あなたのとりこ 687
那間裕子女史は持っていたバッグから缶ビールを二本取り出して、頑治さんのすぐ目の前に差し上げて見せるのでありました。二本と云う事は、一本は頑治さんの分でありましょうが、後の一本は自分のものに違いないで..
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あなたのとりこ 428
「じゃあ、そう云う事で決まり」
頑治さんは人差し指を顔の前に立てて断定調に云うのでありましたが、人差し指を立てる動きに関しては別に何か特段の意味がある訳ではないのでありました。
出かけるまでの..
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あなたのとりこ 306
ホームに一人取り残された頑治さんは、夕美さんを乗せた列車の後尾がみるみる遠ざかるのを虚しく見送っていたのでありましたが、遂に車両の一点の欠片も視界から消え失せて仕舞うと、もう春だと云うのに、急に辺り..
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あなたのとりこ 292
「別に置いておくのはちっとも構わないけど、要するにつまり、ネコと一緒にこの本も本棚の上から内命で俺の見張りを仰せつかっていると云う訳かな」
「そうね。ま、ネコの手下」
伊東静雄も野呂邦暢もネコの..
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あなたのとりこ 291
「ふうん。なかなかしおらしいところがあったんだ、高校生の夕美は」
頑治さんは冗談半分でそうからかうのでありました。まあつまり、半分が冗談で、もう半分は満更冗談と云う訳ではない頑治さんの心根でありま..
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しのぶべき六月
もうすぐ梅雨入りのようです。この季節になると伊東静雄の「水中花」という詩の一節を想いだします。彼は諫早の生まれで、大阪・旧制住吉中学で先生をしていました。教え子には小説家の庄野潤三や童謡「サッちゃん..
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