SSブログ

Dear フランキー [2006年 ベスト20]

Dear フランキー」(2004年・イギリス) 監督:ショーナ・オーバック 脚本:アンドレア・ギブ

 この映画、「ドカーン!」とか「バキューン×2!」とか「ぎゃあああ!」とか「そんなご無体な~!」とかいう映画が好きな人には向いてません。でも静かな映画が好きだと言う人にはオススメします。僕は海と海に近い町が好きなのでスコットランドのロケーションも気に入りました。

 9歳になるフランキーは母と祖母の3人暮らし。父はフランキーが小さい頃から「ACCRA号」という船で世界中を旅している。父と息子を繋ぐものは唯一、手紙のやりとりだけだった。
 …しかしこれはすべて母・リジーの作り話。父親を装って手紙を書いていたのもリジーだった。本当の父親は暴力を振るう男で、そんな夫から逃れるために息子を連れて家出をしていたのだ。
 そんなある日、家族が住む港町にホンモノの「ACCRA号」が寄港するという。フランキーは「お父さんに会える」と喜び、そんな様子に祖母は「そろそろ真実を話すべき」とリジーに忠告する。そしてリジーはある決意をする…。

 
静かな映画です。
 振り幅が大きくない(大きな事件が起きて一喜一憂することがない)ので、物語は淡々と進行するのですが、そこがこの作品の第一の魅力だと思います。
 例えば「シッピング・ニュース」や「かもめ食堂」も同じですが、この作品も町全体を揺るがすような大事件が起きるわけじゃありません。やがて登場人物の悩みを知るにつれ、観客は「自分でも力になってあげられるんじゃないか」と思うようになります。なぜならそれが、どこで誰の身に起きてもおかしくない等身大の悩みだから。こうして観客は映画の中の町の一員となり、作品を「体感」していくのです。早い話これが「ドラマに入り込む」ということなのですが、
僕はこの手の作品を「目で観る映画ではなく、身体で感じる映画」と勝手に呼んでいます。
 
 この映画に好感が持てるところは他に「悪人が出てこない」ところと、「キャスティング」と「衣裳」でしょうか。
 リジーを演じたエミリー・モーティマーは微妙な心の揺れ具合を繊細に演じていたと思います。とても素敵な女優でした。余談ですがこの人は「イン・アメリカ/小さな三つの願いごと」や「ハイジ」に出演した天才子役エマ・ボルジャーとそっくりで、僕はこの2人にぜひ親子役を演じて欲しいと思います(笑)。
 「オペラ座の怪人」のジェラルド・バトラーは、演じた“ストレンジャー”が特に難しい役どころでもなかったので、伸び伸びと演じていたように思います。
 フランキー役のジャック・マケルホーンもまずまず。子供が主役の作品は当然子役の力量に作品の出来不出来が関わってくるのですが、飄々とした風貌ながら父性をくすぐる味わいのある表情を見せてくれました。
 衣裳はリジーのスタイリングが良かったと思います。
 シーンごとの精神状態に合わせて選んだだろう数々のセーターにちゃんと生活感があって、中でもフェアアイル柄のセーターを着せたシーンがとても可愛らしくて僕は好きでした。
 脚本も良く出来ています。
 この作品は何の情報を持たずに見ても、ストレスを感じることなく最後まで観ていられると思います。これは事実関係の説明の仕方とそのタイミングが絶妙だったからでしょう。誰にでも分かるよう丁寧に構成された“脚本のお手本”です。

 唯一クライマックスの演出には不満が残りました。
 ストーリーは悪くない、でもバスの中のシーンはもっと泣けるシーンになったはずです。あそこはその前の郵便局のシーンからもう一度作り直してもいいんじゃないかと思いました(笑)。

 この作品は子供を持つすべての人にオススメします。

Dear フランキー

Dear フランキー

  • 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
  • 発売日: 2006/01/27
  • メディア: DVD

nice!(4)  コメント(10)  トラックバック(2) 
共通テーマ:映画

nice! 4

コメント 10

Naka

こんばんは。私もお気に入りの作品です。
母の息子への想いが丁寧に描き出されていましたね。
子を守っているつもりが、実は親の方が子に守られ支えられ
てるんだなぁって改めて思い、胸が一杯になりました。
フランキー少年の素直さ、健気さにも感動しました(^^。
by Naka (2006-06-22 00:29) 

po-net

本当に静かな映画ですね。感情が極端に高ぶるシーンはないけれど
じわじわっと何かこう温かくなる映画でした。綺麗な海が見渡せるあの丘、
近くにあったら毎日行きたくなりそうです。
by po-net (2006-06-22 00:33) 

ken

>Nakaさん 
 僕は子を持つ親ではありませんが、出来ることなら近い将来
 子供を持ちたいと強く思いました。
 子供を持ってその良さが分かる映画も沢山あるんでしょうね。
 nice!ありがとうございます。

>po-netさん
 港の見えるあの丘はステキなロケーションでしたよね。
 あんなところでピクニックがしたいです(笑)。
 nice!ありがとうございます。
by ken (2006-06-22 01:30) 

まみりん

こんにちは~。
これ、私もお気に入りです。
静かにじわじわと押し寄せる感じがとても良かったです。
オペラ座で一躍有名になってしまった彼は、この先大丈夫かな?とか思いましたが、大丈夫なようですね。持ち前の悪顔で演ずる不器用だけどいい人、、、これ堪らなく良かった~。
TBさせてもらっちゃいますね。
by まみりん (2006-06-24 17:04) 

ken

僕は完全にリジー惚れました。
フランキー共々もらってあげたいくらいです(笑)。
nice!ありがとうございます。
by ken (2006-06-26 00:15) 

>でも静かな映画が好きだと言う人にはオススメします。
分かりました。見ます。
by (2006-06-26 12:21) 

ken

ぜひ。
nice!ありがとうございます。
by ken (2006-06-26 15:33) 

Sho

こちらの記事とみなさんの感想を読んで見たくなり、DVDを借りてきました。
静かないい映画でした。
あの郵便局からバスのシーンなのですが、私はあれくらいの方が
それまでの、この映画全体のトーンと調和がとれていいように思いました。

>フランキー共々もらってあげたいくらいです(笑)。

kenさんのこの心意気がカッコいい!です(笑)
by Sho (2006-06-27 20:17) 

ken

郵便局からバスの車中にかけてのシーンは、もっと劇的にとか派手にとか
そういう意味ではないんです。セリフやカメラアングルや編集をなんとかしたい
なあと思っただけで。トーンを変えたら作品の雰囲気を壊しますからね。
by ken (2006-06-28 01:05) 

Sho

なるほど・・
失礼しました。私の記事の読み方が浅薄でした。
by Sho (2006-06-28 01:33) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 2

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。