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【読書感想文】 ロボットの心 [本]

この前から読み始めた『ロボットの心―7つの哲学物語』を読み終えた.

久しぶりに読んで良かったと思えた本である.
哲学者という立場から理工学の知識をもって人工知能(AI:Artificial Intelligence)と身体性,ロボットと感情,倫理観などについて端的に述べられている.最初の数章はややスローペース気味かとも感じたが後半はペースが上がり心地良いリズムで読めた.私の学生時代に勉強したロボット工学の知識も整理され再認識できた.
また「ロボットや人工知能って今どうなっているの?」とお思いの方々にもお薦めできる<入門書>と位置づけても良いかもしれない.人工知能研究の歴史にも触れられているとともに現在のロボットや人工知能が直面している問題も浮き彫りにされている.



上の本で人工知能と身体性,ロボットと感情,倫理観について述べられていたのを受け,少し立場を変えて人間(?)と身体性,感情,倫理観の関係について少し思うところがあった.以下少々オタク的ではあるが...


『攻殻機動隊』というアニメもしくは漫画をご存知であろうか.
物語の舞台は2030年頃,マイクロマシン技術などの向上により多くの人々が脳の中に情報インプラントを埋め込み(電脳化)脳とネットワークが直結され複雑な情報網を形成し,またロボット技術などの向上により身体機能を損なわないもしくはそれを上回る能力をもつ義手や義足,義眼,はてには義"体"なるものが存在する世界である.
主人公の草薙素子と呼ばれる女性は電脳化はもとより身体の障害により子供の頃から脳と脊髄の一部を除き全身を機械化/義体化したサイボーグである.そして類稀なる義体操作能力と冷静な判断力などを買われ日本政府の公安9課という特殊活動部隊に所属し,その中心的存在として様々な犯罪に対して作戦を遂行している.
彼女の義体は見た目こそ人間の女性と同じか一般的な女性形全身義体(むしろ積極的に一般的な姿にして公安の者だと分からないようにしている?)だが身体能力は人間をはるかに上回っている.チタン製の強固な脳殻や圧倒的な力を出す筋肉状アクチュエータなど驚異的な能力である.温覚,冷覚,痛覚などの感覚器官から脳への情報も時としてはオフにすることができ戦車に片腕が撃ち抜かれてもまだ戦車に立ち向かっている.また義体が痛んだときは義体ごと交換もしている.

さて,疑問なのである.この完璧なほどの義体を有している草薙素子なる存在は義体化されていない人間と同じような倫理観,価値観を持ちうるのであろうか???
『攻殻機動隊』の中では生身の人間とそう変わらない倫理観を持っているように私には見える.汚職を暴いたりテロリストを捕まえるという行為は現在の我々生身の人間の倫理観から来るものと同じようなものなのではないだろうか.(公安活動が倫理的であるかという問題もあるがそれは今も同じ...?)
しかし,完全義体化により生身の人間にもたらされる脅威の多くは排除されるのである.脳と脊髄の一部の寿命を除けばその他は不死に近い.インフルエンザウィルスなどは取るに足らず.ガンにもならない.犯罪者が現れて身体を切りつけようが撃とうが大した問題ではない.テロリストが毒ガスを撒いても関係ない.その上草薙素子は子供の頃から完全義体である.それでも生身の人間と同じような善悪の基準,倫理観,価値観を持ちうるだろうか...程度は想像できないが,たぶん違うものと考えられる.(ひとまずどうでしょう...)

(ここまで義体の話をしておいて何ですが...)『攻殻機動隊』で多くの人々が行っている電脳化だけでも今の価値観とは違うものの見方になるかもしれない.
現在でもすでにインターネットが世界中に広がりそれを我々は利用している.今(2006年)と20年前(1986年)の価値観は同じか,倫理観は同じか.少なくとも一人が扱えるもしくは発信する情報量は飛躍的に多くなっている.地域に縛られていた情報は世界を駆け巡るようになった.ネットという新しい身体性が芽生えているのかもしれない.あるいはインターネット上での誹謗・中傷は絶えない.本人を前に誹謗・中傷したら殴られるかもしれないがネット上では大丈夫...こちらは既存の身体性が無くなってきているのかもしれない.(ふたまずどうでしょう...)

ロボットにおいても同じことが言える.『ロボットの心―7つの哲学物語』を読んで頂ければ人工知能(AI:Artificial Intelligence)と身体性,ロボットと感情,倫理観は切っても切れない関係であるということが分かると思う.そしてその倫理観は身体性に依存する.そうすると人間とは違う"機械"の身体を持つロボット(人工知能)に人間と相容れる倫理観を持たせることは出来るのであろうか?

しかし人間の中でも文化が違えば価値観も倫理観も違う.さらには個人個人でも価値観や倫理観は違う.ではどうやってロボット(人工知能)を作ったら良いのか???
むずかしい...



何だか今日は「ですます」調から「である」調になってしまいました.
人間のような知能をロボット(人工知能)に持たせる場合の”極端な話”なのですが考えると色々むずかしいですね.


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