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アンブッシュ・マーケティングはどこまで行くのか。どこへ行くのか。 [雑記]

 世間ではW杯たけなわですが、私は疲労で日本の第1戦オーストラリア戦を見るつもりが寝落ちして、気が付いたら負けていたりしたわけですが、そんなこんなの昨今、「アンブッシュ・マーケティング」という言葉があります。

 ambush、軍事オタならおなじみの「待ち伏せ(攻撃)」という意味ですが、昨今のスポーツ大会のような大きなイベントでは、スポンサー企業からより多く集金するため、一業種一企業に限定して公式スポンサーの名を与え、そのかわりに莫大なスポンサー料をふんだくるということが行われています。
 しかし資本主義社会とは恐ろしいもの、ライバル企業はそれに対抗して、直接その大会の名前は使わない代わりに、例えばW杯でしたらサッカーだとか「その大会を(強く)連想させるもの」という共通項を使用して、対抗的マーケティング(この場合広告)を行うことが、昨今一般化し、またそれに伴って問題化もしています。

 それがアンブッシュ・マーケティングです。分かりやすい例はyutakami先生の所のこの記事をご覧下さい。他に今のW杯でしたら、例えばキリンは日本代表スポンサーでしかなくてW杯スポンサーじゃないけど、すごく目立っているよねとか、小雪さんがやっているパナソニックの液晶テレビ(VIERA)は「蹴鞠」をフューチャーした広告をおこなっているわけですが、やっぱりW杯公式スポンサーじゃないとか、そんなこんなです。


 先日の大学院のゼミでこれの話になって、どこが問題かとかどういう風に考えていくべきかという議論になったのですが、その後も宿題のように考え続けていて、幾ばくかの思考に辿りついたものの、それをどこで発表していいものかわからないので、ここに書く事にしました。・・・まあ、ちょっとその論理の飛躍には目をつぶってください。合同ゼミは毎回やることが変わるので、続き発表する場がないんですよ!

 私は一言で言うとアンブッシュ・マーケティングの危険性は「エスカレート」だと思うのです。

 例えば2002の日韓共催W杯において、韓国では公式スポンサーの韓国通信フリーテル(KTF)に対抗してSKテレコムが大規模なアンブッシュ・マーケティングを行いました。その内容とは、半年も前からTVCMでサッカーにおけるサポーター(応援)の重要性を流し、はてはどのように応援すべきなのか人気タレントを使って説明までしたというものです。耳馴染みのある「テーハーミングック(大韓民国)、ドンドンドドドン」という手拍子を使った応援は、そこで生み出されました。韓国ではこれが大流行し、熱狂的なサポーター達が集まり、スタジアムのみならず街頭でも大応援を繰り広げた事は記憶に新しいです。
 以上の事はゼミで報告されたことで、私の手柄ではないのですが、報告者のお名前を出す事はここでは憚られるため、伏せて一般論で語る事をお許し下さい。

 ともあれ、その場ではこのことはマーケティング(広告)がその枠を越えて新しい応援文化を創造したというポジティブな方向で語られていました。しかし私はこの応援運動が持つナショナリズムだとか、それって全体主義だよねとか、微妙にサッカー応援から焦点がずれているところとかが気になっていました。
 このことはその場でも指摘したのですが、ここでもう一歩踏み込んで語る事があるとするならば、その「危うさ」はこれがアンブッシュ・マーケティングであるがゆえにもたらされたことかもしれないと言えると思うのです。
 アンブッシュ・マーケティングであるがゆえに、スポンサーはこれを(サッカーではなく)ナショナリズムの方向と結びつけて煽ることを考えつき、サッカーそのものを焦点にしなかった。微妙なずれと対抗マーケティングであるがゆえの攻撃性が、そのまま噴出したケースとも考えられないでしょうか。もちろん、韓国の応援そのものを否定するわけではありませんが、これは運よくポジティブ面のみが発揮されたケースで、もしも韓国があの時大躍進(ベスト4)していなければ、不甲斐ない試合をすれば、応援熱がどのような方向に暴走したかわからない・・・とも危惧してしまうのです。例えば中国開催の2004アジアカップでの、日本に対する過剰なブーイング(とそれを平気で煽るメディア)なども見ているので。
 そのような論理展開は可能ではないでしょうか。


 もう一つ、アンブッシュ・マーケティングの例として(直接)対抗型マーケティングが出されていました。
 上記のyutakami先生があげておられるGoogleなどもそうですが、1994年のリレハンメル五輪では公式スポンサーVISAに対してアメリカンエクスプレス(アメックス)が「AMEXはノルウェイ中で使えるので、ビザは必要ありません」という広告を出したそうです。
 私は日本のぬるま湯広告に浸かりきった人間ですので、向こうの対抗広告だとか比較広告の文化としてこれがどれくらい攻撃的なのかというのはよく分かりませんが、VISAにすれば相当むかついただろうなとは思います。これに限らず、アンブッシュ・マーケティングというものは、公式スポンサーからすれば非常に腹立たしいものであろうということも。
 けれども、例えばIOCですとかFIFAはこれら(アンブッシュ・マーケティング)に対して有効な対策を打ち出せていない、また打ち出していないということも語られていました。

 じゃあ、と考えてしまうのです。対抗がエスカレートした結果、業を煮やした公式スポンサーが大規模訴訟に訴えたり、それで無理だと分かると「スポンサーを降りる(引き上げる)」と言い出す可能性はないのか、と。
 私はアメリカのMLBだとかその他4大スポーツの、情け容赦ないストライキ合戦を見てきているので、ついそういう方向に考え(妄想)がいってしまうのですが。
 アメリカ企業なら言い出しかねないんじゃないの?と。そして毎回大会準備にアップアップしている組織委員会の皆さまは、いざ彼らが本気でそれを言いだした場合にきちんと対応できるのか?と。

 まあこれらは問題提起であり、どちらかというと未来予測型危惧というやつです。あまり学問的には地に足の着いた意見ではないと思います。ただやっぱり気になるので、ブログネタとして書いてみました。


 日本のアンブッシュ・マーケティングはこれらに比べるとずいぶん平和です。みんなでW杯という祭りを盛り上げよう、国民的関心を煽って特需にあずかろうという関心丸見えの分、平和とも言えますし面白みには欠けているとも言えます。
 ともあれ、そんな視点で今回のW杯とそれに伴うTVCMを見てみるのも面白いのじゃないでしょうか。果たしてどれが公式スポンサーで、どれがアンブッシュか、見分けられるか挑戦してみるのも一興です。

 私はクロアチア戦は寝ないように、今からしっかり疲労を取って(今週は散々でした)、日曜に備えたいと思います。ちなみにNHK-BSハイビジョンで見ます。・・・マテ。


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