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「パイレーツ・オブ・カリビアン」:ディズニー映画成功の鍵 [映画]

 DIACASレンタル第二弾。さらに皆川博子「死の泉」という分厚い本にも手を出し、アマゾンで「ベルガリアード物語」も注文する。おまえそんなことやってる暇あるのか状態。一応山登りのためには真面目に週2で英会話教室に通い、50分間先生とマンツーマンで徹底修行、ついでに毎回宿題が2時間分くらい出るというスケジュール。合間合間には専門書も読みます。さて、私は忙しいのか暇なのか。
 まあ、いいのですが。

 映画の話に戻します。これはいわゆる娯楽作で、大変に楽しめました。今は上記のように色々と頭が忙しい状況なので(半分は自分で首締めてますが)、こういう愉快痛快で爽快な作品はその点でもとてもありがたかった。
 話としてはオーソドックスな海賊冒険宝捜し物+身分違いの恋愛という、王道です。多少話にひねりは加えてありますが、たぶんそのままでは良くも悪くも「ディズニーらしい」と言われる、大きな破綻もない代わりに波乱もない佳作になったかと思われます。でもこの映画が、そのレベルからちょっとばかり飛び抜けているのは、なんといっても主役三人のキャラクターですね。


 ジョニー・デップが演じた、今は船のない海賊船長ジャック・スパロウ船長のユニークさは有名です。少し首をかたむけた仕草が特徴で、常に虚実の間を渡り歩く、正気なのか狂気なのかも微妙なライン上にある男。もっとも不快さは少しもなく、ただただ面白くて目が釘付けになるというあたりはさすがです。
 こういうタイプのキャラ付けでは、見る人間に少しの不快さを与えることで興味を引くっていうのがセオリーで、だからこそはまりやすい落とし穴かと思うのですが、スパロウにはその部分が全然ないのです。ディズニー映画として無言のうちに求められることを、逆に役を高める足がかりとして軽々と飛び越えてみせた、そんな印象を受けました。

 キーラ・ナイトレイが演じた、海軍提督の娘エリザベス・スワン。でもお淑やかとはほど遠い、暴れ娘さんです。頭もまわるんですけど、とにかく暴れていたという印象が強い。なんでも役者さん自身が、アクションシーン大好きの、そういう性格らしいです。「キング・アーサー」でも身体を青く塗ってアマゾネス状態のグウィネビア王妃を演じていらっしゃいましたが・・・。
 彼女の場合はジョニー・デップとは逆に、役者によって加味されたアクの強さが全面に出ていたと思います。でもそれがエリザベスをただのありがちなヒロイン(実は勇ましいお嬢様なんて、とてもありがち)から、一歩抜け出た存在感を与えていたと思います。

 オーランド・ブルームが演じた、鍛冶屋のウィル・ターナー。一応話としては主人公的位置づけにいるのでしょうか。だからこそ三人の中ではもっともアクの少ないキャラクターです。でも埋没していないんですよね。上手いなと思いました。同時に、やっぱり私はこの人(オーランド・ブルーム)は役者として好きだなーとも。
 映画を見る前にはもっと弱腰の青年かと思っていたんですが、剣も上手く扱えるし普通に頭もいいし、決してヘタレキャラではありません。ただそれだけではやっぱり、他の二人に個性で負けてしまったかと思うのですが、負けていない。この人はいわゆる受けの芝居(相手の個性を受けとめる芝居)も上手いんだなと思うのです。綺麗に受けとめて、受け流し、相手を邪魔することなく、また自分も邪魔されることなく、いつの間にか居場所をきちんと作っている。そんな存在感です。すごいです。

 この三人のくっついたり離れたり、味方になったり裏切ってみたりのやり取りを見ているだけでも、充分に面白いのです。そしてここで重要なのは、ベースとなる話の筋は破綻なくまとまることが分かり切っているからこそ、安心して彼らの枠をはみ出た芝居も楽しめるということ。
 この場合は話が王道であることが、むしろ主役たちのキャラクター(個性)を殺さないで許容してみせるという方向に転がり、また逆に彼らのユニークさによって話のありがち性が綺麗にかき乱されていて、いい方向に相互作用を及ぼし合っていたと考えます。
 ・・・いわゆるディズニー映画がディズニー映画の枠を越えて、成功するための鍵はここにあるのかと、解答の一つを見た思いでした。


 さらにそこに脇役敵役陣の、やっぱり個性的で魅力的なキャラクターも加わります。
 特にいうなら敵役でしょうか。死ねない海賊バルバロッサの哀愁。で、哀愁はあるんだけど、やっぱり悪なんだという。悪役なんだけど実は悲しみも抱えているんだよ、って部分で普通は止まるかと思うのですが、この人は哀愁の部分を見せてからさらに普通に悪役やっているのです。
 平然と悪事をやらかし、謀略を巡らし、主人公たちと直接間接(肉体&頭脳)の戦いを繰り広げるのです。うお、この役者さん実はすごいんじゃんと(だってオスカー俳優だし)、あとからじわじわスルメのように染みてくるキャラでした。

 そして彼らが月の光を浴びて正体を現すCGも綺麗です。一見普通の人間に見えるところからガイコツへと、実に自然にそつなく美しく変化していくのです。ガイコツバージョンの造形も丁寧にやり、さらに人間とガイコツをつなぐエフェクト(効果)も作り込んだんだろうなと感心しました。
 ガイコツ海賊二人組のボケとツッコミ漫才も、とても素敵。

 総じて、これはやっぱりキャラクターで成功した映画だなと思うのです。ただそれにはもちろん、先述したようにストーリーがしっかりしているという前提もあってのことです。
 ストーリーのないキャラクター映画はダメなんです。そして逆に、ストーリーに破綻はないけど面白みもないという映画もダメなんです。この映画はその狭間を、主人公たちのキャラ付けと絶妙に配置された俳優陣の個性で乗り越えてみせた。
 とても面白い映画でした。夏ですしね。海の冒険を楽しむにはいい季節です。月光の下での海底散歩(withガイコツ)も付きで。

公式サイト:http://www.disney.co.jp/movies/pirates/

パイレーツ・オブ・カリビアン / 呪われた海賊たち コレクターズ・エディション

パイレーツ・オブ・カリビアン / 呪われた海賊たち コレクターズ・エディション

  • 出版社/メーカー: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
  • 発売日: 2005/03/18
  • メディア: DVD

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