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「スターウォーズ EP3」:どうして彼は堕ちたのか? [映画]

 ついさっき、先々行上映でこれを見て帰宅しました。いやー、すごかった。凄いという評判は聞いていましたが、まさしく。いまだ興奮さめやらぬ感じです。私は別にスターウォーズ世代でもなく、というか前期三部作(エピソード4-6)はTV放映で中途半端にしか見ていないんですけど・・・。
 今日はあちこちのブログ、掲示板でもお祭り状態だと思いますが、祭る価値はありますよ。とはいえ、見に行く前からあんまり期待を煽ることは、現実は空想を越えるのは難しいものですから、よくないのかもしれませんが・・・。でも少なくとも見る価値はある映画です。

 まず冒頭におなじみのメッセージが表れ、そしてセルフパロディのようにちょっと気取ってストーリーが流れて、映画は始まります。最初の戦闘(戦争)シーンから、まさに映画ならではの醍醐味ある壮大で迫力のある映像が流れ、一気に物語世界に引きこまれます。あとはアクションあり、ドラマあり。よくこれを2時間36分で収めたなというくらい、ぎゅっとつまった濃厚な時間が流れます。
 アクションシーンも戦争あり、チェイスあり、剣闘ありと様々に工夫されていますし、SFとしてのセンスオブワンダー溢れる映像も沢山見ることが出来ます。前作(エピソード2)などではドラマ部分が弱いという評価もありましたが、今回はさすがに過去と未来の5作品分を背負った要となるエピソード。恋愛、師弟、陰謀、裏切り、決意、絶望そして希望。あまさず描ききったという感じがしました。要所要所でこれまでの伏線回収+たぶんエピソード4-6へとつながる伏線を、しっかりと埋め込んでもいましたし、またそれが不自然ではなく、むしろ心揺さぶるようにポイントポイントで押さえていくのです。
 ああ映画って凄いなあと思いました。これを映像にすることが出来る。そしてこんな物語を語ることが出来る。沢山の人が青春を費やした気持ちを、ちょっとは追体験することが出来ました。

 余談ですが、今回は上映の最終回をあらかじめネット予約して行ったんですけど、家人は朝から散髪に行き、髭を剃り、落ち着かないのか二度もウォーキングに出かけ、アナタは電車男ですか?、ダースベイダー様がエルメスさんですかと突っ込みたくなるくらい(実際に突っ込んだけど)、気合いを入れておりました。遅刻魔のくせに上映一時間前にはもう出かけようとするし。わりと人の影響を受けやすい人間である私は、上映直前にはすっかり緊張が移って心臓ばくばくでしたよ。
 でもまあ、それでよかったです。おかげさまでこの素晴らしい映画を、むき出しの心臓で楽しむことが出来ました。たまにはこんな経験もいいもんだなって思いました。
 ちなみにこの写真は劇場のキャラクターがベイダー様のコスプレしている写真。今日はいつもの映画館が、いつにない熱気に包まれておりました。老若男女、実に様々な年代の人がいたんですけどね(さすがに年配者が多かったかな)。
 様々な意味で熱い日でした。まだその熱が抜けません。


◆以下、直接的なネタバレではありませんが、出来れば観賞後に読むことをお薦めします。◆

 私がこの映画を観るにあたり、一番注目し、また期待していたのは、「どうしてアナキン・スカイウォーカーは暗黒面に堕ちたのか?」という部分でした。個人的に、そういうテーマにはとても興味があるのです。ルシフェルやアダムとイブやバベルの塔や、あるいはイカロスの翼やイザナギとイザナミの神話など。どうして人(神)は堕ちるのか、そのことにとても興味があります。
 そしてこの映画を観て私なりに出した結論は、「彼は青春の過程で、(階段を)踏み外して堕ちたのだ」ということでした。

 この映画のアナキンはとてもまぶしかったです。美しさに輝いていました。若さ特有の傲慢さ、力への渇望、ロミオとジュリエットのような若者にしか持ち得ない、他者の存在が眼中に入らないという意味での純愛、明日のことなど考えずただ今の欲望に身を委ねる愚か、自分の無知を薄々知りながらも、いや知っているからこそ背伸びしたがり、そしてまた分かって欲しいという甘えを込めて年長者たちにわがままを言う。
 とてもまぶしく、美しい姿の若者がそこにいました。姿形の問題ではなく、彼の若さ自体が私に訴えかける、得難いものに感じられました。アナキン・スカイウォーカーがただ画面に存在するだけで、ああ美しいなあと思い、同時になんて悲しいんだろうと思ってしまう。それはまさに青春というものが具現化した姿でした。

 青春というのは苦く、そして苦しいものです。それを見る他者にとっては美しくてまぶしいものですが、本人は苦しくてたまらない。そんなものです。自分はまだ何者でもないという思い、でも何かを手に入れたいと切望する本能。押さえきれない肉体の成長と、それに必死でついていこうとする精神のあがき。周囲からもたらされる数限りない教えや情報、でも実体はまだ伴っていない。経験は全然足りていない。そんな不安感と焦り、そして怒り。数々の矛盾する衝動に突き動かされ、本人は引き裂かれそうになります。・・・そして実際に、何人かは引き裂かれてしまうのです。
 大抵の人は、中学校や高校もしくは大学で、同級生の死に直面していると思います。それは不運としか言いようがない心臓発作などの突発性疾患、または他の病であったり、あるいは自業自得としか言いようがない、本人の無謀さの結果としての死であったりもします。自殺、ということもあります。
 しかし私はそれら全てを含めて、大きな目で見てそれは人間が避けようのない、成長途中での犠牲(サクリファイス)であると思っています。天国の門をすべての人がくぐることは出来ないように、大人への門は全ての若者がくぐれるわけではないのです。それは単に門の大きさという問題です。ただ運がなかったとしか言いようがない、そうやって逆方向に選ばれてしまった犠牲者が出るのです。青春という過程では。

 青春の輝きは死と隣り合わせです。だからこそ青春は美しい。目に耐えがたいほどにまぶしいのです。
 そしてアナキンは、堕ちてしまったのです。青春という大人への階段を、彼はただ、あっけなく踏み外してしまった。どこが悪かったのか、彼が悪かったのか、問うことは無意味です。そう・・・選択がなされてからの、彼の自暴自棄なまでの一途さ、後ろを省みない真っ直ぐさは若者特有のものでしたが・・・。でもその時には彼は既に堕ちていたのですから。引き返せないところまで行ってしまっていたのですから。
 そう・・・ちょっとはオビ=ワンに、彼を受けとめてあげて欲しいと、パドメも含めて「大丈夫だよ」と言ってあげて欲しいと思ったりもしましたが・・・。それは私がいつも、若者達が起こす若者特有の問題(家庭内暴力など)に対して、思うことでもありましたが・・・。だけど、やっぱり、無理でしたね。言ったって聞きはしなかったでしょう。若者というのはそういうものです。
 あれは彼の運命だった。彼は堕ちるべくして堕ちたし、それは彼の選択、彼の責任の結果だったのです。それでもアナキン・スカイウォーカーは、単に運がなかったのです。

 ああ、こんな答えだったんだなと思いました。多くの人達にとって青春であった映画の、色んな意味で年月が過ぎ、皆が大人になってからの一つの答えとして、ジョージ・ルーカスが提示したのは「青春」というものの輝き、そして儚さだったんだなと。意図してのことなのか、あるいはそもそも私のこの解釈が的を射ているのかも分かりませんが・・・。私はただ、この映画を偉大だと思うだけです。

 ダース・ベイダーとして生まれ変わる直前の彼の姿、あれはあまりにも無惨で正視に耐えませんでした。実際ああやって死んでいく沢山の若者を知っているからでしょうか。あるいは私もああなったかもしれないからでしょうか。
 これは余談ですが、私も青春時代には色々な無茶をしました。とりあえず一番死に近かったと思うのは、オープンカーを運転していて横転したことですね。そりゃもう見事にきりもみ状態で道路に転がり、車はお腹を上にして止まりました。その時ちょうど屋根は開けていてオープン状態だったんですが、どういうわけか運転していた私は無傷でした。ロールバーも付けていなかったですから、フロントウィンドウを支えるAピラー2本が全ての車重を受け、私が生きる空間を確保してくれたのです。原因は単なるスピードの出し過ぎと、道路にあったバンプ(凹凸)でした。
 まあとりあえず、人様を巻き込まなくて良かったです。自分が死ぬのは自業自得として(それも関わってくれた人々を悲しませるという意味でとても罪深いことですが)、それ以上に他人を巻き込んでいたらシャレにならなかった。おかげで私は今、とても安全運転です。まあそれで償いきれる罪なのかどうかというと・・・分からないんですけど。
 ともあれ、あの時のアナキンの姿は、自分がもしかしたらなっていたかもしれない姿に見えました。病院のベッドの上で、あんな姿で親と対面していたかもしれないんだなと思いました。まったく・・・なんというか、無情なものです。私は生きているし、アナキンは生きているけど死んだも同然の状態になり、そしてまた多くの若者達が青春の過程で今日も死んでいく。

 この映画は青春の輝きを見せてくれました。それはまぶしく、美しかったです。もう私には失われてしまったものです。とはいえ二度と繰り返したいとは決して思わないんですけど・・・。でも映画では、スクリーンの中では何度も見たい。そんな永遠性を秘めた映画でした。
 偉大な完結編だったと思います。今はもう、大人になった(なることが出来た)全ての人に。

公式サイト:STAR WARS Japan


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