SSブログ

Nova訴訟の不可解 [時事/評論]

朝日新聞の記事。最高裁判所の裁判官くらいのレベルの人になると,ものごとをどのように論理的に判断するかという考え方が,常人にはもうよく分からなくなってくる。Nova訴訟の判決は,まとめてたくさんのポイント(1ポイントで1レッスンを受けられる)を購入するほど,1ポイント当たりの単価が安くなる料金システムにおいて,途中解約するときには,購入したときの単価ベースで精算しなければならないというもの。この裁判のケースでは,300ポイントをまとめて購入する際は単価が1750円,600ポイントの場合は1200円。この場合,もし600ポイント購入して,半分の300ポイント使用したところで解約するときは,300x1200円=36万円を返金しなければならない。300ポイントを購入すると52万5千円かかる訳だから,この判例に従うと,300ポイントしか必要ない場合でも,600ポイント購入して途中解約する方が圧倒的に安くなることになる。もちろん,解約手数料が別途発生する(これも法律で決まっている。5万円,あるいは解約する分の料金の20%,の安い方)ので,まるまる返ってくる訳ではないが,それでも圧倒的に得である。

この手のまとめ買い割引というのは,一般的な商品の販売形態としては極めて一般的である。5個買うと単価が安くなる商品を買って,4個はいらないから返品すれば80%が戻ってくる,なんて話はないだろう。まとめて購入する側は,無駄になるかも知れないリスクを負って,安い単価でまとめ買いをする決断をしているのである。今回の判例は,そうした一般的な商品のケースまで含めるものではない。あくまで「特定継続的役務提供契約」に限る話である。しかし,こうした判決が出たことで,今後,その解釈がいつ拡大しないとも限らない。

今回,Novaを訴えた人は,まとめ買いだから単価が安い,ということは間違いなく認識していたはずである。途中解約しても同じ単価で精算されるなら,Nova側にはまとめ売り割引をするメリットがまったくない(買った分くらいは頑張って通おう,という受講者側の意識くらいはあるかも知れないが)のは明らかだ。私のような一般庶民の感覚からすれば,言いがかりに近い訴訟である。勿論,訴訟を起こした動機まではわからない。返ってくればもうけもの,あるいは法律に詳しい人から,絶対に勝てるというアドバイスがあったのかもしれない。USで行政や企業に賠償金を求めるケースでは,そういうことが多いのではないだろうか。

最高裁判所の判断なのだから,充分合理的なのだろうし,ものごとが正しく判断されて,紛争が解決するのは望ましいことである。しかし,一見消費者保護に見えるこの判決も,結果的に何らかの形で消費者に跳ね返ってくる。Novaのようなまとめ買い割引はなくなるだろう(もうなくなってる?)が,まとめ買い分をしっかり利用して,お得に英会話を学んでいた人たちにとって,果たしてよいことだったのか。1件1件のケースだけでなく,トータルとして何が消費者に有利なのかを判断しないと,却って損をすることもあるかもしれない。訴訟大国であるUSでこれまでどういう問題が起きてきたのか。その点を解決せずに,USと同じ轍を踏む方向に進むのでは困る。

なお,実際の判決文を自分の目で見てみたい方はこちら(PDFファイル)をどうぞ。こうしたサービスをしているのは,今回調べていて初めて知った。こういう有益なオンライン・サービスの提供は,どんどん進めて欲しいものである。


nice!(0)  コメント(1)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 1

Aska

「特定継続的役務提供契約」というのは難しい概念ですね。
サービスというのは受けるまで品質が分からない上、英会話やエステは1回では効果の出ないサービスということで、消費者に有利な途中解約を認める法律ができたいきさつがあります。
モノの販売ならOKなんですけどね。NOVAではなく、無名な英会話学校が、割安になることをウリにして長期契約ばかりを取っていたら怪しいですよね?
ただ、1回づつの講義がしっかり効果をもたらすことが前提にあれば、割引販売もアリなのかなぁ、と思う一方で、そんなに効果がある内容なら安売りや、まとめ売りは矛盾しそうな気がします。
by Aska (2007-04-04 11:27) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。