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京の怪人 [リレー記事]

しょちょうのブログからの続きです。

11年前、初めて出会った頃の思い出といえば、今までのリレー記事に出てきたようにアホなことばかりで、過去の恥部をしょちょうとお互いさらけ出しあうのもそれはそれで面白いのだけど、他にもいろいろな人との出会いもあって、それを思い出すたびに懐かしく、愉しい時代だったと少し感傷的にもなってしまったりもします。

今回は、そんな初期の時の重要な登場人物であったS君の話を。

11年前の知床・岩尾別。僕がしょちょうやブラザー達とすっかり意気投合したその晩、Sは我々の部屋にやって来た。寡黙でちょっとシャイな感じのする彼とは、あいさつ程度の会話を除いては特段言葉を交わすこともなかった。

それからその翌晩、雰囲気もこなれてきて、彼ともいろいろ話をするようになった。Sは京都の精肉店の長男で、僕と同い年、現在は家業を手伝っているらしいということも判明した。

Sがやって来た日のグループもずいぶん盛り上がったようで、そのメンバーの多くが我々と同様、このシーズンの最終営業日まで滞在を延ばすことになり、最後の晩はずいぶんにぎやかなものになった。聞けばSのグループも彼を含む数名が約一ヶ月半後の営業再開に駆けつけるという。こりゃ楽しくなりそうだ。

ところで、彼は時としてわれわれの想像のつかない行動をしたり、突然ニヤリと笑ったりするので、泊まり合わせた女性たちからは気味悪がられることもあったが、男性陣からは「面白い奴」として人気があった。そんなSが再び知床を訪れることを決意したのにはある理由があった。

同じ日のグループだった年上の女性にほのかな恋心を抱いたのである。彼女も営業再開のパーティーに来ると聞いた彼も一ヵ月半後、同じ知床の地にいた。家の精肉店から持ってきた高級牛肉を彼女と宿への手土産に。

牛肉効果もあったのかもしれない、すっかり人気者となった彼は憧れの人との再会も果たし、間違いなくその時、一番輝いていた。しかしその直後、Sは衝撃の事実を知ることになったのだった…

Sの憧れの人は、彼が自分に好意を寄せていることに気付いていたものの、実は彼女には婚約者がいたのだ。そのことを彼に伝えるのは非常に心苦しかったと、彼女はその時語っていた。さすがのSも「いいお友達」になってしまって、少し落ち込んでいたが、そういう点では非常にピュアな心の持ち主なのだ。その辺が特に女性にはなかなか理解されないのは友人として歯痒く、そして悔しくもあった。

しかし、ハプニングはあったものの、元気を取り戻した彼はまた以前と変わらぬ怪人物ぶりを発揮するようになり、知床を自分の庭のように生き生きと飛び回っていた。

そんな彼であるが、何故かしょちょうのことがいたくお気に入りだった…

つづく


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水無月

せつない恋のお話もあって…
とても興味をそそられます。
by 水無月 (2006-03-16 20:06) 

しょちょう

あの牛肉ホント旨かったよねー。
しかしSが好きな年上の女性って誰?その話、頭からすっぽり抜け落ちてるみたい。他人の恋愛話より肉のほうに興味があったってことだね。
by しょちょう (2006-03-16 21:31) 

キー

なかなかドラマのある旅行ですね!
早く続きが知りたいです。
by キー (2006-03-16 22:54) 

ちくりん

水無月さん
ああ、本当に懐かしく、よき思い出です。綴っているうちにその当時にタイムスリップしたかのような感覚にもなりました。

しょちょう
確か、Hさんという女性だったと思うよ。その時に会ったきりなので、どんな人かはほとんど覚えていないけど。僕もこのことは、ブログ書いている途中で思い出したくらいだから。
それにしても、あの牛肉はかなりの高級品だったね。みんなが美味しそうに食べている時、Sは本当に誇らしげで嬉しそうだったなあ。

キーさん
Sもまた、いろんな武勇伝を残してくれました。その辺はおそらく、しょちょうが綴ってくれると思います。
by ちくりん (2006-03-17 01:53) 

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