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卒業生MayのNY Bar合格体験記 [NY Bar]

LLMプログラムを2007年に卒業したMayです。2007年7月のNY Barを受験し、運良く合格することができました。以下、私の受験生活や勉強内容などについてご紹介したいと思います。これから受験される方の参考になれば幸いです。

(なお、NY Barについての概要・注意点などは、Mさんの体験記http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2007-11-17に詳しく記載されておりますので、まずはそちらをご参照いただければと思います。)

1 受験生活

私は5月16日に第一子を出産したため、子育てと受験勉強をほぼ同時期にスタートさせることになりました。22日からBarbriの講義が始まりましたが、産後の弱った体では車の運転はもちろん荷物を自分で運ぶこともできず、当初は毎日教室まで夫に送り迎えをしてもらっていました。日本から母親を呼び寄せ、家事や育児に協力してもらいましたが、基本的に母乳以外は受け付けない子供だったので、Barbriの講義の時間帯以外は子供のそばを離れられない状態でした。また、腱鞘炎・腰痛・悪露など産後特有のトラブルに悩まされたことに加え、子供の世話で慢性的な寝不足状態にあり、体力的にも厳しい状態に置かれていました。基本的に勉強に集中できるのはBarbriの講義の時間のみ、あとは子供の世話の合間に細切れに勉強をする感じでした。

2 受験戦略

他の受験生に比べると勉強に割くことのできる時間が著しく限られていたため、合格に最低限必要なことは何かを常に考えながらメリハリをつけて勉強するように心がけました。具体的には以下のとおりです。

勉強全般について
・ 普段の勉強はBarbriの講義の復習を中心としました。NY Barは受験者の7割が合格する試験であり、しかも大半の受験生がBarbriを受講しています。したがって、人がやっていることを同じようにやることが何より大切と考え、Barbriで学んだことをきちんと理解することを最優先事項と位置付けました。
・ 前述のとおり、私の場合はBarbriの講義が唯一集中して勉強できる時間帯であったため、この時間をいかに有効活用するかという点が一番の課題でした。最初の1週間ほどは方法を模索する状態でしたが、2週目からは、過去ノートをみながら講義を聞きつつcondensed note(要点のみをまとめたノート)を作成するという形にしました。Condensed noteは直前期の見直しに大いに役立ちました。
・ 2ヶ月という期間は短いようで長く、最初のころに頑張って記憶をしても時間がたてば忘れてしまいます。そのため私は、Barbriの講義終了後の2週間を細部のinput(記憶)にあて、その前の6週間は、講義の復習とcondensed noteの作成に集中しました。ただし最初のころに講義が行われたNY科目については、放置しておくと完全に忘却の彼方に行ってしまうと考え、時間のあるときにcondensed noteを読み返し記憶を喚起するように努めました。
・ Barbriの講義開始前から受験準備をはじめるつもりで4月にPMBRの講義CDを購入しましたが、学校の勉強(論文執筆)と出産準備でとても手が回らず、結局は数枚聴いただけ、しかも内容はほとんど頭に残りませんでした。最近では、年明けころからPMBRの問題集を解き始めたり、3月頃からBarbri講座を受講し始める方も多いようですが、個人的には、長期間にわたりダラダラ勉強するより短期決戦のつもりで臨む方が効率がいいのではないかと思いました。何よりわずか9ヶ月しかないLLMの在籍期間をNY Barの受験準備に割くのは勿体がないように思います。

MBEについて
・ MBE科目についての問題演習の大切さは過去の合格者がそろって強調するところであり、私も基本的にはその通りだと思います。しかしながら闇雲に多くの問題を解けばいいというものではなく、問題演習を通じて自分の不得意分野を認識し弱点を補強していくことが必要と思います。特に私の場合、十分な問題演習をする時間がなかったので、再度間違える可能性がある箇所についてはCondensed noteに要点を書き込むか別途メモを残す形とし、直前期にさっと見直しができる状態にしておきました。
・ MBE6科目のなかで最も点を稼ぎやすい科目は憲法と一般には言われていますが、これはアメリカ人の場合は学校教育や日頃のニュース報道などを通じて憲法に関する基礎知識を身につけているためと思われ、日本人の場合にはBarbriの講義のみでは太刀打ちできないように感じました。よって私は、憲法については例外的にBarbriの講義に加えてPMBRのCDを聴きました。このCDでは重要判例などについて分かりやすく解説がなされており、なかなか役に立ちました。
・ MBEは3時間×2の長丁場なので、途中で集中力が切れないようにする工夫が必要です。私の場合、問題文を頭から読むのではなく、まず最後の一文を読んで何の科目の問題で何が聞かれているのかを把握してから、問題文を読むようにしていました。こうすることによって目的意識を持って集中して問題文を読むことができたほか、関係がなさそうな部分はスピードを上げて読み、時間を節約することができました。また読みながら人物の名前に丸をつけたり図を書いたりするなど、常に手を動かすようにして、脳の活性化に努めました。
・ ちなみに私の場合、6科目のうち学校で勉強したことがあったのはcriminal procedure のsearchの部分のみ、そのほかは0からのスタートでした。解いた問題数は合計で900題程度(BarbriのIntermediate+drill+模試二回+α)、PMBRの問題集については、手をつける余裕がありませんでした。他の方の合格体験記などをみるとだいたいみなさん2000~3000題程度、多い人だと4000題近い問題を解いているようなので、それに比べればかなり少ない数ということになると思います。なお、模試の点数はいずれも100点前後、本番はScaled scoreで142.5でした。(Raw scoreは今年から通知されなくなったようなので不明です。)これがどの程度の点なのかということですが、National Conference of Bar Examinersの資料によれば、7月の試験の全受験者の平均が例年142-143のようなので、ちょうど平均程度ということになるようです。日本人はMBEで点を稼がなければならないと言われているので、胸を張れるような点ではないわけですが、「エッセイで大コケしなければなんとか合格できるレベル」に一応は達していたのかなと思います。
参考:Bar Examの統計(National Conference of Bar Examiners)
http://www.ncbex.org/fileadmin/mediafiles/downloads/Bar_Admissions/2006stats.pdf

NYエッセイ
・ 当初はBarbriのカリキュラムに従い問題を自分で解き答案構成を作成していましたが、一問にあまりにも多くの時間がかかり効率的ではないと思ったため、7~8問程度でやめてしまいました。結局は問題文を読まずに過去の合格者が作成した答案構成のみを2度ほど回しただけでしたが、答案構成の流れと重要論点を把握するという意味では、これだけでもかなり効果があったように思います。
・ エッセイはキーワードに着目した採点がなされると聞いたことがあったので、重要な法律用語や法律の名称、要件・効果などについては、正確に記憶するように努めました。
・ NY distinctionsについては、Condensed noteで分かりやすく色分けをしておいて、直前期に一気に暗記しました。

MPTについて
・ 時間を割いたところでそれに見合うだけの点数アップは期待できないと考えたので、Barbriの講義のなかで一回答案を作成したほかは、特に対策などは立てませんでした。
・ なお、英語のリーガルライティングは日本語のそれとはルールが全く異なります。例えばIRAC(Issue, Rule, Analysis, Conclusion)の順に論じることは必須であり、「確かに~しかし~したがって」ではアメリカ人には理解してもらえません。VanderbiltではLLM向けのライティングの授業があり私の場合はこれが非常に役立ちましたが、そのような授業がない場合は自分で勉強する必要があると思います。学校の期末試験対策としても重要ですので、早い時期に薄い本を一冊読まれるといいのではないかと思います。

NY択一について
・ Barbriの黄色い本に記載された問題を20問ほど試しに解きましたが、あまりにマニアックな内容に嫌気がさし、以後手をつけませんでした。NY択一は5割とれれば十分といわれていますから、MBEやエッセイ対策をまずは優先すべきと思います。

3 その他TIPS(受験に際してのトラブルなど)

・ 腱鞘炎に苦しんでいた私にとっては手書きでの受験は考えられず、ラップトップ受験の申し込みをしましたが、一度目の抽選に外れてしまいました。周囲を見る限り抽選に外れた人は1~2割程度、頭にきてBar Examinerに抗議の手紙を送りましたが、「ソーリー、二度目の抽選結果を待ってね。」という連れない返事でした。結局二度目の抽選で当選しましたが(といっても希望者全員が「当選」だったようですが)、試験会場はバッファローかサラトガのいずれかになるとのこと、飛行機やらホテルやらを一から手配しなおすだけの気力は残っていなかったため、やむなく手書きを選択しました。なお、後で友人から聞いたところによれば、二度目の抽選に当選してすぐにBar Examinerのホームページにアクセスすればマンハッタンも選べたとのこと、非常に悔しい思いをしました。なお、当日は手首にサポーターを巻いての参戦となりましたが、一日だけだったので症状が極端に悪化することもなく何とか乗り切ることができました。

・ 試験前日は緊張のため眠ることができず、徹夜で一日目の試験に臨むこととなりました。実は日本の司法試験を受験したときも同様のトラブルに遭遇したことがあったので、(眠れないほど緊張していたのに変な話なのですが、)特にあわてることもなく、日本から取り寄せて準備しておいた眠気覚ましドリンク剤を飲んで乗り切りました。アメリカでもこの手のドリンクは市販されているのではないかと思いますが、私のようにchicken heartedな方は事前に日本から取り寄せておくといいと思います。

・ 1日目の午前のエッセイでは、Barbriの講師の指示どおり、修正がしやすいように「一行おき、右ページのみ使う」形で答案を書きましたが、試験終了直前に答案を見直していたところ、「すべてのページを使うこと、行はあけないこと」との指示が答案用紙に書いてあることに気づき、頭が真っ白になりました。合格したことからすると結果的に私の場合はお咎めなしだったようですが、注意事項などについては念には念を入れ事前にきちんと目を通すべきと痛感しました。

・ 宿泊先のホテルが試験会場から近かったため、昼休みの時間帯にホテルに戻りました。午後の開始時刻の15分ほど前に試験会場に戻ったところ、荷物チェックのための長蛇の列ができており、なかなか中に入ることができませんでした。試験開始時刻直前に漸く入り口にたどりつき、ギリギリセーフ!・・・と思ったのですが、なんと中では既に試験が始まっていました。会場内の大時計が4~5分早く進んでいて、その時計にあわせて試験が開始されていたのです。席についてからも座席表やらサンプルライティングやら色々なものを書かされ、10分近く時間ロスをしてしまい、非常に痛かったです。大きめの試験会場の場合にはセキュリティチェックにも相当時間がかかるので、30分程度前に現地に到着するようにした方がよいと思われます。

4 おわりに ~受験生活を振り返って~

当初はアメリカ人からも「You are crazy!!」といわれるほど無謀にみえた挑戦でしたが、運良く1回の受験で合格することができました。
今から振り返れば、頭の中は勉強のことよりも「おっぱい」のことでいっぱいという、とても奇妙な受験生活でした。特に直前の10日間は、私が不在の間に必要となる母乳3リットルを「生産」するため、勉強そっちのけで搾乳機片手におっぱいと格闘する毎日でした。十分な母乳が準備できなければアルバニー行きを断念せざるを得なかったので、このときは本当に必死でした。試験の前々日にNY行きの飛行機にのったときには「ああこれでやっと勉強に集中できる」と思いました。
ロースクールの卒業式の直後に生まれた娘もいつの間にか大きくなり、合格発表のあった11月15日にHalf Birthdayを迎えました。切羽詰まった受験生活の中でも笑顔と希望を失わず前向きに頑張ることができたのは、この子のおかげと思います。また、「受験したい」という私の我儘を文句ひとつ言わずに受け入れてくれた家族や、受験勉強その他様々な面でサポートをしてくれた友人・学校関係者には、本当に感謝しています。
以上、長文となりましたが、最後までお読みいただき、有難うございました。これから受験される方々の参考になればうれしく思います。皆様方の合格を祈念し、結びの言葉とさせていただきたいと思います。


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