もうじやのたわむれ 193
「では、その鰤と石鯛の刺し身を両方ともください」 「へい、がってん承知しやした！」 　年嵩の板前も手を一つ打って、奥の大きな生簀へ行って鰤と石鯛を網で掬うと、先程の若い板前の横の俎板の上で、並んで..
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もうじやのたわむれ 184
　拙生も鵜方氏と同様に、自嘲的に笑うのでありました。 「貴方も邪馬台郡に生まれ変わられて、私もそこに一足先に、まあ、二日程先に生まれていて、となると、新しくこちらで霊になった後も、どこかでお逢いする..
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もうじやのたわむれ 182
　賀亜土万三氏が愛想笑いながら云うのでありました。 「ではどうそ、お乗りください」 　賀亜土万三氏は掌を上に向けた手で車の中を指し示すのでありました。 　若い一人の、いや一鬼の警護員が運転席に、..
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もうじやのたわむれ 174
　拙生と鵜方氏は最初に来た警官のパトカーに乗って、暴漢達は一人ずつ、いや一霊、若しくは一鬼ずつ夫々三台のパトカーに分乗させられて、邪馬台郡警察中央署と云う処へ連れて行かれるのでありました。中央署は、住..
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もうじやのたわむれ 166
「邪馬台郡の街の雰囲気がお気に入られましたかな？」 　拙生が訊くのでありました。 「そうですね。如何にも娑婆の日本的な風情が、それも一昔前、私が子供時分にそうだった風情が、ここには濃厚にあるような..
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もうじやのたわむれ 160
　入口の前に立つと自動ドアが開くのでありました。一応ドアは質量のない亡者も感知出来る仕様のようであります。それから、ドアが開いても一般の霊達の目には、ただドアが開いただけで、誰もそこから入ってこないと..
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もうじやのたわむれ 153
「でしたら、繁華街の夜の賑わいも見てみたいですね」 　拙生は呑気そうにそう云うのでありました。 「まあ、それも結構ではありますが、･･･」 　コンシェルジュは絵地図から目を離すと、拙生を遠慮がち..
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もうじやのたわむれ 152
「繁華街の賑わいとかその辺は是非見学してみたいですなあ」 　拙生はそう云って左の方へ動いて行く万年筆のペン先を追うのでありました。 「一般の省霊が大勢繰り出しているでしょうから、その顔つきとか服装..
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もうじやのたわむれ 149
「では街中の散歩に出かけましょうかな」 　男の横に立って拙生がソファーに座る気配を見せずに云うと、男は頷いてすぐに立ち上がるのでありました。立ち上がってみると男は意外に背が高いのでありました。拙生の..
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もうじやのたわむれ 148
「何を仰いますやら。実に心丈夫ですよ。ではどうでしょう、これから私はちょっと自分の部屋の方を見てきますから、今から二十分後にここで待ちあわせと云う事では？」 　拙生はフロントの上にある大きな壁時計を..
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もうじやのたわむれ 145
「判りました」 　拙生は未だパンフレットを見ながら頷くのでありました。 「それからこちらは、この閻魔庁近辺の見所なんかが描いてある観光案内の絵地図です」 　補佐官筆頭が今度は、これもＢ五判の大き..
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もうじやのたわむれ 142
　補佐官筆頭が、ふり返った閻魔大王官が何か言葉を発する前に、確たる頷きをして見せるのでありました。万事了解、と云う事でありましょう。閻魔大王官はその補佐官筆頭の頷きに満足気にゆったりと頷き返して、徐に..
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