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「Roman ~僕達が繋がる物語~」:違う道を来たりて至る [音楽]

 もしもそのミュージシャンが、通りすがりの他者と向き合っての路上ライブや、客の顔一人一人が見えるようなライブハウスでの演奏を経てデビューするのではなく、インターネット上で顔の見えない不特定多数に向かって音楽を配信し、コミックマーケットの場でCDを売っていたら。貴方はそれをどう感じるだろうか。そこには何か足りないものがあると、思うだろうか。
 Sound Horizonはそのような過程を経てメジャーデビューしたアーティストである。正式なメンバーは作詞作曲編曲までを担当するRevo一人。後はその時々に応じて、歌手も楽員も最適な編成を選ぶという形式になっている。その構成は、最新作「Roman」においては実に70名に及ぶ。
 Revoが作る曲は一つ一つがストーリーを持ちながら、さらにアルバム全体に複数のキーワードが埋め込まれ、タイトルに表される一つのコンセプトに集約していくという形式を取る。
 ゆえにライブの形式も独特である。歌い手たちが曲中の登場人物に扮して繰り広げるステージは、ミュージカルとライブパフォーマンスの中間にあって、劇のように音楽を物語る。
 さて、そんな彼らのライブにおいて客に求められる態度は、座って聴くことだろうか。いや、このDVDを一見すれば明らかなように、客達は1曲目が始まった瞬間、舞台と客席とを隔てる幕が開くと同時に立ち上がって奏者を迎える。ステージ上と客席との幸せな応酬、それは毎曲ごとに繰り返され、アンコールを待つ間にも彼らは自然とRomanのテーマを口ずさむ。
 どうしてそれが可能なのか。少なくともこの現実を受け入れるためには、改めなくてはならない認識があるだろう。ライブとは何か。人と人とが向き合うとは何か。
 一つの音楽空間を共有するということは、単に物理的空間においてのみ達成されるのではなく、ただそこに音楽があれば、私たちは繋がれるという現実を。
 このDVDは物語る。

(800字批評シリーズ:800字)


Sound Horizon公式サイト(試聴曲有り):

Sound Horizon Concert Tour 2006-2007『Roman~僕達が繋がる物語~』〈限定盤〉

Sound Horizon Concert Tour 2006-2007『Roman~僕達が繋がる物語~』〈限定盤〉

  • 出版社/メーカー: キングレコード
  • 発売日: 2007/04/25
  • メディア: DVD

 


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