力がすばらしいです。地震予知が目的ではなかったかもしれま
せんが、野外観測を10年間欠かさないことは大変です。誰も見に来ることのないブログを
毎日書くことの何倍も何十倍も大変です。(あれ?大変じゃないかな?)
しかし、です。
はっきりいいますが、いまさらなぜにこんなことを発表するのでしょうか?
実に3つもある「いまさら」に、あきれています。
※ご注意:その後、放医研さんへメールで問い合わせた結果、下記記事の一部に
誤りがありました。追記として記しています。
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◆いまさら!その1:阪神大震災から12年も経ってから発表?
放医研さんの発表資料では、測定結果は1996年までです。データの処理に10年間もかかる
ものなのでしょうか?発表資料を見ると、移動平均して、異常値を抽出して、臨界現象数
理モデルに当てはめただけのようです。たぶんExcelで出来ます。
「臨界現象数理モデル」は一見難しそうですが、しばしば使われる地震発生時期の予測法
の一つです。回るコマ、ありますよね。回転が遅くなってだんだんフラフラして最後に倒
れる。あの軸のふらつきの様子を示した数式が「臨界現象数理モデル」です。この数式を
グラフに当てはめて、いつ地震が起きるか予測したりします。といっても地球は複雑なの
でこんな簡単な数式ではうまく予測できないことはしばしばです。放医研さんの研究では、
大気中へのラドン放出や地震の歪の蓄積をコンピュータで再現したわけではなく、単に
「変化の様子によくあう簡単な数式」を当てはめただけ。なぜ10年もかかるのでしょうか?
追記(2/20)
この記事を書いた当初は本プレス発表に伴う論文や学会発表がなかったと判断した
ため、上記のような酷評となっておりますが、実際には2006年に英語の論文として
発表されていました(詳しくはこちら→)。つまりこの研究は、たとえ地震から12年経って
いても新規性・独創性があると専門家によって客観的に認められています。
従いまして、上記の批判は誤りです。申し訳ございません。
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◆いまさら!その2:阪神大震災でのラドン濃度異常、10年前に発表されてるよ
私の記憶では、阪神大震災の発生数ヶ月前からラドンや塩化物イオンの濃度が変化してい
たはずです。調べてみると、いい資料がありました。
●地下水観測などで検知された兵庫県南部地震直前の地球化学的異常現象
(地震予知連絡会会報 第67巻, 2002年)
http://cais.gsi.go.jp/KAIHOU/kaihou67/11-04.pdf
この資料の第2図によくまとめられてます。ほら、ラドンも塩化物も変化してるし、どっ
ちも1995年にScience誌に掲載済み。あ、そうか、図2のラドンは「地下水」中のものか。
今回の放医研さんの発表は「大気中」のラドン濃度だもんね。だから新しいのかな?
…と思ったら!
第3図には大気中のラドン濃度の変化がある!
しかも今回のプレス発表とまったく同じデータだ!
しかもしかも、これも1997年にもう論文公表済みだ!
あれ、、、どういうこと??
ながくなったので、続きは次の記事へ…
追記(2/20)
上記のように、12年前のデータを元に地震発生時期予測を試みたことは、
新規性・独創性があると認められますので、この批判もあたりません。
なお放医研さんへのメールおよび頂いたお返事ついては、下記をご覧ください。
http://blog.so-net.ne.jp/goto33/2007-02-19
http://blog.so-net.ne.jp/goto33/2007-02-20
この終り方はちょっとなぁ…。
人の行為を『「いまさら」に、あきれています。』とこき下ろすなら、その正当な根拠(※)を示さないと、ただの「怒りブログ」になっちゃうよ。
その根拠が示されるのかと思いきや、「続く」では、読み手には不快感が残る。
「なんで Manta さんは呆れてるんだ?ちゃんと説明してよ!」という物足りなさを感じてしまうなぁ。
続きを早く公開してね。
※:
10年前の発表と今回の発表が全く同じであり、全く進化していない事を、説明する必要があると思う。
データの検証やら、背景の考察やら、新たな知見の導入やら、新しいデータの発掘やらといった裏事情が全く無く、10年前と寸分変らない発表である事を読者に納得させないと、「言いがかり」と捉えられる危険がある。
もちろん、「10年前と寸分変らない発表」だと Manta 氏は確信しているからこそ、「呆れる」のだろうが、それを読み手にきちんと説明しないと、読み手の方は納得してくれないし、「呆れる」に共感を感じないと思う。
それを納得させてもらえるのか?と思っていたところへ、「続く」というのは「オイオイ、頂けないぞ」という事。
マイナーねたで批判を展開する場合、読者の「共感」を呼ぶ背景を、読者側が持っていないことが、書き手にとって大きな問題になるだろうね。
例えばブッシュを批判する場合、ブッシュ批判に共感する背景を読者が持っていると仮定しても、あまり差し支えないだろう。
しかし、このようなケースの場合は、読者が「共感を呼ぶ背景」を持っていると仮定をすることは、かなり危険だと思う。
批判記事というのは、書き方に十分注意しないと、誤解される危険が伴うから、恐いよね。
by ちゃめ (2007-01-19 17:24)
なるほど。という感想はMANTAさんの本文ではなく、ちゃめさんのコメントに対するものです。
MANTAさんの記事の読後に、放医研のプレスリリースを読み、そこに述べられているSornette博士によるモデルについて検索して原著論文を流し読みして、さらに予知連資料をあたって、「正当な根拠」について概ね自分なりに想像出来たので、MANTAさんの問題意識に一定の理解に至っています。
#Sornette博士のモデルの適用範囲にも疑問を感じた。
が、ちゃめさんが書かれた、"読者が「共感を呼ぶ背景」を持っていると仮定をすることは、かなり危険"ということには思いが至りませんでした。確かに私自身は「共感を呼ぶ背景」を持つ立場と思いますが、普通の人はなかなか自分で独自に一次情報まであたっては調べないですね。
#人にモノを的確に伝えるのは難しい。
by 竜 (2007-01-20 00:21)
- まあまあ、そう慌てずに > ちゃめさん
ただ、書いてて長くなっちゃったんで、適当なところで2つの記事に
ブチっと分けたのは事実です。読みにくくてすみません。また温かい
ご批判、ありがとうございます。
by MANTA (2007-01-20 09:00)
- こうしてある記事を軸に、コメントがまたコメントを呼ぶところが、
ブログのおもしろいところです。 >竜さん
ただ私は、自分の記事に読者に共感してもらいたいわけではないのです。
研究所等の科学的発表でも、新聞の科学記事でも、いろいろな考え方が
あるので全部信じちゃいけませんよー、といいたいのです。
同時に発表者や報道記者へは、あなた達の書いたことはちゃんと
見ている人が(少なくとも一人は)いるのですよ、といいたい。
とはいえ、人に主張を伝えるには、1)自分の中できちっと主張をまとめる、2)それを的確に表現する、の2つが必要で、いつも苦労します。
この点はきっと一生勉強なのでしょうね。
by MANTA (2007-01-20 09:07)
はははっ。
記事を読んでいてびっくりした訳さ。
他の研究者をこき下ろすなんて、なにか凄まじい理由でもない限り Manta さんがする筈はないのに…、と思ってね。
「おいおい、どうしたんだ?なんで?どうしたの?」と思って読み進めても、それに対する答えはお預けだし、愛読者としてハラハラしていたんだよ。 =)
>はっきりいいますが、いまさらなぜにこんなことを発表するのでしょうか?
>実に3つもある「いまさら」に、あきれています。
上の文章をこう書いてくれたら安心できたかも?
>はっきりいいますが、いまさらなぜにこんなことを発表するのでしょうか?
◆私はこの発表になんら新しい研究成果や新知見があるようには思えません。
>実に3つもある「いまさら」に、あきれています。
◆そして、この発表の背景にある放医研のプレス発表の考え方に、科学者としての疑問を抱いています。
◆では、私が感じた3つの「いまさら」をご説明しましょう。
◆が追記部分。
何が問題なのかを、最初に謳ってもらうと、読者は焦点をぶらさずに安心して読むことができるんじゃないかな?
そして、3つの「いまさら」の説明途中で記事が切れても、期待感を持って待つことができると思う。
それに、誤解に繋がるような先入観を読み手に与える事無く、読んでもらえると思う。
という訳でした。
余計なお節介でした。
PS:
前のコメントの「共感を呼ぶ背景」は、「書いている事を誤解なく理解してもらうために、読者と書き手が共有している(筈の)前提条件」と、読み替えてもらったほうがいいね。
by ちゃめ (2007-01-20 13:52)
- あれですね、「続きはCMのあと!」みたいになってしまいましたね。
そういう前フリのあとって、たいていオチがつまらない。
記事の続け方も工夫したいと思います。
「共感」についても理解しました。専門的な話がおおいこのブログでは、
前提条件を語るのは難しいですね。難しいけど、意識したいと思います。
今後ともよろしくお願いします。
by MANTA (2007-01-21 07:53)
>「続きはCMのあと!」みたいになってしまいましたね
そうそう、その通りです。
上手い事言うね。
さすが。
>専門的な話がおおいこのブログでは、前提条件を語るのは難しいですね。
そうだよね。
でも、上手に「前提条件」を説明できれば、読者をぐいぐい引き込めるブログだし、内容だと思うよ。
そのためには、タイトルを少し考えたほうがいいかも…。
「海」も「地震」も、興味を持つ人は多いと思うし、科学好きな子供や将来研究者を志望する高校生辺りも引き込めれば、とても有意義なブログになるよね。
頑張ってくださいませ。
by ちゃめ (2007-01-21 23:10)
問い合わせ先として、放射線医学総合研究所広報室の連絡先が明記されていますから、上記の疑問をご質問されては?
もちろん、こちらのblogで公表されることを前提で。(^^)
何らかの意図が汲み取れるかもしれませんよ。
by ふにふにぷー (2007-01-26 16:00)
- うーむ、正論です > ふにふにぷーさん
では、こんなかんじで週明けに問い合わせてみましょう。
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・このブログを紹介。貴研究所のプレス発表資料のみに基づいた
感想を書いていますが、当方の勘違いがあるかもしれません。
・以下の点を差し障りない範囲で教えていただき、当方の感想に
あやまりがあれば訂正させていただきたい。
1) 阪神大震災から10年たってなぜいま発表なのでしょうか?
論文や学会などで最近発表されたからでしょうか?
2) 大気中のラドン測定と、地下水のラドン測定はどう違うのでしょうか?
大気のほうがメリットがあるのでしょうか?
3) 貴研究所では、今後新たな研究項目として開始されるのでしょうか?
・お返事いただいたメールは、当方のメールと共にブログに掲載
(ブログ掲載可能箇所が分かるようにご返答ください)
(メールアドレスなど個人情報に関する部分は削除いたします)
・1ヶ月経過してもお返事いただけない場合は、当方のメールのみ
ブログに掲載
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ほかに質問のリクエストがありましたら、このコメント欄へどうぞ > 皆様
by MANTA (2007-01-28 09:19)
>阪神大震災から10年たって
阪神大震災からは12年経過ではないかしら?
by ふにふにぷー (2007-02-03 18:17)
- あー!そうでした > ふにふにぷーさん
10年以上と書くつもりが10年と書いて問い合わせてしまいました。
by MANTA (2007-02-03 18:54)