たいせつな風景・S市点描「二度目もすれ違い」(3)
未舗装の乾いた道の両側には空につきささるようにポプラの木が屹立している。空はどんよりと曇っていて今にも雨が落ちてきそうである。
馬が大きな荷馬車をひいている。まわりは何かの畑であって馬の体からは..
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たいせつな風景・S市点描「二度目もすれ違い」(2)
僕の耳には石川さゆりの歌声が響いていた。
「北に帰る人の群れはだれも無口で・・・」
そして僕は、海鳴だけを聞きながら船の人になったのだった。
「本当に久しぶりだねえ、珈琲でもどう?..
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たいせつな風景・S市点描「二度目もすれ違い」(1)
すれ違いざまにシャターをおされた。大きなシャッター音が響いた。どうやら歩きながら立ち止りもせずに彼は僕の写真を撮影したのだった。驚いている僕に彼は「やあ」と笑いかけた。一瞬とまどったが、その笑顔が僕..
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たいせつな風景・S市点描「十年後を待ちながら」(4)
Kohseiさんとのつきあいは僕がS市を離れる日まで続いた。ときどきは会い、文学の話をし、お互いの女性関係の話をしたりした。Kohseiさんは一人のときはジャズをきき、ソウルをきいてはバーボンをの..
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たいせつな風景・S市点描「十年後を待ちながら」(3)
僕と那美さんとのつながりは文学だったが、那美さんは演劇につよい関心をもっていた。どうやら芝居の演出や舞台美術の仕事なども受けていたようだった。S市にはいくつかの劇団があって、那美さんもその一つに属し..
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たいせつな風景・S市点描「十年後を待ちながら」(2)
SUSUKINOの交差点でタクシーを降りると、指定された雑居ビルにあるジャズバーに急いだ。ドアをあけると二人は同時にこちらをみてめいっぱい手を振った。口々になにか叫んでいるようだったが聞き取れなかっ..
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