記事 での「S市点描」の検索結果 18件
たいせつな風景・S市点描「二度目もすれ違い」(3)
未舗装の乾いた道の両側には空につきささるようにポプラの木が屹立している。空はどんよりと曇っていて今にも雨が落ちてきそうである。
馬が大きな荷馬車をひいている。まわりは何かの畑であって馬の体からは..
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たいせつな風景・S市点描「二度目もすれ違い」(2)
僕の耳には石川さゆりの歌声が響いていた。
「北に帰る人の群れはだれも無口で・・・」
そして僕は、海鳴だけを聞きながら船の人になったのだった。
「本当に久しぶりだねえ、珈琲でもどう?..
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たいせつな風景・S市点描「二度目もすれ違い」(1)
すれ違いざまにシャターをおされた。大きなシャッター音が響いた。どうやら歩きながら立ち止りもせずに彼は僕の写真を撮影したのだった。驚いている僕に彼は「やあ」と笑いかけた。一瞬とまどったが、その笑顔が僕..
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たいせつな風景・S市点描「十年後を待ちながら」(4)
Kohseiさんとのつきあいは僕がS市を離れる日まで続いた。ときどきは会い、文学の話をし、お互いの女性関係の話をしたりした。Kohseiさんは一人のときはジャズをきき、ソウルをきいてはバーボンをの..
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たいせつな風景・S市点描「十年後を待ちながら」(3)
僕と那美さんとのつながりは文学だったが、那美さんは演劇につよい関心をもっていた。どうやら芝居の演出や舞台美術の仕事なども受けていたようだった。S市にはいくつかの劇団があって、那美さんもその一つに属し..
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たいせつな風景・S市点描「十年後を待ちながら」(2)
SUSUKINOの交差点でタクシーを降りると、指定された雑居ビルにあるジャズバーに急いだ。ドアをあけると二人は同時にこちらをみてめいっぱい手を振った。口々になにか叫んでいるようだったが聞き取れなかっ..
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たいせつな風景・S市点描「十年後を待ちながら」(1)
初夏の心地よく乾燥した空気に包まれ学校から夜遅く帰った僕に電話がかかってきた。時計をみると11時をすぎていた。下宿なので大家さんの取次だ。ちょっと恐縮しながら受話器をとった。電話線の向うから酔った声..
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たいせつな風景・S市点描「はじまりは平手打ち」(5)
最近は風邪気味で調子が悪い、とシオンが咳こみながら電話してきた。かわいそうだが、簡単に変ってやることもできない。姉さんに頼んで看病をさせてもらうことにした。ふとんにくるまったシオンはなさけない表情を..
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たいせつな風景・S市点描「はじまりは平手打ち」(4)
S市に遅い夏がきた。さすがに強い日差しが照る。夜は冷房はいらないが日中はそれなりに暑い。気温があがるのに比例するようにシオンと一緒に過ごす時間が長くなっていた。大学は違うけれど、僕の行きつけの喫茶店..
タグ: 小説 中村惠一 たいせつな風景 S市点描 はじまりは平手打ち シオン
たいせつな風景・S市点描「はじまりは平手打ち」(3)
意外にもシオンがこわごわ揚げていたライラックの花の天婦羅はきわめて美味だった。「どんなもんだい。」とふざけて力瘤を作っていた。姉さんは、北の港町から短大に通学するためにS市に移り住み、今は大きなホテ..
タグ: 小説 中村惠一 たいせつな風景 S市点描 シオン はじまりは平手打ち ライラック
たいせつな風景・S市点描「はじまりは平手打ち」(2)
シオンと僕はそれからたびたび会うようになった。北側に住んでいるとS市の南側にはあまり来ることがないようで、僕が南に住んでいることを知ると、南に行ってみたいと笑った。S市には梅雨がない。だから6月は気..
タグ: たいせつな風景 S市点描 はじまりは平手打ち 小説 中村惠一 シオン ヤマネ ライラック
たいせつな風景・S市点描「はじまりは平手打ち」(1)
バシッ。いきなり平手でたたかれた。僕の右頬は湯をかけられたように熱くなり、ひりひりと痛んだ。そのとき風のように現れ、面前に立った少女の真っ赤な靴の色が目に今も焼きついている。SUSUKINOとよばれ..
タグ: たいせつな風景 S市点描 シオン はじまりは平手打ち 小説 ミルフィーユ