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節分三題~佃・月島・水天宮 [新佃嶋界隈]


東京湾岸にも寒気団急降下の寒い日曜日、朝から働いている宅急便屋のオジサンが「今日は外に出ない方が良いよ」などと、息を白くしながらオソロシイことを宣る。昨日来、ポリバケツの防火用水にしっかり氷が張って、水面に落ち氷りに閉じ込められたお隣さんちの椿の花弁がまるでモダンアート。そんな午後は、ノンビリしたローカル話をしましょう。

去る2月3日は音楽評論家青澤隆明氏のお誕生日…じゃなくて(そうなんだけど)、節分であった。さあ、もう旧正月、イスラム歴でも新年、ああめでたや。

さてもここ東京の元祖田舎町佃界隈、なにせ祭りやら行事は大好きな人たちばかりなんだから、節分を放っておく筈もない。町内、お隣、川向こうと、世俗化された宮廷行事の専門家たるあちこちの神社では、ここぞとばかりに「春を呼ぶ節分祭」が開催される。なぜかは知らぬが月島レトロ交番の裏にある観音様も節分の責任者らしく、そこそこ盛大な豆撒きもある。ほれ、こんなにあるぞ。相変わらず相生橋向こうの富岡八幡宮は派手好きだなぁ。どーも夏祭りといい、あの派手好みにはついていけん。http://www.tokyochuo.net/news/press/2005/01_31/press_12.html
てなわけで、去る2月3日金曜日、原稿を一本終えて、金曜の夕方までに移さにゃならぬお金があるので我がメインバンクたる「シティバンク銀行」(一番近いのが銀座中央通りとみゆき通りの交差点、または、水天宮の東京シティエアターミナル内)に行くのを口実に、大川河口をウロウロしてまいりましたとさ。

さても、まずは午後3時から始まる佃住吉神社の節分祭。なにせ伝統と格式を誇る元佃の神社、さぞかし人出もあるのだろうと思ったら、3時前なのに狭い境内にはろくに人もおらぬ。警備の消防車やら警官やらが目立つばかり。
賽銭箱の向こうでは、年男年女が加持祈祷を受けていらっしゃる。おお、しっかり宗教行事をなさっているではないの。で、3時をまわり、近所の親子連れが神楽舞台の前に三々五々集まり出す。江戸伝統の佃神社の節分を撮影せんと繰り出したらしいアマチュアカメラマンが数人、なんだか拍子抜けで目立ってますね。←他人のことは言えんわい!
お祓いを受けた長老連がゾロゾロと神楽舞台に向かい、ダラダラと舞台に上がり、なぜか揃いの銀座松屋の袋を置き、おもむろにお菓子袋を取り出し…これといった合図も鳴り物もなく、ぎこちなく投げ始める。かけ声はあるのかしら、嬌声が上がるでもなく、大騒ぎがあるでもなく、さほど多くもないギャラリーに向けて、どっかノンビリ投げてます。なにを投げるも結構だけど、蜜柑をそのまま裸で投げるのは、ちょっと危険ではないでしょーか。トップの写真、佃住吉神社境内を飛翔する蜜柑の図。
かくて佃住吉神社の節分祭は、いかにも伝統の神事らしく、恙なく、じみーに、のんびりと過ぎていくのであった。

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佃住吉神社見物を15分で切り上げ、チャリチャリと隣の人工島、月島に向かいましょ。なんせここは名にしおう東京の観光地、月島西仲通り。そー、かの「もんじゃ通り」なのであーる。
地下鉄月島駅出口から延々と人工島を貫く西仲通りには、総計4つの豆撒き舞台が用意される。一番派手なのは月島観音からほど近いレトロ交番の向こうのセーフー前、3丁目の辺りなんだけど、1丁目や2丁目にもちゃんと豆撒き舞台はある。3時から20分に一度くらい、それぞれ持ち回りのようになにやら放り投げられて、それなりに盛り上がるようだ。

どうも月島の節分祭は、神事というよりも商店街の人寄せイベントの色合いが強いなぁ。豆撒き台が仮設される場所などを眺めていると、睦さんが仕切るのかとも思えるのだけど、どうもそうじゃないみたい。なにせ投げられる袋には、商店街のサービス券とか割引券が満載なんだから。
昨年など、新参者の饂飩屋さんが状況がわからずに山のように無料饂飩サービス券を提供してしまい、豆撒きが済んだ途端に、店の前にタダ券を手にしたガキンチョどもが列を成し、「完全に赤字です」とパニックを起こしていたっけ。手打ちうどんと酒の肴の店「たまや」のマスター、今年は大丈夫だったのかしら。
紅白の垂れ幕を着せたライトバンの裏、西仲通りの隠れた名店たるサンドイッチ屋さんのおばーちゃん(完璧な江戸弁の元べっぴんさん、店の名前は敢えて明かしません)と長話。あのぉ、豆撒き、始まっちゃうんですけど。
「あたしが子供の頃はね、もうスゴイ人出で、通り全体に紅白の幕を張って、その間からなんとか潜り込むのよ。商店街からすれば、なんであれ人出があればいいんでね。まああの頃は凄かったね、今はもう、ぜーんぜん人なんていないね…」
おっと、投げ始まったぞ。人なんていない、というものの、数百メートルに渡る長い通りのあちこちで、拡声器でがなりながら、商店街のおねーちゃんやおっちゃんが豆やら商品券の入った袋をぶんまくのだ。きゃーきゃーと人が騒ぐわね。なにが起きたか判らずに参加する、スペイン語の東京ガイドブックを持ったラテン系外国人観光客カップル。確かに豆撒きはラテンのノリが不可欠かも。
主役たるガキンチョらはしっかり紙袋持参。ひと投げ終わる毎にマグドナルドの角に座り込み、戦利品の確認中。漏れ聞こえる会話が「…そっちは滑り止めで、●●が本命」なんて、焦臭い中学受験話なのは、上流階級のご子息もおられるリバーシティの足下ですねぇ。

逃げまどう 鬼の袖ひき ながばなし

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春は名のみの日の短さ、東京湾岸も3時半をまわればすっかり夕暮れの光。これから銀座に行ってもしょうがなかろう。鐵砲洲稲荷神社の豆撒きも魅力的だけど、やっぱり有名どころの節分祭をひとつくらい見物しておきたい。というわけで、西仲通りを北上し、中央大橋を越えて川向こう、エレガントな曲線の永代橋と、空へととんがる清洲橋の間、なんとも無骨な高速道路橋(隅田川大橋などと呼ぶ者は誰もいない)が内陸へと向かうところの水天宮に参りましょ。

水天宮ともなれば東京の大メイジャー神社。わざわざ「水天宮の節分」のため観光客も繰り出しているようだ。シティエアターミナルから人形町へと向かう水天宮通りの歩道は人で溢れ、豆撒きのハシゴらしきガキどものチャリンコ軍団が雑踏をかき回している。←他人のことは言えんわい!
急な階段を上った境内も人の波。さすが老舗、観光地の賑わいと地元の神社としての神事との、絶妙のバランスです。子供豆撒きは1時半からやったようで、とっくに終了。3時から5時までは、お払いをすませた年男年女が神楽舞台に立ち、ひとますをかけ声三つくらいで投げ上げる。どおおおんと太鼓が鳴り、善男善女がどおおおっと押し寄せ、ひいていき…

ええ、名物の甘酒、もうないのぉ。まだ4時過ぎですよぉ。


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