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ここ 1 年の読書遍歴: 小川洋子 [books]

最近お気に入りの作家、小川洋子の『完璧な病室』を買った。
まだ読んでいないから『完璧な病室』には触れないけれども、
何かしら文章をしたためてみる。

小川洋子という作家とは、ベストセラーになった『博士の愛した数式』が初めての接点だ。
僕が好きなエッセイスト(数学者)、藤原正彦の作品に影響を受けて書かれたということで、
それならばと手にとってみた。タイトルも僕の興味をひいた。
家政婦の親子と数学者のふれあいを、数学をモチーフに描いた物語は、
あまりベストセラーを手にすることのない僕の心にも、確かに強い印象を残した。
しかし、その読後感と当時の心境との間にとても距離がありすぎて、
他の作品を読んでみようという気にはなれず。
当時は小川洋子の作品群をよく知らず、『博士の...』が彼女の作品の中でも
異質だとわかったのは、何冊か読んだつい最近のことだ。
とはいえ、『博士の...』で接した彼女の文体や比喩表現が僕にとって心地良く、
それが後々彼女の作品をまた手にとってみようという気にさせたのだと思う。

『博士の...』を読んで小川洋子にいったん満足したところに、
山本文緒を紹介され、次々と買って読みふける。
僕は気に入った作家を読み尽くすという読書スタイルだ。
初期の作品を除けば、ほとんど読んだんじゃないかなあ。
『博士の...』とは逆で、タイトルだけなら通りすぎていた部類の作家。
紹介されなければ、彼女の作品を読むことはきっとなかった。
彼女の書く話はどういうわけか、そのときの感情のあり方にとてもよく合った。
女流作家をめったに読まなかった僕が変わったのは、山本文緒がきっかけだ。

で、ようやく小川洋子に戻る。
山本文緒を読み尽くし、自分の中の女流作家ブームをどうしたものかと途方にくれた。
そこでまず手にしたのが『密やかな結晶』。ややタイトル買いの気あり。
澄んだ世界観や穏やかな時の流れは『博士の...』と共通するのだけど、
どこか不気味でどこか歪な何かがそこにはある。
非現実的な舞台へと強く引き込まれる自分に驚きながら読んだ。
その後『沈黙博物館』を読んで、むしろこれが彼女の作風なのだと知った。
彼女の小説は、読み手によって全く異なる像を心の奥に結ぶように感じる。
その点でも『博士の...』は彼女の作品群において例外だと思う。
『密やかな結晶』に出会ったことで、小川洋子の作品を読んでいこうと決めた。

『沈黙博物館』と『完璧な病室』、この 2 冊についても気が向いたら書くつもり。

博士の愛した数式

博士の愛した数式

  • 作者: 小川 洋子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/08/28
  • メディア: 単行本


密やかな結晶

密やかな結晶

  • 作者: 小川 洋子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1999/08
  • メディア: 文庫


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