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新国立劇場 オペラ「カルメン」 [オペラぁ!]



2007年11月28日 新国立劇場 オペラ 「カルメン」

舞台は、街の人々が集まる中央の広場を囲むように、
ハの字型に奥が狭くなるよう両側に大きな壁が据えられ、
そのイエローオーカーの壁に職人が上って壁塗りをしています。
いびつな四角形に穿たれた窓からすると爆撃を受けた街の復興のように見えますが、
人々が働く街の活気を表現しているのでしょうか?

演劇部門の芸術監督、鵜山仁の演出ですが、
たっぷりの空間をいくらか持て余している感じで、
舞台も装置もあと3割ぐらい縮小した方が締まりが良さそうです。
左右の壁に付けたタラップを上り下りする職人達も見ていると小手先の演出で、
何だかサルのオモチャが上下しているように見えて来ます。
さらに、
大勢のコーラスは公演2日目という事で気が抜けてしまったのか、
こちらも何だか締まりのない感じで、
さして感興も沸かず、
微笑ましい子供たちの元気な演技と澄んだコーラスに観入るぐらいでした。

そんな第1幕半ば、
煙草工場から女工達が大勢出て来るシーンでは、
黄土色の壁に埋まるような黄土色の衣装のコーラス、
聴き慣れた音楽が響く中、
べたぁっとした舞台がこのまま、ダラダラと続くのかと思っていたら、
舞台の袖近くで、
場違いに小奇麗な身なりで違和感いっぱいの女性が、
一声歌った瞬間、
客席まで淀みつつあった空気が一気に張りつめ、
今までと変わらないはずのコーラスまでが、
料理前の魚が冷水でシャキっと締まるように、
ついさっきまでとは、
全く別物の舞台になったような錯覚に陥る程、
マリア・ホセ・モンティエルのカルメンは素晴らしかったです。

ささやくような歌声には匂い立つような色気があり、
闇を思わせる低音には女の力強い凄みを感じ、
言葉は分からないのに、何を歌っているのか分かると言うか、
感情を歌に乗せているというか、
まさしく「誘い掛けるしたたかなジプシー」を歌で演じているよう、
マリーナ・ドマシェンコの代役でしたが、スペイン人という事もあってはまり役のようです。

人ひとりの歌声で、
コーラスも舞台もあんなに違って見えるとは、
その影響力の大きさと人の感じ方の違いを改めて知らされました。
「舞台は魔物」というのもうなずけます、
同じような感想を持たれた方も多いのではないでしょうか。

それから先の舞台は、
グイグイと聴衆を引き込み、
いいトコ取りの闘牛士エスカミーリオ役のアレキサンダー・ヴィノグラードフの、
甘いバリトンに加え、王子様のような容姿。
ミカエラ役の大村博美も、
どうしても蝶々夫人のイメージが抜けないのですが、
同じようにつまらない男に捨てられるけなげな女の役柄を歌い切って、
喝采を浴びていまたし、
終わってみれば、あっという間の3時間半でした。

<休憩>

新国立劇場は開場10周年でスタッフの制服が変わったようです。
紺色のスーツに白いブラウスで清楚といえば清楚、
でも何だか普通。
襟元にはエンジ色のスカーフ、
飛行機のCAのようにどう巻いてもいいみたいなのですが、
慣れないせいかスカーフの納まり所の定まらない人や、
気になってしょうがないのか何度を襟元に手をやっている人もいました。

森英恵のアドバイスによるとありましたが、
任せるなら全て任せるで中途半端にアドバイスは良くありません。
今時スカーフの直巻きなんて銀行の窓口係りでもやってるし、
目立つ必要はありませんがもうちょっとがんばって欲しいところです。
着るスタッフは若い人が多いのだし、
川久保玲とか山本耀司とか日本を代表して、
海外の第一線で活躍しているデザイナーにお願いして、
世界中から来る人達の記憶にも残るようなものが出来なかったのでしょうか。

ミラノのスカラ座は、
男性も女性も黒い修道僧のような制服で、
十字架のペンダントをしていたと思うので宗教的意味合いもあったのかもしれませんが、
ビシっとスタイリッシュに決めていて、
劇場の非日常的空間を壮麗に彩っていました。

新国立劇場も開場20年には、
「今度の劇場スタッフの制服はコム・デ・ギャルソンです。」
とか、言ってもらいたいですね。


2007年11月28日 新国立劇場 オペラ 「カルメン」 (CARMEN)

【作 曲】ジョルジュ・ビゼー(Georges Bizet)
【指 揮】ジャック・デラコート (Jacques Delacôte)
【演 出】鵜山 仁 (Uyama Hitoshi)
【美 術】島 次郎 (Shima Jiro)
【衣 裳】緒方 規矩子 (Ogata Kikuko)
【照 明】沢田 祐二 (Sawada Yuji)

CAST
【カルメン】マリア・ホセ・モンティエル (María José Montiel)
【ドン・ホセ】ゾラン・トドロヴィッチ (Zoran Todorovich)
【エスカミーリョ】アレキサンダー・ヴィノグラードフ (Alexander Vinogradov)
【ミカエラ】大村 博美 (Omura Hiromi)
【スニガ】斉木 健詞 (Saiki Kenji)
【モラレス】星野 淳 (Hoshino Jun)
【ダンカイロ】今尾 滋 (Imao Shigeru)
【レメンダード】倉石 真 (Kuraishi Makoto)
【フラスキータ】平井 香織 (Hirai Kaori)
【メルセデス】山下 牧子 (Yamashita Makiko)

【合 唱】新国立劇場合唱団 (New National Theatre Chorus)
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団 (Tokyo Philharmonic Orchestra)


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