お前の番だ！ 336
「その間、神保町の興堂派道場は稽古が休止されるのでしょうか？」 　万太郎が訊くのでありました。 「いや、勿論門下生には告知はするだろうが、ご遺体が戻るまでは通常の稽古を続けるようだ。若し自分に何か..
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お前の番だ！ 335
「道分先生は、実は独立にはあんまり意欲的ではなかったのですか？」 「まあ、元々形には嵌らない、どちらかと云うと天衣無縫な方だったし、それなりの野心もおありだったようだから、総本部の軛から抜けて自分の..
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お前の番だ！ 334
「葬儀の段取りとかは、親族とか向こうの道場の意向が第一でしょうから、こちらとしては当面それを待つしかないでしょうね」 　こう来間が云うところを見ると、ここ数日の動き、を訊いたのでありましょう。 「..
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お前の番だ！ 333
「そうね、そう聞いているわね」 「池袋から神保町の道場まで、車でどのくらいの時間がかかるのでしょうかね？」 「さあ、どのくらいかしらね」 　万太郎と同様、その点に関してはあゆみも不案内のようであ..
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お前の番だ！ 332
　是路総士は万太郎の方を向いて無表情に頷くのでありました。万太郎は急ぎ立って居間を後にして内弟子部屋へ来間を呼びに行くのでありました。 　来間は居間に到着すると座卓を囲んで座る是路総士とあゆみと万太..
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お前の番だ！ 331
　来間が、眩しそうに目を細めている万太郎に話しかけるのでありました。万太郎と同じに来間も、その突然の呼び出し音に何やら胸騒ぎがし始めたようであります。 　電話は六回ほど鳴って止むのでありました。恐ら..
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お前の番だ！ 330
「判らない？」 　あゆみが、喋るのを忘れて考えこむ万太郎に言葉を向けるのでありました。 「いやあ、内弟子控え室の電気は、未だ消えた儘ですねえ」 　万太郎は顔を起こして至極真面目な表情でそう応える..
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お前の番だ！ 329
　あゆみはそう云って意味あり気に笑うのでありました。 「いや、どうすると云われても、どうも仕様がありませんが。･･･」 　万太郎はそう受け応えてどぎまぎと顔を伏せるのでありました。 「居るかと訊..
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お前の番だ！ 328
　あゆみはコーヒーを一口飲むのでありました。「あたしが継がなくても、色んな方面の人達に大方納得して貰えるような、もっと良い決着があると思うの」 「古武道としての一子相伝と云う技術の伝承の問題、それか..
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お前の番だ！ 327
　万太郎とあゆみは仙川駅近くの、線路を跨ぐ橋を渡った先にある喫茶店に入るのでありました。もうほんの少し歩けば甲州街道に出る辺りでありました。 「何かほっとしたら、すっかり力が抜けちゃったみたいよ」 ..
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お前の番だ！ 326
　万太郎は明快にそう口走るのでありました。「武道の実力でも、頭の良さでも、人間的な強さに於いても、それに門下生達の信頼感も周りの色々な方々の評判と云う点でも、何をとっても、若先生には申しわけないですが..
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お前の番だ！ 325
「確かに道分先生の事ですから、これは前の私の言と矛盾するかも知れませんが、そう滅多な事はされない、と云う風にも思いますけれど。･･･」 　寄敷範士はそう云って口を引き結んで、眉間の皺を深くするのであ..
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