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No.529 ファイアーエムブレム 紋章の謎 [懐ゲー]

 思い出話になるのは勘弁してください。
 というのも、会社で徹夜仕事続きなので、書く事がないのです。
 要するに、こんな忙しい日々を送っていると過去を懐かしいんでしまうんだなぁ、などと察していただければ……。



 というわけで、今回紹介する懐ゲーはコチラ。

 

 『ファイアーエムブレム 紋章の謎』 でございます。

 シミュレーションRPG、という新たなジャンルを築き上げた名作、暗黒竜と光の剣の続編として、94年の1月にスーパーファミコン用ソフトとしてリリースされました。
 もっとも、この作品には前作を知らないとストーリーがわからないので、前作もリメイクし、1部を暗黒竜と光の剣、2部を紋章の謎として構成されており、そのボリュームはとんでもないことになっております。

 今思えば、このROMの容量がどのくらいなのかは知らないんですが、1部と2部、両方まとめて全44話、よく入りましたよね……。
 しかし実際その容量の都合からか、1部のマップは何箇所か削られ、僧侶やシューターというユニットが削られたりしていますけど。

 ――で

 このファイアーエムブレム、私がファミ通を買い始めた頃にSFC版が登場したばかりで、非常に評判がよろしいんですな、これが。
 しかし当時の私は中学1年生。
 お小遣い的に1本9500円もするゲームを買うことは不可能でございました。

 ――が

「評判良いから買ったんだけど、俺の肌にはあわねー」

 とかいう友人が。

「じゃあ貸してくれっ!!」

 持つべきものは金のある友人です。
 のびたやジャイアンは、スネ夫をもう少し大事にするべきでしょう。
 この友人のお陰で、私はファイアーエムブレムをプレイすることができたのです。

 戦略性に富むマップの数々。
 死んだら生き返らない絶妙な難易度。
 迫力ある戦闘シーン。クリティカル時のズバーンって効果音が小気味良くカッコいい。
 そして、とにもかくにも経験値を稼ぎ、キャラを育てるのが楽しい!

 絶妙なゲームバランスとキャラクターの魅力、育てることの楽しさ、そして歴史好きな私にとってこの手の戦争ゲームはまさしくツボだったのです。
 そりゃあもうこれ、ヤバイくらいハマっちゃいましたとも。

 1度クリアしただけでは飽き足らず、2週目にも挑戦。
 2週目は全てのキャラをレベル最大にし、パラメータも魔法防御以外最高に上げるというやり込みよう。
 さらに3週目では主人公・マルス一人でどこまでいけるかに挑戦!
 そんなときでした。
 これは借りたゲームです。
 いつかは返さねばならぬもの。

「なんかヤル気になったから返してくれ」

 持ち主の気が変われば返さねばならぬのが貧乏人の悲しさよ。
 しかし、私はこれを返したくはありませんでした。
 当然です。
 データはこのロムにしか入っていないからです。

 右も左もわからないなりに頑張って、グッドエンディングを見た最初のクリアデータ。
 そして私が育てあげ、見事に全員オール20のパラメータにまで鍛え上げ終章まで導いたこのクリアセーブデータ。
 そして新たな挑戦中のセーブデータ。
 これを返さねばならぬのか!?
 メモリーカードという便利なものはありません。
 ターボファイルなどというアスキー発売のものは対応していません。

「ぐぅ……」

 返せない。
 こんなにまで愛情を込めて育て上げたセーブデータが詰まったロムを、私は返せない!
 たとえそれは数値の配列データにすぎないものであっても、このファイアーエムブレムのロムカセットを手放したくない!

 ・
 ・
 ・

 悲痛なまでのファイアーエムブレムへの想い。
 そう、返せないなら手は一つです。
 同じものを買うしかありません。
 同じものを購入し、ロムをすり替えるのです。
 しかし、私には先立つものがない……。
 仕方がないので借金をしてでも工面することに。



 まずは母のところへ。

「かーちゃん、金貸してくれッ!!」

「とーさんがお金を家にいれてくれたらね」

「……」

 絶望的であった。



 次は無理だろうな、と半ば察知しつつも父のところへ。

「とーちゃん、金貸してくれッ!」

「酒屋のツケをお前が払ってくれるなら貸したるぞ」

「どこの世界に酒屋のツケを息子に払わせる親がいるんだよ!」

「おどれの目は節穴か!? ここにおるだろーがッ!!」

 ……威張るクソ親父。
 これまた絶望的であった。



 ……最後の手段

「ねーちゃん! 金貸してくれッ!!」

 ワラにもすがる思いで懇願。

「頼むときは土下座せんかぃ!」

 プライド? そんなものねぇ! 私はすぐさま土下座し、金を貸してくれと頼み込む。

「そんなプライドもくそもない坊主に貸す金はない」(即答)

 ……理不尽な。

「しかし」

「しかし?」

「片手腕立て、今すぐここで50回できたら貸してやってもいい」

「50!?」

 なぜ片手あのかというと、私、小学生の頃に右肩を壊しているので (壊したのはこの姉) 左で50回しろという意味だ。

「休みなしでな。手のひらと足先以外、地面に触れたらやり直しやぞ」

「ご無体なッ!?」

 結果、無理でした。
 50回もできるわけない。

 そこで...

「手持ちのソフトを売るしかない……」

 しかし私は中学に入ってからようやくSFCを買ってもらっただけであり、手持ちのソフトといってもほとんどない。
 あるのは最初ハードと一緒に買い与えられた スマッシュTV とかいう洋ゲーと、シムシティと、ファイナルファンタジーⅣと、F-ZERO……これだけである。
 まず高値で売れそうなのといえば、FF4くらいだが……これもセーブデータが、ということで却下。
 シムシティは親父が当時現在進行形でハマっていたので却下。
 となると、残りはスマッシュTVとF-ZEROなのだが……どちらも安そうだ。

「スマッシュTVは500円、F-ZEROは700円ね」

 電話して聞いてみた結果がこれである。

「ファイアーエムブレム? 中古であるよ。3980円ね。箱説なしなら300円まけとくよ」

 ついでにFEの値段を聞いてみると、これである。
 発売して半年以内でこの価格。
 定価を考えると信じられない値引きではあるが、その当時ではこんな具合であった。
 しかしそれでも……手持ち、かき集めたお金は1500円。
 2本売ってもFEに1000円ほど届かない。

「どうしよう……」

 今日は土曜日。
 明後日の月曜日に返さなくてはなりません。

「仕方ない」

 私は手持ちの1500円、全てを賭ける事にしました。
 私はこの日のことを鮮明に覚えています。
 その日、6月12日という日のことを……。

 そう、その日はGI・宝塚記念の日だったのです!!(どどーん)

 94年の競馬は、2頭の怪物が話題を独占していました。
 ビワハヤヒデという芦毛の馬と、その弟のナリタブライアンという馬です。
 ナリタブライアンは朝日杯、皐月賞、ダービーと、ここまで手にできる全てのタイトルを手にしてきた3歳馬。
 一方1歳上の兄、ビワハヤヒデは弟が勝っているその3つのレースで惜敗したものの、菊花賞で勝利。
 今年は天皇賞・春にも勝利し、現役最強馬の名を欲しい侭にしている、まさに時代の最強馬。
 この宝塚記念でも3つ目のタイトルを狙い、圧倒的な支持を集めていた。
 その単勝倍率、1.1倍。(最終的には1.2倍)
 私の1500円を賭けた所で、1650円にしかならないわけで、これではFEは買えない。
 そこで私が目を付けたのが、複勝馬券。
 1着にならなくとも、3着までに入れば配当がもらえる馬券である。
 1着はビワハヤヒデでまず間違いないだろう。
 しかし2着となるとどうか?
 2番人気はネーハイシーザーだが、サクラチトセオーやステージチャンプ、マチカネタンホイザにナイスネイチャとG1では一歩足りないものの、2,3着なら十分ありそうな面子がごろごろいる。

 賭けるなら、どれだ……?

 そこで私が目を付けたのがこの馬、ダンシングサーパス。
 80年代欧州最強馬、ダンシングブレーヴの仔で、重賞勝ちこそないものの、今年に入ってからは日経新春杯、目黒記念、阪神大章典で立て続きに入着、前走のオーストリアトロフィーでは念願のオープン勝ちを収めており、堅実に走るイメージがある。
 それに騎手、熊沢重文はあのダイユウサクで大穴をあけた騎手。
 グランプリならなにかやってくれそうな雰囲気はある。

 私の全て、といってもたかだか1500円だが、その全てをこのダンシングサーパスに託し、私は人、人、人でごった返す競馬場の中でひたすら祈った。
 私の代わりに馬券を買ってくれるいつものオッチャンも、ダンシングサーパスを購入し一緒に応援。
 ちなみにこのオッチャンには大変お世話になっており、電車賃までいつも出してくれてたりする。

「ファイアーエムブレム……ファイアーエムブレムを買わせてください……」

 これで駄目なら返すしかない。
 私は祈り続けた……。

 ・
 ・
 ・

 結果、ダンシングサーパス、3着!
 1着はやっぱりビワハヤヒデで、圧勝のレコード勝ち。
 2着はアイルトンシンボリ。ここからGIでの好走すれども勝ちきれず、というレースを繰り返すこととなる。

 ダンシングサーパスの複勝払い戻しは4.5倍。
 1500円は、6700円となって帰ってきた。
 これでファイアーエムブレムが買える……。

 ・
 ・
 ・

「店長、これしかないの……」

 中古ショップ。
 ファイアーエムブレムはあった。
 しかし...

「そう、それだけしかもう残ってない」

 むき出しのロムカセット。
 それは別に良いのだ。
 中身だけをすりかえて返すだけなので、箱・説はいらないのだ。
 問題は...

「ソフトの裏に、『たになかゆうき』 って油性マジックで書いてあるの、なんとか消せない?」

 そう、油性マジックで大きく 『たになかゆうき』 と書かれているのだ。
 恐らく親が評判を聞いて子供のために買い与えてやったはいいが、難しくて売ってしまったのだろう。
 たになかゆうき君にはこのゲームはまだ早すぎたのだ。

 とりあえずシンナーがあれば消せる。
 そう教わり、購入して家路に着く。
 そして...

「かーちゃん、シンナーある?」

 台所で夕飯を作っていた母にそう聞いたところ、奥の居間にいた姉がそれを聞きつけ...

「シンナーやとぉ!? そんなもんどうするつもりや、このド不良がぁッ!!」

 反論許さぬ蹴り一閃。
 そうだった、そういやシンナーってそういういけないことにつかわれることがあったよなぁ……。
 でも姉よ、せめて何に使うのかくらい聞いてほしかった……。
 上段蹴りは私の顎先を見事に捉え、柱で後頭部を打ち付けた私は、薄れゆく意識の中そう思った……。



 翌々日。

「ブルー」

「ん?」

 昨日、ファイアーエムブレムを返してもらい、プレイし始めたという友人が話しかけてきた。

「返してもらったカセットだけど」

「あ、ああ。なに? どうした?」

 内心の動揺を抑えつつ、質問を促す。

「やたら、みかん臭いんだけど」

 そう、結局シンナーなんて家にはなかったので、たになかゆうき と書かれた油性マジックは、みかんの皮でこすったら消えたのでありました。
 しかし、その匂いまでは消えるわけでもなく……。

「そ、そう? うち、みかんいっぱいもろたから、それのせいかなぁ。アハハハハ」

 後頭部のタンコブを左手でさすりつつ、私は胡散臭い答えを返すのでありました……。



 とにかくこのファイアーエムブレムの紋章の謎は、名作であった。
 私は今でも、しかもこんな徹夜で仕事続きの状況の中でも、当時のことを鮮明に思い出せるほどこのゲームを愛していたのだ。
 ニコニコ動画でもこのファイアーエムブレムのやり込み動画は見ることができる。
 しかし私が成し遂げた、主人公マルス1人旅のクリアは、まだその挑戦すらアップされていない。
 かなり運に左右されるため、やっぱり今考えても無茶なんだろうなぁ、と思う。
 その無茶を成し遂げたセーブデータは、実はつい先日スイッチを点けたとき、とうとうロムの電池が切れたらしく、なくなってしまっていた。
 もうこんな重厚な、ぶっちゃけいうと時間のかかるゲームはプレイしないかもしれないが、そのときの思い出はあの宝塚記念を含め、私から欠かすことのできない一部分として息づいている。
 たとえセーブデータがなくなってしまっても、あの記憶はなくならない。
 だからあまりショックではなかったのが意外といえば意外であった。

 最近はWiiで新作がでたが、私はもうあそこまでグラフィックが進化したファイアーエムブレムはプレイしたくないなぁ、と思っていたりする。
 だけど、暗黒竜と光の剣が2008年、DSでリメイクされるらしい。
 これは買いたいなぁ、と思っている次第であり、私にとってエムブレム愛は未だ健在なのであった。


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ナックル最強説

僕も昔を懐かしみながら読ませてもらいました。
ブルータスさんの色んな思いが詰まった一本なんですね。
そして、相変わらずお姉さんのキャラが(ry
これだけ読み手を引き寄せるブルータスさんの文才が羨ましい限りです。
by ナックル最強説 (2007-12-18 08:16) 

BlueTasu

 ナックルさん、最近たくさんのコメントをいただきましてありがとうございます。

 ファイアーエムブレムは私の想いが本当に色々詰まったゲームだったんですよね。
 いつか書こうと思っていながらも文章にできず、ふと会社で書き始めたところスラスラ書けたので掲載してみました。

 姉はいつもこんなです。
 これでもうすぐ結婚するとか...

 文才は...もっと面白いものや巧く書く人はゴロゴロいますし (リンク先のクリスさん然り) 私としては毎日欠かさずに更新しているナックルさんの継続性のほうが羨ましかったりします。
 私は割りと、今日更新できなかったけど仕方ないか、で済ましてしまいますしね……。
by BlueTasu (2007-12-20 01:45) 

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