Vol.15 秋の夜長におススメのお金の本
Q.本が好きなので、いつもコラムの最後の「幸せを呼び込む1冊」のコーナーを楽しみにしています。でもちょっと固めの本が多いような…。もっと読みやすくて、ためになるお金に関する本を教えてください。(Yさん 38歳 主婦)
お金の本というと、つい投資や利殖のノウハウ本やビジネス本、経済学的な本をイメージしてしまいますが、実は小説という選択肢もあります。ストーリーがあるのでわかりやすく、登場人物を通して生きた経済というものを学ぶこともでき、まさに一石二鳥。
そこで今回は、読書の秋にふさわしい読み応えのある経済小説をご紹介しましょう。
私が初めて読んだ経済小説は、『白い巨塔』でおなじみ、山崎豊子の『華麗なる一族』です。ずいぶん昔に読んだのですがまだ内容を憶えているということはそれだけインパクトが強かったということですね。
当時、一般人にはほとんど知られていなかった銀行業界の内情をかいまみることができました。また、この中で語られている銀行再編が、その後次々と現実のものになっていったことにも驚かされました。現在の銀行の内情を知るために読むにはちょっと古いのですが、小説としてはおもしろく、ぐいぐいと引き込まれ、その長さ(上・中・下3巻)も苦になりません。この作品がおもしろいと思った人は、同じく大作の『不毛地帯』や『沈まぬ太陽』などもいかがでしょうか。
他にも有名な経済小説の書き手としては、城山三郎『官僚たちの夏』や高杉良『虚構の城』、堺屋太一『油断!』、黒木亮『トップ・レフト』(『』内は著書の一例)などが挙げられますが、最近私がよく読んでいるのは幸田真音です。
女性が経済小説の主人公になることはあまりなかったのですが、彼女の作品にはよく出てきます。その分、私たち女性読者にも物語が身近に感じられるようになったのはうれしい限りです。おススメは『日銀券』『日本国債〈上〉』、日本の金融市場のしくみがなんとなくわかったような気になれます。これでも読みにくい、という方には『投資アドバイザー 有利子』といった軽い読み物もあります。ただし、小説の完成度という面から見ると、残念ながら前掲の山崎豊子らには及ばずといったところですね。
「経済小説は用語が難しくてちょっとね…」という人には、石田衣良の『波のうえの魔術師』をおススメ。タイトルの「波」とは株式の罫線とも取れるし、市場の波ともイメージできます。主人公の青年が謎の老人とともに大手銀行に復讐を仕掛けるといったストーリーですが、株を始めようとする前に読めば、ある程度は株取引の雰囲気がつかめるかもしれません。
とはいえ、経済小説といえどもあくまでもフィクションであり、物語です。何冊か読んだだけですべて分かった気になって本格的にいろいろな投資を始める、なんてことのないようにお願いしますね。
・経済小説は、手軽に生きた経済を学べる手段のひとつ
・最初は用語が難しく感じる事もあるが敬遠せずに、まずは1冊読んでみよう
・作品はあくまでフィクション、実際の投資はきちんと勉強してから
作者: 斎藤 貴男
出版社/メーカー: 日経BP社
価格: ¥ 1,470 (税込み)
経済小説といっても、どんなものから読んでいけばいいかのわからない、といったときの参考に。金融業界からゲーム業界、企業犯罪から税制まで、様々なものを扱った作品が紹介されています。
共通テーマ:マネー
コメント 0