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日本沈没 [2007年 レビュー]

日本沈没」(2006年・日本) 監督:樋口真嗣 脚本:加藤正人 原作:小松左京

 僕は73年版を観た記憶が無い。公開当時10歳だった僕は、それでも藤岡弘といしだあゆみがとても焦った顔をした看板だけは鮮明に覚えている。なぜなら父が経営していた小さな会社の隣に「タイガー劇場」という大きな映画館があって、「日本沈没」はそこで上映されていたからだ。
 当時の熱狂振りはなんとなく記憶している。その頃はまだ情報量の少ない時代だった。日本人の視野も行動範囲も狭かった。だから「日本は本当に沈没するのか?」が社会的な議論になった。
 僕が今日まで73年版も観ず(原作も読まず)に来た理由は、その当時ある学者が「日本は絶対に沈没しない」と証言したからだ。
 「太平洋プレートは、(日本がある)北アメリカプレートの下に沈み込むようになっている。太平洋プレートも北アメリカプレートに引きずられる形で一旦は下降するが、限界点を超えるとプレートは浮上する。この動きが地震を引き起こす原因でもある」
 こう聞いて子供だった僕は安心をした。
 「沈没しないなら観なくていい」
 だから僕は今日まで「日本沈没」に興味が無かったのだ。

 それから33年後。TBSがこれをリメイクすると聞いたときは驚いた。
 当時と今とではあまりにも環境が違う。
 今は10歳の子供でもインターネットを使えば、日本が沈没するのかどうか調べられる時代なのだ。
 「TBSはなぜ今これをリメイクするのか?」
 オリジナルを観なかった僕もこの一点には興味があった。
 そして、しばらく考えたのち僕が行き着いたのは「祖国を失うことによって明らかになる、“日本人のアイデンティティ”とは何か?」というテーマである。
 これなら充分リメイクの意義がある。日本沈没はウソだとしても、ウソの物語で真実を描けば良いのだ。
 ところが…。
 
 フタを開けてみたら全体は「デイ・アフター・トゥモロー」の焼き直しで、エンディングは「ハルマゲドン」か「インデペンデンス・デイ」のパクリ。驚いたことに途中、韓国恋愛映画風のテイストまで盛り込んであって、しかもジャニタレが主役だから予定調和のゴールへ向かってまっしぐら。
 これはアイデンティティはおろか、オリジナリティそのものが欠如したC級映画でしかなかった。
 大いなる金の無駄使い映画。観る価値なし。
 まだ「日本以外全部沈没」のほうがおもしろいんじゃないか?(笑)。

日本沈没 スタンダード・エディション

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日本以外全部沈没

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コメント 9

ミック

私は73年版も2006年版も日本以外全部沈没も見ました。
73年版は子どもの頃テレビで見て、怖かったのを覚えていますし、
子どもながらに「いい映画だった。」と、いう印象です。
27歳くらいの頃アメリカでも見ました。
夜中に英語の吹き替えでテレビでやっていました。
アメリカでは地震がほとんどないので、やはり怖かったです。
他チャンネルで「ローズマリーの赤ちゃん」をやっていたので、
途中でそっちににチャンネルを変えてしまいました。
その頃アメリカでは日本の映画やドラマを英語に吹き替えて
よくテレビでやっていました。日本の映画やドラマはとても
人気がありました。特にウルトラマンはとても人気がありました。
2006年版「日本沈没」は昨年、映画館で見ました。
友人が「ラストは今の科学じゃありえないね~。」と、言ってました。
私は親子が夏休みの暇な時に見に行く為に作った映画だと思いました。
いわゆる、昔でいうところのマンガまつりの様な。
「日本以外沈没」は大人が見るには面白いかもしれない。
でも、かなり、B級映画です。
ワスプへの区別映画でしたよ。
by ミック (2007-06-10 21:57) 

ken

73年版、観てみるかなあ。
ワスプってなんですか?
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-06-10 23:34) 

satoco

私もTVでやってたから見たんですが、アメリカの災害映画のパクリをつぎはぎしただけで、見るべきものが全くないと感じました。ほんとにみんなこれを真剣に作ってたんだろうかと疑問でした。
もともとその手のハリウッド災害映画がヒットしたので日本でもってことで作った映画だとは思ってましたが、小松左京の原作はそれらの映画よりも以前のものですから、きっとまた違う語り口があるのだろうと思っていたのです。しかしまるきり「デイ・アフター・トゥモロー」で、もし原作もこの通りなんだとしたら、小松左京の頃から災害フィクションのつくりって変わってないのか?とか考えてました。原作読んでみようと思いました。

73年版は見たことがないのですが、同じ小松左京原作の「首都消失」は見ました。これはSFエンタテインメントでした。

ちなみに、難民化した日本人のアイデンティティについては、「太陽の黙示録」というアニメでやってました。劇場作品ではありませんです。wowowの特番アニメだったかも....。
by satoco (
by satoco (2007-06-11 00:58) 

ミック

WASPは白人エリートの事で、私達はあまり良い意味では使いません。
うまく説明出来ないので、詳しくは↓こちらを見てみてください^^
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%82%B9%E3%83%97
by ミック (2007-06-11 01:22) 

ken

>satocoさん
 太陽の黙示録って、かわぐちかいじ氏の作品ですよね?
 僕は観てませんが、やっぱりかわぐち氏は凄いですねえ。
 wowow、再放送してくんねーかな?
 nice!ありがとうございます。

>ミックさん
 やっぱりそのワスプでしたか。勉強します。
by ken (2007-06-11 01:28) 

satoco

そうです。かわぐち氏のです。そうかアニメ見るより原作読むほうが手っ取り早いですね。 かなり美談すぎる気はしましたが、展開の速さもあって面白かったですよ。
by satoco (2007-06-12 01:00) 

ken

「沈黙の艦隊」以来、かわぐち作品は読んでいないのですが
(マンガ自体読まなくなった)、ちょっと興味あります。
by ken (2007-06-12 12:35) 

Bump

コメありがとやんす。トラバもらっていきます!
by Bump (2007-07-09 14:37) 

ken

「ハイ、沈没です」がウケました(笑)。
by ken (2007-07-09 14:44) 

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