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東京室内歌劇場 オペラ「後宮からの逃走」 [オペラぁ!]


「後宮からの逃走」はモーツァルト作曲のセリフ付オペラで、
1782年にウィーンで初演されています。



舞台となるトルコの宮殿が、
1メートル近い厚みのある壁で表現されています。
美しい幾何学模様の浮き彫りが施されている壁に、
イスラムのモスクをイメージさせる形状に門と窓がくり抜かれていて、
各幕ごとに場所を変え、
宮殿の入り口だったり、中庭だったり、後宮の窓辺だったりします。

第1幕では、その壁が舞台前面に張り出し、
わざと舞台を狭くする事で客席との一体感を生んでいます。

そして椅子や梯子などの小道具の扱いもさりげなく、
周辺に置かれた平べったい植木も、唐草風に抽象化されていて、
切り絵のような簡素化された美しさがあります。
加藤直氏の気転のきいた演出に加え、池田ともゆき氏の美術が冴えています。
照明をもっと工夫すれば、更に効果的だったと思います。

後宮の番人役の山口俊彦さんは、
聴きごたえのある低音を、
頭の弱い大男風に歌って好演、
まったくどこまでが演出でどこからがアドリブなのか気になる所でした。

また、囚われたコンスタンツェの待女、ブロンデ役の見角悠代さんも、
芯が細い感じはしましたが切れのある澄んだソプラノを聴かせてくれました。
ただ、
「お母様」と言ってもいいように見えるコンスタンツェに「お嬢様」と呼びかけるなど、
見た目の違和感は拭えませんでした。

全体的にドイツ語の歌に対して日本語のセリフが生々しくベタな感じで、
いっそう、へたなギャグでも交えてくれた方が、
安心して観ていられるような気がしました。

会場の新国立劇場の中劇場は収容1000名、
3日間公演の初日の今日の入りは6割ぐらい、
ちょっと寂しい感じでした。
前回7月の「アルチーナ」公演の時のシアターアプルは、
場末の劇場で最悪と思っていましたが、
今回と比べると観客の妙な一体感があって、
あれはあれでまんざらでもなかった気がしてきます。

以前この中劇場でソンドハイムの「INTO THE WOODS」を観ましたが、
連日公演で満席でした。
内容的にはこっちの方が上だと思いますが、
やはり認知度が低いのと、周知が足りないのでしょうか?
ちらしについても、
いつも同じデザインというのはひとつの方針だとは思いますが、
美術の池田ともゆきさんにお願いしたら、
「どんなのだか観てみたい!」と、
思わせるちらしをデザインしてくれたのではないでしょうか?


2007年12月14日 新国立劇場中劇場
東京室内歌劇場 オペラ「後宮からの逃走」
http://www.chamber-opera.jp/


作曲:W.A.モーツァルト
指揮:大勝秀也
演出:加藤直
美術:池田ともゆき
衣装:宮本宣子
照明:齋藤茂男
振付:新海絵理子

キャスト
コンスタンツェ:出口正子
ベルモンテ:行天祥晃  
オスミン:山口俊彦 
ブロンテ :見角悠代 
ペドリッロ:高野二郎
太守セリム:内田紳一郎

合唱:東京室内歌劇場合唱団
演奏:東京室内歌劇場管弦楽団


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