視覚障害のある方へのAT/AACその1 [e-AT・AAC(試験対策)]
今回から視覚障害関連の支援機器の紹介を行なう.本記事ではは視覚障害の種類と弱視の方への支援機器を紹介している.では早速…
- 視覚障害
日本国内の18歳以上の視覚障害者数は301,000人程度.18歳未満の視覚障害児数は4,800人程度と推測される.
視覚障害者のある人の比率は年齢が高くなるほど高くなる.
視覚障害には日常生活で視覚を全く活用できない全盲(Blind)と一部の視覚は活用できる弱視(Low Vision)に分けられるが,視覚障害のある方の約70%は視覚の活用が可能である.
視覚障害の原因としては,- 眼球の機能障害 角膜や透光体の混濁(白内障など),角膜や水晶体の機能が働かない場合,瞳孔機能が働かない場合,網膜機能の問題など
- 情報を伝達する神経や脳の障害によるもの
- 腫瘍などによる神経の圧迫や神経の切断などによるもの
- 脳腫瘍や脳血栓による脳の視覚野のダメージによるもの(皮質盲と呼ばれる)
- 幼児期に視覚情報が与えられない状態(視覚遮断)が長く続くと,神経中枢の発達が妨げられるため視覚障害を生じる(乱視・斜視への対応は約8歳までに行なう必要がある)
弱視のある人には次のような問題点がある.
- 像がぼけてはっきり見えにくい
図と背景の境界線がはっきりしない. - 余分な光のために見えにくい
まぶしすぎて見えない場合もあるが,光が少なすぎてもものが見えなくなるため適切な採光が重要. - 視野が狭い(視野狭窄)
一度に見ることのできる範囲が少なくなり,全体を把握しづらくなる. - 視線を向けている先がよく見えない
視野の中心が見えにくくなる状態(中心暗点)が生じる.あるものを見ようとするほど見えにくくなるのが特徴.
視覚に障害のある人とコミュニケーションをとる場合,こちらのジェスチャー,表情等は見えないことを踏まえ,以下のような点を注意しなくてはならない.
- 誰が話しているか,誰に話しているかを分かるようにする.
- 質問などには声に出して回答をするようにする.
- だまって席を外さない.
- ものの場所を移動した場合,必ず伝える.
- 支援機器の設置の際は何の作業を行なっているか伝える.
- 支援機器の設定内容,必要な支援などは必ずユーザーに確認を取った上で行なう.
OSに付属するユーザー補助機能(画面拡大,ハイコントラスト画面など)については以前の記事
「パソコンのアクセシビリティその5(視覚障害・聴覚障害者向けのユーザー補助について)」
「パソコンのアクセシビリティその6(ユーザー補助のアプリケーション)」
「パソコンのアクセシビリティその7(Macの場合)」
を参照のこと.その他の対応方法としては「画面のプロパティを参照し,フォントなどを大きくする」「ディスプレイの解像度を下げる」「大きい画面のディスプレイを用いる」などの方法がある.
その他の専用ソフトウェアについては下記サイトをご参照下さい.
なお,弱視の方がパソコンを使用する場合,画面に目を近づいて操作することが多いため,それによる障害が発生しないよう注意しなくてはならない.
- 拡大コピー
文字が小さいため弱視の方が読むことができない場合,コピー機の拡大機能を使うことで問題が解消する場合がある. - 拡大読書器
ビデオカメラとディスプレイが一緒になった装置であり,ディスプレイにカメラで拡大したものが表示される機器.コントラストをはっきりさせるための白黒反転機能や画像強調機能のついたものもある.まぶしさを押さえ読んでいる行のみを表示する「マスク機能」や,同じ行を読めるようガイドラインを表示する「ライン機能」などが機能として備わっている.また,近年小さく持ち運びのできる「携帯用拡大読書器やディスプレイを頭にマウントするタイプの拡大読書器もある.また「拡大読書器」の項目で日常生活用具の給付対象品目となっている.
その他の専用ソフトウェアについては下記サイトをご参照下さい.
- ルーペ・単眼鏡
次回は全盲の方向けの支援機器についてまとめるのでよろしく.
参考文献・サイト
- 福祉情報技術 II 生活を支援する技術編
e-AT利用促進協会 監修 - 福祉情報技術 I 障害とテクノロジー編
e-AT利用促進協会 監修 - 福祉情報技術コーディネーター認定試験
e-AT利用促進協会 監修 - アダプティブテクノロジー ~コンピュータによる障害者支援技術~
ジョゼフ・ラザーロ 著/安村通晃 監訳/島原信一・中村美代子・石田直子 訳 - こころWeb
こころリソースブック編集会
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