記事 での「小説」の検索結果 5,316件
作品062
湘南日光号という電車は、伊東発日光行きという変った電車である。名前から見ると、海の行楽地と山の避暑地を結ぶ電車だから、さだめし、完全冷房の贅沢な編成であろうと思う人もあるらしいが、実は一等車さ..
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作品061
横浜の大桟橋に近いふるいホテルへ、私はごくたまに仕事をもってでかける。食事毎に、すぐ目の前の桟橋の船の出入を眺められるのが新鮮な楽しみなのである。いつの間にかサトウ礼子さん、という二十七、八歳..
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作品060
ハワイに立ち寄る機会は今までに、何度かあった。それにもかかわらず、私はそこへ下りなかったのである。私には観光地と呼ばれるような場所を初めから避ける気分がある。しかしアメリカで二月を暮らすと、初..
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作品059
久しぶりに行ってみたら、駅は改築されて昔の俤をとどめなくなっていた。数年前、私が、或る大学の時間講師をしていた頃、週に一度は私はその駅のホームに立って、電車が来るまでの数分の間に、線路のすぐ前..
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作品058
マニラのホテル・フィリピナスに入った時、ボーイが「メッセージです」と小さなカードを渡した。誰も知人のある訳がない。まちがいでしょう、と言いかけて、私はカードを見た。「オザワ・キイチ氏の友人であ..
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作品057
あれはもう、今から、三、四年前のことになるだろうか。季節は晩春か初夏の頃であった。何しろ、私が歩いた奈良の斑鳩の里も、苺の真っさかりであった。いや、それよりも、私の会った夫婦も、あの赤い苺の実..
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作品056
去年の冬から春にかけて、アメリカのアイオワ市で暮していた時、私は従兄の島尾満のことをきかれた。彼がアイオワへ来ていたのは、昭和三十一年から、二年間だった筈だから、ずいぶん昔の話だけれど、それだ..
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作品055
湯殿に下りて行くには、勇気がいった。変な旅館である。内湯を整えようという気もないらしい。競争相手がなくて、そこだけ一軒、古いまま営業しているのだから、それも致し方ないかも知れない。 ..
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作品054
或る朝、私が九時頃、ひとりで下の台所へ、お茶いっぱいだけの朝食を食べに下りて行くと、森川家の人々の姿は、誰も見えなかった。「お祖母さま」は離れに、「お母さま」は大変潔癖家だから、早くもお便所の..
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作品053
千九百五十七年に、東南アジアへ短い旅をした時、私はマレーから能村潔先生あてに絵はがきを出した覚えがあるから、すでに能村先生と知り合ってから十年に近い年月が経っていることになる。能村潔氏は、初対..
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