お前の番だ！ 564
　真入増太は翌日からほぼ毎日、稽古に通ってくるのでありました。住んでいるところが相模原のようでありますから、調布の総本部道場に通うにはなかなかの時間がかかるでありましょうが、それを苦にしない意気ごみが..
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お前の番だ！ 563
　姉弟子の提案、しかも今では、相愛の将来の伴侶たる者の提案でありますから、万太郎としても拒むわけにはいかないのでありました。まあ万太郎も、洞甲斐氏の甥っ子で、昨日捩じこんだ相手側の者がこうして早速に入..
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お前の番だ！ 562
「ああ、その事です」 　真入増太は居住まいを正して万太郎を縋るような目で見るのでありました。「折野先生、どうか俺を助けると思って、うん、と云ってください」 　助ける義理は特に何もないと万太郎は思う..
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お前の番だ！ 561
　万太郎は真入増太を玄関前の受付兼内弟子控え室に通すのでありました。あゆみと来間も一緒に入るのでありましたが、来間には茶を持ってくるよう命じるのでありました。 「一生のお願いですから、どうぞ弟子にし..
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お前の番だ！ 560
　来間が云うように確かに無愛想面で玄関に仁王立ちししている男が誰であるのか、万太郎はすぐにピンとくるのでありました。それは昨日八王子の洞甲斐氏の道場に居た、洞甲斐氏の甥でずんぐりむっくりとノッポ兄弟の..
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お前の番だ！ 559
「しかし適任と云う点に於いて、あゆみさんの方が僕よりは諸条件が数段優っているだろうと思いますよ。それに女性が宗家になった実例も、稀ではあるものの実際あるのですから。あゆみさんが宗家を継いだ暁には、僕が..
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お前の番だ！ 558
　あゆみは続けるのでありました。「お父さんもその頃そう感じていたらしくて、折野は稽古にのめりこむタイプだし、そうやって精進している内に、常勝流の妙味のようなものを、まあ、端緒に過ぎないだろうが何か掴ん..
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お前の番だ！ 557
「困ったわね」 　あゆみは口をへの字にするのでありました。こう云うあゆみの顔もなかなか棄て難く可憐であると、万太郎は会話の内容とは全く無関係な感想など抱くのでありました。 「鋭意努力はしてみますが..
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お前の番だ！ 556
「新宿で何をしますか？」 「映画でも見る？」 「そう云えば来間が新宿に映画を観に出かけていますから、確率は低いものの、ひょっとしたら向こうで出くわすかも知れませんよ」 　まあ、出くわしても別に構..
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お前の番だ！ 555
「ああそうだ」 　あゆみが急に何か思いついたように云うのでありました。「あたしと万ちゃんは、今日どうしても行かなければならない処があって、だから朝の残りの御御御付けと卵焼きでお父さんのお昼を出したら..
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お前の番だ！ 554
「ああそうですか」 　と云う事は、万太郎はこの儘あゆみと密着して座って、左手を弄ばれ続けなければならないと云う事であります。万太郎としては慎に気づまりな緊張状況と云うものではありましたが、まあしかし..
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お前の番だ！ 553
「これからあたしが万ちゃんを屹度説得するから、お父さんもそう云う方向で考えてみてくれると、あたしとしてはこれ以上の願いはないんだけど」 　あゆみは、万太郎が宗家を継ぐと云うアイデアについて考えを廻ら..
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