石の下の楽土には 49
　その間、拙生はすぐ目の前の事柄以外には目を移さずに、そのことだけに専念しようとするのでありました。そうやって時間の小さな積み木を一つ々々重ねて行くことに現を抜かしている方が、結局楽でもあり、大きな破..
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石の下の楽土には 46
　島原さんは娘が急に可哀想になるのでありました。単純に楽土の存在を信じて、家族がそこでこの世では実現しなかった団欒を楽しんでいて、自分も最後にはそこへ行くことが出来ると考えていたいし、しかし彼女の一面..
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石の下の楽土には 45
「楽土では、この世の理屈とか道理とかが、屹度消えてしまうんだよ」 　島原さんはなんとなく腕時計に目を落としながら云うのでありました。 「だから、好きになることはあっても、嫌いになることはないって云..
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石の下の楽土には 44
　島原さんまで猪口を持つ手を止めて黙るのは、矢張りこちらも気持ちが自己検証に向いているためなのでありましょうか。全く男と云うのは、幾つになっても胡散臭い生き物であります。 　･･････ 　島原さ..
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石の下の楽土には 42
「まあ、若い娘、とりわけ図々しくて無愛想な娘に、アタシの料理が判るわけはないんだけど、それでも島原さんの連れとなりゃあ、大いに歓待させて貰いますよ」 　小浜さんが云うのでありました。 「そんなに図..
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石の下の楽土には 41
「いつもお昼はどうしているの？」 　島原さんが聞くのでありました。 「アパートの近くに、菓子パンとかこんなサンドイッチとか売ってる小さな店があって、何時もそこで買ってるの。このサンドイッチもそこで..
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身障者の仲間入り
今日は朝から区役所に行って母の「身体障害者手帳」と「高齢重度障害者医療費受給者証」をもらってきました １０時半の予約だったんですけど早い目に行った方がいいかと９時に家を出て受付についたのが９時半..
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石の下の楽土には 40
「まあ尤も、幾らその娘が島原さんに好意を持ったとしても、それに島原さんが光り輝いて見えたとしても、島原さんを＜男＞として、好意を持ったり輝かしく見たりしているわけではないと云うのは、蛇足ながら一言して..
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石の下の楽土には 38
「本当？」 　娘が島原さんに聞くのでありました。 「そう。だから君も間違いなく、ずうっと先の話だけど、楽土には行ける。まあ、そう云う世界が墓石の下に本当に在れば、と云うことだけど」 「じゃああた..
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石の下の楽土には 37
「でもあたし、この後もずうっと、誰とも深くつきあうつもりはないもん。第一、お墓とお花屋さんにしかあたし行かないから、誰もあたしのことなんか気づきもしないだろうし。そうなると誰かのお葬式なんか出ることは..
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石の下の楽土には 36
「墓の下にそんな良い処が在るなら、なにも別に何時までもこの世に居ないで、皆早くそこへ行ってもいいんじゃないのって、その時、あたしは叔父さんに云ったの」 　娘が続けるのでありました。「そうしたら叔父さ..
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石の下の楽土には 35
「なんと云ってもその叔父さんにとっては、君のお母さんは姪にあたるわけだから、弱っているお母さんを元気づけるために、屹度来てくれたんだろうね」 　島原さんが云うのでありました。 「だったら、お葬式の..
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