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知的障害のある方へのAT/AACその2 [e-AT・AAC(試験対策)]

知的障害のある方へのAT/AACその2ということで.実際に認知や記憶を補助するための支援機器にはどのよなものがあるか紹介して行きたい.知的障害や認知障害の方が問題行動を起こしてしまう原因として「理解ができない」「見通しが立たない」などがあるが,その原因を補助する機器を紹介していく.

  • 聴覚認知を補助する機器
    • 集音器
      注意をすることに障害がある場合,聞こえてはいるが目的の声を聞き取ることが難しい場合があるが,集音器は特定の音をピックアップするのに有効.
      集音器に関しては下記サイトをご参照下さい.
    • シンボルや写真などを活用する(視覚メディアの活用)
      聴覚だけでなく,視覚のシンボルや写真など視覚を活用する.聴覚情報は時間的に流れる情報形態だが,視覚は時間的な制約が無く残る情報形態であるので,聞くだけでは理解できなくても,見ることで理解できる場合がある.また,自閉症の人は視覚で指示を受ける方が分かりやすい人が多いといわれている.なお,代表的なコミュニケーションシンボルとして,PCS(主に実物を単純化した絵を使用)やPIC(主にピクトグラムを活用したもの)などが市販されている.
      コミュニケーションシンボルに関しては下記サイトをご参照下さい.
  • 視覚認知を補助する方法
    • 静止画ではなく動画にする.
    • 文字にフリガナをつける.
    • 文字を読み上げる.
    • ワープロの漢字変換を使用者のレベルに合わせる.
    • キーボードの配列を分かりやすいもの(50音配列,ABC配列)にする.
  • 時間認知を補助する道具
    時間は理解できなくても量で表すことで補助することができる.
    (小学校時代放送部にいた筆者のおまけ:決まった時間内アナウンスを行なう必要があるとき,私の場合デジタル時計よりアナログ時計の方が,残り時間がどのくらいあるのか把握しやすかった.なぜかというと「残り時間が量(面積)で把握できるから」.実際のアナウンサーもアナログ時計の方が分かりやすい,という人が結構いるらしいです)
  • スケジュールの理解を補助する道具
    知的障害のある方や自閉症の方は見通しが立たないことで問題行動を起こすことがある.スケジュールを理解し,見通しを立つようにすることで,自分で理解し行動できるようになる場合がある.
    • スケジュールボード
      絵や写真を用いてスケジュールが分かるようにしたボードのこと.コミュニケーションシンボルやタイムエイドを併用する場合もある.音声言語で伝えられたことが理解できずスケジュールが理解できない場合や,スケジュールをノートなどに書くことができない人に有効である.
    • PDAやパソコンの活用
      スケジュールボードの内容をPDAやパソコンに入力しておくことで,映像や音声を組み合わせて分かりやすくすることが可能な場合がある.また,アラーム機能を使って通知してくれる機器もある.なお,携帯電話・PHSにもよく似た機能をもったものがある.
      スケジュールの管理に関しては下記サイトをご参照下さい.
  • 記憶を補助する道具(記憶エイド)
    • デジタルカメラ
      プリントアウトしたり,パソコンの画面上に写すことで活動内容を思い出すことができる.また,作業内容や手順を撮影しておくことで確認が可能になる.
    • ICレコーダ
      文字での記録が困難な場合,メモの代わりなどに大変有用である.
      メモや記憶を補助する機器に関しては下記サイトをご参照下さい.
    • 単語予測システム
      文章作成時に漢字や言葉を予測する機能がある.

次回は言語障害のある方へのAT/AACに入っていく.その続きのセッション,肢体不自由のある方へのAT/AACをまとめる予定である.


参考文献・サイト

  1. 福祉情報技術 II 生活を支援する技術編
    e-AT利用促進協会 監修
  2. 福祉情報技術 I 障害とテクノロジー編
    e-AT利用促進協会 監修
  3. 福祉情報技術コーディネーター認定試験
    e-AT利用促進協会 監修
  4. アダプティブテクノロジー ~コンピュータによる障害者支援技術~
    ジョゼフ・ラザーロ 著/安村通晃 監訳/島原信一・中村美代子・石田直子 訳
  5. こころWeb
    こころリソースブック編集会


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のび

なるほど、ICレコーダーのメモですか…

自分が預かっている男の子は、軽い認知障害(脳性麻痺による、程度は3級って言ってましたね)ですが、まあいろいろと病院につきあったりして、状態を客観的に把握しようと努めたこともあります。ただ、医者は社会適応に対してはエエ加減やし(苦笑)、本人も生まれつきのせいで自分の状況を他者と比較してどのレベルかというベンチマークを自身の中に持っていないため、障害の程度を実際の作業レベルで把握するのにかなり手間取った(1年くらいかかった)ことがありますね。
認知ではありませんが、手がどの程度使えるかってことも、はたから見てれば障害の影響はあるのに本人は自覚がない、ってこともありました。で、「他の人にはできるのに、どうして自分はできないのか」と悩む・・・という。更にコチラは本人がその"火を見るより明らかな状態に気付いていない"という事実に気付けず、余計なトラブルを巻き起こす(主に感情的な)という、、、まあ、無知とはお互い怖いものだなあ、と言う経験をしてますね。

そんな彼に最初についてた職場指導員の人は「メモとれって言ってるでしょ!」とキーキーなってましたが、、、ICレコーダーは自分も考えませんでしたね。なんだか、メモ(ローテク)取れない→ハイテクもっと使えない、、、って思ってたせいかな?

なんにしても、先達のない状態ってのはいろいろと難しいなあ、と思うしだい。
お国も雇うだけじゃなくって、それをフォローする体勢の整備も同時に要求すればいいのに、どうせなら。
by のび (2005-08-29 00:45) 

yas-shi

のび君,コメントありがとう.
そちらの職場にいる男の子がどの程度の障害であるのか分からないので,
憶測でこのコメントを書いているのですが,結構世の中には福祉用具(高い :)でなくても,
今回のICレコーダーのように日常生活の補助になるものは結構いろいろあります.

職場指導員の人ももしかしたらその男の子のレベルを把握できていないんではないか,
という疑念も感じますが,まぁそれは横においておいて,
簡単にメモをとれる環境を作るってのも手のひとつかもね.
blogの本文中にある「スケジュールボード」ってのはようはホワイトボードに
「この時間に何をする」ってかく単純なものなんだけど,そこにメモを書くとか.
一度ご本人と職場指導員の方と相談した方がよいかも知れんね.
by yas-shi (2005-08-29 17:02) 

yas-shi

あっ,書き忘れ書き忘れ.
本文中にはICレコーダーって書いたけど,
その男の子がケータイを使っているのであれば,
そのメモ機能を使うって方法もあるかな,って今気付いた.
ご参考まで.
by yas-shi (2005-08-29 17:03) 

yas-shi

ゴメン筆者ばっかりコメントして….

>なんにしても、先達のない状態ってのはいろいろと難しいなあ、と思うしだい。
>お国も雇うだけじゃなくって、それをフォローする体勢の整備も同時に要求す
>ればいいのに、どうせなら。

のび君の場合,その男の子のことの詳細を知らない状態で
いきなり「この人をのび君の部下として仕事させて」って,
上司から言われたの?そのときに上司は男の子のことを理解していたの?
上司は公の機関からの指示で雇っているんだよねぇ….

う~ん,自分だけで考えられることじゃ無いような気がしてきたなぁ.
「職場指導員」は公の人ということでよいのかな?

本当なら「職場指導員」のところに入るべき
きちっとした「コンサルタント」のようなものがいるの必要なのかもね.
「障害者就労コンサルタント」「障害者自立補助コンサルタント」みたいな…
で,そのコンサルタントがここに書いてるようなことを知っておけば,
良いのかも知れない.

はぁ~.
正直ここまで書いてもなぁ.実際に一度は廃案になった「障害者自立支援法」
今後形を変えて成立するのはほぼ確実なんでね.
就労支援・自立支援のコンサルタントの必要性を感じてしまうんだよなぁ….

長文にて失礼しました.
by yas-shi (2005-08-29 22:46) 

のび

正確に言え長くなりますが、ば…

ハローワークの求人を見て、本人が応募してきました。
上司が面接をします。
一見、そんなに障害がひどいように見えません。
また本人も自らの状態を、客観的に捉えておりません。
そして彼は、普通高校→コンピュータ専門学校を卒業しております。
会社はワード・エクセルを使用できる人材を求めていました。

準社員でもあることにより、割と気軽に採用…

という流れだったわけですが。
ややこしいのが、本人の自己の能力評価と実際の能力に大きな開きがあったということですね。またそのキャリアも額面どおりには受け取れないものでした。


どういうことかというと…彼の生い立ちに話はさかのぼります。

前述したとおりほぼ先天性の障害なので、彼には自らの障害の程度を他者と比較する物差しがありません。
また周囲に恵まれていたのか、困ったら常に誰かが手を差し伸べてくれる環境で育ってきています。ですのでそれが当たり前と思っていました(そう思っている自覚すらない。彼にはそれが世界の姿だったわけで)。

また彼の通ってきた学校はすべて普通科で、養護が専門の先生はほとんどいなかったそうです。彼が入学したことにより障害者学級が設立されたこともあるとか。話を聞いているとほとんど甘やかされた環境の小~高校生活を送っており、専門家に指導されたこともないため、必要な挫折も経験してこなかった模様。

で、高校卒業後にコンピュータ専門学校を受けるんですが、これもなんかオトナの事情でその学校が「障害者受け入れOK」をうたっていて、そのために志望してきた彼を受け入れざるを得なかった、という背景があったようです。
おかげで在学中はかなりおざなりな対応をされたようで、就職後に専門学校に少し話を聞いたところ、追い出したくてしかたなかったんっじゃないかな、という邪推ができそうな対応でした。

彼もその専門学校在学中に、ワードのタイプとエクセルの加減乗除くらいはさすがに覚えてますし、幼稚園の落書き程度にはイラストレータも使えます。
で、本人はそれで充分のつもりだから、面接時の「ワード、エクセル、イラストレータなどは使えますか?」という質問に「使えます!」と自信満々に答えます(苦笑)

で、採用…とあいなったわけですね。
by のび (2005-08-30 01:06) 

のび

で、彼はそのときの事務やPOP担当の人の下につくわけですが…
まあ、あまりうまく行かず、社会の壁にイキナリぶち当たって凹んでいたわけですよ。

周囲の対応もなんだかなあ、って感じだったので見るに見かねて引き取ったわけですが…そこからが大変。
本人、いままで困ると必ず人が助けてくれたものだから、手を差し伸べてくれた人に全力で甘えます(苦笑)

いやもうホント、それからかなり紆余曲折がありましたよ…
書くとメチャ長くなるのでひとまず割愛しますが、以下はご質問への回答です。

>上司から言われたの?

これは自ら申し出た、というのが正確ですね。


>そのときに上司は男の子のことを理解していたの?
これはないでしょう。正直、自分も引き受けるまでは、ホントのところは見抜けてませんでしたし。病院に行って施設に行って友達や親に会って…最近ようやく分かってきた感じです。


>上司は公の機関からの指示で雇っているんだよねぇ….

このへんもあいまいなんですけどね。
具体的な背景はさほど説明もなく、おそらくポーズとして全国のハローワークへ求人を出した側面もあるかと。人事としては、基本線はフォロー体勢の整っている本社系での採用をイメージしていたはずです。地方での採用は想定外だったと言ってました。


>「職場指導員」は公の人ということでよいのかな?
現状の職場指導員は自分です。
本来なら、障害者が就職するときは希望すれば、ヘルパーが最初はついてくれる制度もあるらしいですね。でもそんなことを聞いたのは入社からずいぶん経ってからでした。最近はハローワークの人と連絡を取ったり、市の施設のピュアカウンセリングに行ったりしてるので、最初からこういうの知ってればなあ、、、という感じです。


>就労支援・自立支援のコンサルタントの必要性を感じてしまうんだよなぁ….

いやあ、必要でしょう。
今以上に範囲を広げる前提なのであれば、受け入れ側にも知識も経験もないのだから。正直、自分の仕事だけでも毎日午前様が珍しくない中で、手探りで彼の面倒を見るのはかなりキツかったです。
また彼自身も「なにを信じていいかわからない」ってなってました(周りのオトナたちが、他の成人にするような説教をくれ、人によって言うことが違うので)。

彼は精神的には小学生レベルの経験しかしてません。
そこへ急に年相応の扱いをしても混乱するだけですが、こちらに知識と経験がないと、なかなか外見に左右されずに本人の実際をみるというのは難しいですね。プロの力、マジで欲しかったですよ。。。
by のび (2005-08-30 01:20) 

yas-shi

まったりと「AAC機器」の記事を書いているyas-shiです.

障害があるから養護学校に行くってのはかなり古い考え方で,
今はほとんど普通校に入学し,特別教室を設けることが多くなってきてます.
だから今後社会に出てくる障害のある方は,人と触れ合う経験も豊富な
「社会に参加している」状態の人が多くなると思うんケドね.
#だから養護学校に行くのは医療の発達のために生を受けることのできた
#最重度な障害のある人が多いんですね.

あっ,ごめんごめん,とりあえず目の前にある問題を何とかしないと….

とりあえず,のび君の話を読むとカナリ難しい状態になっちゃってますね.
年齢的にも今後精神的な部分で大人になれるか,
専門家でないので断言はできませんが,難しいのではないかと思います.

正直この案がとおるかどうか分からんけど,
現実問題として,どのようにしたら良いか困ってる訳だよね,
だったら一度最初に来ていた「指導員さん」あたりに
現状をお伝えした上で相談した方が良い気がしますね.
もしそれが不可能ならば,男の子の療育をご担当されていた先生に
相談したいところだけど…個人情報保護法のため難しいわな,これは….
ケースワーカーやソーシャルワーカーに相談するのも同じだし.
ましてや親御さんに相談するのも年齢を考えるとリスキーだし….

もし私だったら前の「指導員さん」に相談すると思います,
その上うえで次の手を考えた方がよいかと….
何か役に立っていないようですいません.
とりあえずこんなところで.
by yas-shi (2005-08-30 01:59) 

のび

いや、"職場指導員"なる外部の人は来たことないですよ。
単に社内の人間がその役についただけで。
今は自分が"職場指導員"ですもの。

直接役に立つ人がいない、、、というのがアタマのもっとも痛いところですよ。
担当医、カウンセラー、福祉士、両親、友人、社内の障害者雇用担当者…思いつく限り当たりましたけどね。いずれもなんともはや、でした。先任者がいないと無理でしょう。ま、良くはなってきてますよ。
by のび (2005-08-30 23:24) 

yas-shi

おつかれさまっす.のびさま.
yas-shiでございます.

>直接役に立つ人がいない、、、というのがアタマのもっとも痛いところですよ。
>担当医、カウンセラー、福祉士、両親、友人、社内の障害者雇用担当者…思>いつく限り当たりましたけどね。いずれもなんともはや、でした。先任者がいな>いと無理でしょう。ま、良くはなってきてますよ。

そっか,全部社内の人で対応してたんだ,そら大変だわ.
それなら,上司に伝えて某社の福祉事業をやってる部署に相談するかなぁ.
つかもしかして「社内の障害者雇用担当者」ってので相談済ってこと?

よくはなって来ているとのことなんで,大丈夫かとは思うけど…
by yas-shi (2005-08-30 23:33) 

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